2 同僚への相談
「はぁ……」
「アリスっちなんか疲れてる?」
「アリスっちいうな……はぁ……」
休憩室でぐったりしていると、同じく休憩中の同僚のサラ(源氏名)からそう聞かれた。
「あ、もしかしてあの美少女さんのこと?確か知り合いなんだよね?」
「うん……でも、本当になんでここに来てるか疑問で……」
「それは、もちろんアリスっち目当てでしょ?男女の固定客多いしねぇ、アリスっちは」
女装喫茶と聞けば、その手の趣味の人が多いと偏見を持つ人もいるかもしれないけど、案外普通に女性客も来てたりする。可愛いは時に性別を越えるのだろう。俺的には嬉しくないけど。
「そういえばね、私が接客行った時はあの人めっちゃ不服そうな目で見てきたんだよねぇ。なんか不味ったかな?」
「さてね」
他の従業員には俺にするように言いよってこないことを考えると俺目当てなのだろうが……本当に何故か疑問だったりする。確かに俺は1度彼女と話したことはある。とはいえ、それは男の時だ。それに俺がこうして女装喫茶で働いてることは担任しか知らないことだし、更に彼女がこうして通うようになったのは俺が彼女と話した数日後のことだったし、偶然にしては出来すぎてるんだよねぇ……
「アリスっち的にはあの子はナシなの?」
「ナシもなにも、女装してる俺に迫ってる時点で相手に脈なんてないでしょ?」
「うーん、そうかな?なんかあの子がアリスっちと話してる時は凄く嬉しそうというか……恋する乙女だったよ?」
どこの世界に女装して接客する男に惚れる美少女がいるのだろうか……
「まあ、アリスっちが本当に嫌なら店長が出禁にでもするでしょ」
「その前にそのうち飽きる方が早いと思うよ」
他人の噂なんて信用しない方だけど、見かける度に違う女の子連れてるし、俺への興味なんて本当に一過性のものだろうと思う。それに……俺なんかに恋愛する資格はないだろうしね。
大切なものを守れもしなかったこんな俺に……
「アリスっち?」
「……いや、ごめん。少し考え事をね」
「あ、今日の夕飯でしょ?アリスっちって本当に女子力と主婦力高いよねぇ」
「女装してるから否定しにくいけど、どっちもないから」
そうして貴重な休憩時間に同僚と話すけど……この時の俺はまだ知らなかった。彼女がどのくらい本気だったのかを。そして、それを知る機会がかなり近くまで迫っていることに。