第4話
実はこの状況、自業自得かもしれません。
水魔法を手にいれて、歩くのに飽きたら水分補給ついでに魔法の練習をした。そこら辺に小さいトカゲいたからさ、固まりで。
ちょっと調子に乗ったっつーか、鬱憤をトカゲにぶつけてしまったというか。
たくさん窒息させたし、小さすぎるのは窒息させた後、放置した。
よく考えたら、イカれた奴だよね。
なんか感覚麻痺してたのかな?
うわぁ。絶対やっちゃあかんやろ!
レイラ!説教部屋行きレベルだぞ!
もう、犯罪者だ。おまわりさーん、犯人こいつでーす。
あぁ~ちっちゃいトカゲさん達。
ごめんなさいっっっ。
ストレスマックスで残忍レイラになってたんだよぉ。
なんか、トカゲ達、仲良さそうだったよね。
オオトカゲ、復讐に来たのかなぁ?
反省はちゃんとします!
でも、トカゲ達よ。
私は残酷で残忍になってでも、この砂漠を抜けないといけないのだ。
私には何が何でもユウマのもとへ、愛する我が子の元へ帰るのだ!
何かを犠牲にしてでも。
オオトカゲの頭の大きさは小さいトカゲの3、いや4倍ぐらいか。
「窒息」がギリギリ2回できるか、どうか。
でも、私には聖域がある!
時間はかかるだろうけど、やろう!
「窒息」
水球が2つ、最前列にいるトカゲ2匹に飛んでいく。
小さいトカゲと違って、時間がかかったし、何だろう?抵抗される感覚があったみたいで、残り少ないだろう魔力がなくなっていく。
あっ、ブラックアウトするかも。って思った瞬間、その音が頭に響いた。
“たらたたったったぁ~”
うぉぉぉぉい。
チェック。
チェックめ~
それは、私でも知っている某有名ゲームのレベルアップする時の音だった。
さっき、放った「窒息」でオオトカゲ2匹は死んでいた。
その死を持ってこの世界に来て始めてレベルアップしたのが分かった。
でも、チェックよ、その音はないんじゃないか?んっ?シャレか。シャレをかましてんのか?今の私には許容することは出来なかった。
冗談じゃない。こっちは遊びじゃねーんだぞ。
「チェック、チェック、チェェェーック!」
そう私が叫んだ次の瞬間、自分の中の魔力が膨れ上がり、勝手に魔法が放たれた感じがした。
「ボキッ、バキッ」
と、音がなり、ドゴンッと3匹のオオトカゲが飛んでいった。
そして、また”たらたたったったぁ~“。
ん?何々?今の何すか?
チェックに馬鹿にされたような気がして、血管ぶちギレそうなくらい、激怒はしましたよ?
チェックって叫ぶ声にもいつも以上に殺意がこもっていたのは確実です。
「チェック」
小さな声で言ってみた……何も起きない……だけど、血液にのって全身を駆け巡る魔力がザワッと反応した気がする。
「チェック」
更に言うが何も起きない。
んんー?
まあ、いーや。チェックへの怒りが暴発したんだべ。なんか魔力がうねうねドカーンしたの分かったし。
それより………まだまだいるトカゲ達を捌かねば。
20匹のオオトカゲが、聖域をグルッと囲っていた。それが、5列。後ろに行くほど、オオトカゲの数が多いように見える。
最低でも100匹はいるんじゃないかな?
気が遠くなる数だ。
前列で息絶えてる2匹を乗り越えてくる様子はない。
あまり深いことは考えず………
やるしかない……やるしか………
「ゲホッ。グッ。はぁはぁ。
終わった………ドロップ。ドロップ………」
結果。丸2日かかりました。
うぃ~。吐きそう。
体力的にも精神的にも、もう限界やわ。
いや、限界は遠い昔に越えていた。
でも、オオトカゲが死んで20秒以内に処理しなきゃ、ドロップ品は出ない。
ノロノロと手だけ聖域から出して、トカゲに触り、残り2匹を光の粒子へと変える。
1匹は肉の塊になり、1匹はトカゲの皮へと変化した。
オオトカゲは仲間を死体であっても乗り越えて来ない。すぐにそれに気づいたので、聖域を囲んでる20匹を全部「窒息」で倒して、倒した1匹だけ聖域の中に引きずりこんで、そこに入りこんだ1匹をまた倒す。ってことを繰り返してた。
2メートルから3メートルあるオオトカゲはめちゃくちゃ重くて、引きずりこむのは大変だった。
すばやく聖域から手を出して上顎をガッてつかんで引きずりこむ。歯がするどくて、コツを掴むまで、何回も手に穴が開いたし、口の中に毒があるようで、すぐに手を引き抜いても、紫色に手が染まってそれが激痛とともに広がる。
何回も繰り返すとオオトカゲの毒にも耐性ができたようで、体への異変は少なくなった。
最初は、手が腐り落ちるんじゃないかってことが何回かあって、ブラックアウト寸前まで回復魔法かけまくったけどね。
そのうち、聖域の中にオオトカゲの死体がたまってきたのを見て、倒したばかりのオオトカゲを引きずりこみながら、ブツブツと、「普通、魔法の世界で何か倒したらアイテムをドロップとかすんじゃね?ドロップ!」と言ってたら、触っていたオオトカゲの死体が光ってコロンッと小さな瓶になった。
聖域のふちで転がる瓶を恐る恐る広いあげる。
「いやいや、魔法、頭おかしいの分かるけど、トカゲが瓶って可笑しくね?」
私はかなり疲れていたんだと思う。
ドロップって言葉を出したらトカゲが光って瓶になった不思議現象にも、心が動かされず、淡々と突っ込むことしか出来なかったった。
聖域に引きずりこんだ、20数匹のトカゲを見て「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」と、深いため息を出すしかできなかった。
そのあとは流れ作業ですわ。
死体と死体の隙間に1匹を誘い込む→窒息の魔法で倒す→少し手を出してドロップと唱える→ドロップアイテムが肉塊だった場合はアイテムボックスへ。牙と瓶とトカゲの皮はとりあえず一ヶ所に→魔法使いすぎて疲れたら少し仮眠……
そんなかんじでオオトカゲ116匹。
全部倒しました。
ホント、作業的なかんじですみません。
でも、私もハッキリ言って、一方的に惨殺して精神ガリガリやられました。
何度か精神的な限界がきて、チェックへの負の感情が爆発して“チェック魔法”が使えるようになりました。
“チェック魔法”はとにかくチェックを殴りたいと思う気持ちを体現した魔法。
殴りたい場所を頭に思い浮かべて
「チェック」
と唱えると、そこへ見えない『拳』が飛んでいく。ちなみに、何も考えず、感情のままに「チェックゥゥゥ」と叫ぶと、大体トカゲの左頬が凹んだ。私は、右ストレートを決めたいみたいだ。
魔法の威力はその時の感情で左右されるので、大ダメージを与えるためには、感情のタメを作らなきゃいけなくて、まだ上手に扱えていない。
あれから、5回レベルアップの音がなり、魔力の容量が増えた。
最後に残った4匹を一気に始末するのは簡単になっていた。
オオトカゲの数がぐっと減って、前方が開いた時に、これ以上、殺すのはやめて進もうかと思った。
けど………私は、オオトカゲ達を私の糧にすることを選んだ。
「ぐがぁぁぁ。終わったぁ。」
変な奇声を発しつつ、私は、仰向けに寝転がる。
時刻は夕方、6時。
夜になる前の穏やかなひととき。
空は薄い青と鮮やかなオレンジで色がブレンドされている。
チラッと横を見ると、聖域の外にこっちを見つめてくる何対もの目。
まだ、このオオトカゲ達をアイテムボックスの中に押し込む作業が残っていたなぁとぼんやり考える。
“ドロップ”を覚えてない時に刈った命が、10数体聖域の周りに放置されている。もう命はない。そこに感情はないはずなのだが、恨みがましい目で私を見ているように感じてしまう。
聖域内のトカゲ達は、へいこらしながら、アイテムボックスの中に押し込んだ。レベルが上がるたびに、その作業は楽になった。
聖域内にオオトカゲの死体が積み上がっていると仮眠を取るスペースがなかったので頑張って収納した。
いや、まじ重いんだよ!
レベル上がったから出来たけど、レベル1のままじゃ無理だったなぁ。
ってか、レベル上がると、筋力?も上がるって不思議だなぁ。
私は、残りの聖域周りのトカゲの死体をママチャリのアイテムボックスに収納し、気絶するように眠りについた。
《21日目》
遂に!
マップ上の一番近かったオアシスについたんですけど!目の前には緑と岩と湖!
砂じゃない!砂もうヤダ!!
足を踏み入れる前にグルーっと、オアシスの周りを1周してみる。10分弱。初オアシスだから、大きいのか小さいのか分からない!
分からない、嘘!マップで見ると点か?ってぐらい小さい!
でも、いいの。いいんです。
緑がある。癒される。“神様”に感謝は絶対に
出来ないけど、誰かにありがとうと伝えたい~
一歩足を踏み入れて、体にピリッと何かを感じる。薄いベールをかき分けたような。
聖域という結界に慣れている私は、何らかの人工的な結界がオアシス全体を覆ってるのが分かった。
マップにも現れている。
このオアシスをアップにすると、青色で縁取られている。誰かが管理してるのかな?
「果物!」
疑問はカラフルな果実を見て吹っ飛んだ。
この世界にきて、まともな食事を取らなくなってだいぶ経つ。
この3週間で、小太りだった私は、かなり痩せていた。
まぁね~。
どんだけ~ってぐらいの強制ダイエットだよね。水は飲み放題だけど、食べ物は生焼けのトカゲ肉。毎日毎日のすっげー運動量。
何とか隊長もびっくり!だわ………
履いていたズボンのウエスト部分は拳一個分以上開いていた。ベルトなんかないから髪ゴムで腰周りを結んで落ちないようにしてる。
そして、全体的に引き締まり、筋肉がついたのが分かる。うん。痩せたのは嬉しい。
が!
めちゃくちゃ辛かった。トカゲ美味しくないんだもん。筋っぽくて。毒あるみたいで苦いし。
もう、私は果物しか見えなかった。
赤い洋ナシ型の果実をもぎる。
躊躇せず、かぶりつく。
「………………っ!?」
うっめー。ヤバい。泣けてきた。
赤い果実はめちゃくちゃ酸っぱかった。
そこにほんのり甘み。
人工的に植えてあるかんじの果物の木が何種類かある。そこを渡り歩き、次々と一口かじってみる。
黄色、水っぽい。緑、甘い。茶色、固くて食べれない。茶色は割るのかな?紫、変な味。
果物は5種類。赤と黄色と緑の残りを食べる。紫もなんか変な苦味があって美味しくないけど、ありがたく食べる。
ちっちゃくなってた胃がびっくりして、痛みだしたのを回復魔法で誤魔化す。
食べ物っていいな。
美味しくて味があるものを食べて、心が落ち着くのを感じる。
泣きながら、湖のふちに座り込み、そっと手を入れる。
「意外と冷たいんだ。」
砂漠の日差しはとても強いので、夏のプールのように、湖はぬるくなってるかと思ったが湖の水は冷たかった。
オアシスの中は気温が安定しているようだ。
ママチャリを湖の横まで引っ張ってきて、聖域の中で全裸になる。
マップを拡大して周りを見ると、辺りに脅威になる生き物はいないようだ。
レベルが上がって、マップの精度も上がったようで、それまで写っていなかった生き物も表示されるようになった。
数キロ先に、青の転々のカタマリがあるが、右下に片仮名でオオトカゲと書かれている。
私は単純にオオトカゲと呼んだけど、それの名前は”オオトカゲ“ではないと思う。
私の認識で変わるのか。まさかと思うが本当にオオトカゲという名前なのか。こちらの人と交わらないと分からない事なので名前については放置です。
湖に入っていく。
水魔法を覚えてからは、毎日夕方にカバンに入っていたハンドタオルを使って体を拭いていたし、レベルが上がって大量の水を出せるようになったので、数日前に砂漠のど真ん中でスーパーで買っていたシャンプーを使って頭の先から爪先まで何回も洗った。
環境破壊?すみませんね~!と思いながら砂漠に溶けていく泡を見送った。
だけど、そのせいで、お風呂に入りたいという欲求が膨れ上がっていた。温かいお風呂ではないけど、浸かれるなら冷たくてもいいやと思う。
「あぁ~。冷たいけどきもちぃぃ~。」
湖は入ると腰ぐらいの深さがあった。
中心に向かって深くなっているようだが、そこまでは怖いので行かない。
「うぅ~。トカゲの時から涙腺壊れたかな?」
涙なんか出尽くしたと思った。この前、頭がおかしくなった時散々泣いたし。
でも、トカゲの死体を見た時。その日に見た夕陽。朝焼け。ピカピカになった体。果物。
湖。
些細な事で涙が出てくる。
少し余裕が出てきたからか、泣くことでストレス発散しているのか。
ま、いっかぁ。泣きたい時には泣いていいよね。と思いながら、私は湖に潜り込む。
《22日目》
オアシスを出て、次の日。
私は……………死んだ…………




