3 待ち伏せ
|ω・*)
バイトが終わる時間には、丁度馴染みのスーパーでタイムセールが始まる。しかも今日は卵が安いはずだからワクワクしながら裏口から出て表通りに出て――俺は思わずフリーズした。
「やっほ〜、アリスちゃん」
楽しげに手を振る白銀の百合姫がそこにはいた。というか、やっぱり俺がアリスって分かってるのか……
「あの……お願いだから、外ではアリスって呼ばないで……」
「そう?じゃあ、愛くんって呼ぶね。私のことも梨々香でいいよ〜」
「……えっと、何か用?」
「送ろうと思って。最近は物騒でしょ?」
おかしいな……このシチュエーションなら普通逆のセリフのはずなのだが……違和感が少ないのが残念だ。
「いや、悪いしいいよ。それに俺は……」
「これからスーパー寄るんでしょ?タイムセールだよね」
え?なんで知ってるの?キョトンとする俺に彼女はくすりと笑って言った。
「少し調べれば分かるって。でも、本当に偉いよね。家事と弟さんと妹さんの面倒見ながら、苦手な女装してバイトしてるなんて」
「……白百合さん、あの言っちゃなんだけど、なんでこんな店通ってるの?」
「ん?もちろん、アリスちゃん目当てだよ。それと……」
つかつかっと、近づいてきて彼女はくすりと微笑んだ。
「愛くんのこと、もっと知りたいからだよ」
その笑みが可愛くて少しだけ視線を逸らしてしまったけど、それすらも彼女は愛おしいように笑みを浮かべて言った。
「まあ、でも本当にアリスちゃん可愛いよね。普段の愛くんも可愛いけど……私、生まれて初めて男の子に興味持ったよ」
「俺なんかより普通の女子の方が可愛いでしょ?」
「うーん、見た目が可愛い子はそこそこいるけどね……アリスちゃんみたいに性格も可愛い女の子って少ないんだよ」
あの……俺、男なんですが。
「まあ、それはいいとして……ID教えてよ。連絡先交換して欲しいな」
「いいけど……俺がアリスなのは黙っててね」
「もちろん。ストーカー被害にあうと家族に迷惑になっちゃうって考えてるんだよね?」
ギクリとする。実は1度男のストーカーに家を特定されそうになったのだが……何故知ってるのだろうか。
「じゃあ、交換条件ね。明日のお昼一緒に食べることと、連絡先交換することで黙っててあげる」
「はぁ……分かったよ。でも、白百合さんの彼女さんに文句言われても責任は取らないからね」
「ああ、それは大丈夫。だって、今はフリーだもん」
そうしてなんか丸め込まれて連絡先を交換してから、彼女は帰っていったが……流石にお昼は冗談だろうと思ってたんだよね。この時の俺は。