第3話
はい、こんにちわ~。レイラでーす。
みなさん、お久しぶりでーす!
私が異世界に来て、なな、なんと38日が通過しましたぁ。まだ砂漠にいまーす。
そして、遂に!
異世界人との遭遇です。
今いるのは、この世界に来て3つめのオアシスですよ~。オアシスはその名の通り!本当にオアシスです!!
えっ?意味が分からないって?
いえね、砂漠で殺伐とした心を洗い流して復活させてくれるんです。
もう、すごく癒される場所なんです。オアシスって。
多分、誰かが管理してるんでしょうね~。
結界が張ってあって、魔物も入って来ないんですよ。素晴らしすぎですよね~。
それにたくさんの果物の楽園なんです!
初めてのオアシス体験の時、食事が生肉ばっかりだった私は本当に感動しました。
この感動は、また今度お伝えしますね~!
初の異世界人との交流。
ドキドキですね~。行ってみましょう!
でわでわ。
ボンッ
男が子供を蹴った。
「グッ」
子供が小さなうめき声を出す。
その時だった。少年を襲っていた男の顔全体を水の球体が覆う。
男は水をはがそうとするが、水は男の顔にぴったりとくっつき男がどう動こうとはがれそうにはない。
そのうちに男の口から大量の泡が出てくる。男は激しく喉をかきむしりながら、そのまま倒れた。
その数分後。
「回復」
その声と同時にマントを被った女がオアシスの木の陰から出てきた。
あっぶねぇ。ナチュラルに人殺しするとこだったわ。
でも、初めて会う異世界人が私の最大のトラウマを刺激するってどうなのよ?
チェック!おい、チェック。
まじで!今すぐ!殴らせてっ!
この世界にきて10000回以上になるチェックへの呪言を唱える。
もう、それはある意味神への祈りのように自然と出てくる。
私の心を支えてくれている、チェックへのイノリ。
それが今では魔法へと昇華していた。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」
暴行していた男が息を吹き替えした。
そこへレイラは、新たな魔法を放つ。
「チェック」
ドゴッ。
そんな音がして、男のお腹辺りに衝撃が走る。
「ガホッ。」
男が血を吐く。
「チェック」
もう一言呟くと、男の顎がブルンッと揺れ、男は静かに崩れ落ちた。
「拘束」
レイラがそう言うと、砂漠の暑さの中ではありえない物が男の手足を固め始めた。
「こ、氷!?」
声がした方に顔を向ける。
そこには、【天使】がいた。
《2日目~8日目》
1日目、早めに寝たけど、3時間ちょっとで起きてしまった。トイレ……なんかないので、聖域すれすれのところに穴を掘って用を足す。すぐに穴を掘ることはしなくなったけど。
2時間経っても眠れないので、仕方なく歩き始めた。夜中の砂漠は昼間と違い、肌を刺すような寒さがある。そんな中変なテンションになって歌を歌いながら歩いた。生き物とは遭遇しなかった。3時間ほど歩き、疲れたので回復魔法は使わず、そのままマントにくるまり沈むように寝た。
暑さで起きてまた歩く。10時過ぎに空腹で気持ち悪くなり、ユウマの好きなメロンパンを泣きながら食べる。
泣いたら水分がもったいないと思うが涙が止まらなかった。
もう泣くのは我慢しようと思いながらまた歩き始めた。
時々回復魔法で疲労を無理やり回復させ、すこし水を飲みまた歩く。そんなことを繰り返した。
私はひたすら歩き続けた。
トカゲやサソリといった小動物は見かけるようになったが、ママチャリの聖域のおかげで私に近づいて来ることはなかった。
先に飲み物がなくなった。
持っていたのは、2リットルのペットボトルのお水2本と1リットルの紙パックのリンゴジュースとオレンジジュースが1本ずつ、それに紙パックの牛乳2本。
結構あるような気がしてたのに、暑さが軽減されているとはいえ、ママチャリを引きずりながら砂漠で歩くって事は大変だった。
我慢しなきゃと思っても喉はかわく。回復魔法で疲れたらすぐに回復したおかげか、お腹はあまり空かなかった。少し食べたら、それで大丈夫だった。
だけど、喉の渇きはヤバかった。本当にヤバかった。喉に回復魔法をかけても、すぐに喉は渇く。飲み物がなくなって1日。頭の中が飲み物の事しか考えられなくなった。
そして、私は叫んだ。
「水!水魔法下さい!チートの水魔法。今すぐ水魔法お願いします。」
喉はカラッカラで声はあまり出なかったけど無理やり叫び声をあげた。
それが、こっちの世界に来て8日目の早朝の事だった。喉が渇きすぎて、睡眠もろくにとれず、心の底からの叫びだった。
水魔法を!と叫んだ後、空気が震えて、身体中の血液が沸騰した気がした。
その後感覚的に水魔法を使える事に気がついた。
「水」
右手の掌から染み出すように水が出てきた。そのまま見ていると水は零れ落ちる事なく、私の顔ぐらいの大きさの球体になった。
無意識に左手の人差し指でつつくと、一瞬ふよんっと震えたが、すっと指が入っていった。
口を近づけ、ペロッと舐めてみる。
水だ。しかも、大分甘い。
水だ!水だ!水だ!!
夢中で水をすすった。
いきなり勢いよく水を飲んだせいで、咳き込んでしまったが、それも無視して掌の水を飲んだ。全部飲んで、お腹はタポタポだったが、もう一度出そうとする。
出たのはほんのちょっとだった。
そのあと、ブラックアウトが来る。
あぁ、使いすぎたのか。と思いながら、必死にマントを長くし、かけ集めて、その中に倒れこんだ。
回復魔法を使う時は爽やかな風が駆け抜ける。そして、治したい部分に集中するとそこを熱風が通りすぎるかんじがする。
私は回復魔法を2回連続しか使えない。
チェックがレベルがある世界だと言っていたから、そのレベルを上げたら使える回数も増えるのかな?って思っている。
3回連続、全体的に回復する回復魔法を無理やり使った時に初めて気絶を経験した。
部分魔法だと、8回が限界だった。
それを調べるためにわざと腕を出して、日焼けをしてみた。すぐに腕はこんがり焼けた。
また使えるようになるまでを調べたら、気絶寸前まで魔法を使った後、次に使えるようになったのは3時間経ってだった。
きっかり3時間たって、目が覚めた時には辺りはすっかり暑くなっていた。
左頬と右ふくらはぎに激痛が走る。
気絶したせいで上手にマントのフードを被れず、左頬が丸出しだったみたいだ。右のふくらはぎも倒れたはずみでマントがめくれ上がって直射日光を浴びていた。
痛い。マジで痛い。陽が昇って1時間ぐらいしか経っていないはずなのに、水ぶくれまでできているようだ。
「回復」
左手に魔法を集中させて左頬を撫でる。
すぐに痛みが引く。もう一度、回復と呟き、右ふくらはぎも治す。
今度は右手に集中して、少しの水を思い浮かべる。
「水」
掌から水がジワッと滲み始めて、野球ボールぐらいの球体になった。
それを、ゆっくり味わって飲む。
涙が勝手に出てきた。
水分がもったいないと理由づけて泣くのを我慢してきた。
でも、純粋に水への有り難さに涙が出てきたのだ。
「お水、さいっこぅ~!!!」
私は泣きながら叫んだ。
私の3つめのチート能力は水魔法になった。
歩きながら色々考えてはいたんだ。なるべく早く魔王を倒す為にどんな能力がいいか。
いや、魔王が復活しているのかは分からない。魔王を倒してって言うのが人族の願いかどうかは知らない。でも、そうだった場合。魔王さえ倒せば私は元の世界に帰れる。
だから、考えた。どんな能力、どんな魔法があれば有利になるのか。
でも、敵のことは知らないので、どんな能力が適しているかは分からない。
3つめの能力をどうするのかはとっておいて色々人のいる国で情報を集めて、何にするか決めようって思ってた。
だけど、喉の渇きに勝てなかった。
最悪、回復魔法を永遠かけていけばオアシスまで何とかなるんじゃないかって思った時もあった。無理だった。
8日目は、水を優先させて、回復魔法はあまり使わなかったので、暗くなると、疲労で気絶するように眠り、朝まで目が覚めなかった。
《9~15日》
10日目。食料がほぼなくなった。
水魔法を使えるようになって、水の心配がなくなって安心したせいで、気が大きくなり、残っていたスティックパン3本を食べ、豚肉をママチャリの後ろの座席で焼いて(砂漠の熱で置いておくだけでじりじり焼ける)食べた。あと残っている食べ物はチョコレートが6個とミカンの缶詰2つと喉の渇きが増すと思って放っておいたポテチ2袋だ。このポテチは限定味でユウマが大好きな味だった。見ただけでユウマ恋しさに泣けてくるので、アイテムボックスに封印した。ミカンの缶詰めを開けるのは無理だった。28円高い簡単に開けれる方を買っておけば………
残りはチョコだけ。
13日目、泣きながらポテチを食べた。
最後のポテチだけは食べない。
これはユウマと一緒に笑いながら食べるんだ。
お腹が空いた。ポテチへの誘惑に負けそうになるけど、あれは私とユウマで食べるんだ!絶対食べないぞ。
私はそこらへんでよく見かける小さなトカゲをターゲットにする事にした。大きさは10センチから25センチぐらいまで様々。表面は赤色でお腹が白いトカゲだった。
この3日間、ひたすら水魔法を使用していた。
どうにかして、この魔法をうまい具合に使ってトカゲを捕まえたい。
でも、ゲームは詳しくないし、最近はファンタジーな本も漫画も読んでいない。そんな私に魔法は難しかった。
チェックが
「魔法はイメージだよ。イメージ。魔法の可能性は無限大だよ。(ウインク☆)」
みたいなことを言っていたのを思い出した。思い出してまたチェックにイライラしながら、水魔法で攻撃する方法を考えた。
「火の魔法でファイアーボールってあるよね。ってことは、水の魔法でウォーターボールもあるはずだよね。ウォーターボール、ウォーターボール。ウォーター。ボール。おお!浮いた!………これを、ぶつける。えいっ!………げっ、遅っ!こんなんで攻撃になるわけなくね?」
聖域の向こう側には大小様々なトカゲが数匹固まっているのが見える。正午過ぎの一番暑い砂漠で、あぐらをかいて座り込み、ブツブツ言いながらトカゲを見つめる私は完全に不審者になっていた。
「水で死ぬ。溺死。窒息。そうか、窒息させればいいのか。イメージ、イメージ、イメージ。水の球が顔に張り付いて離れない。窒息。窒息。窒息。」
「窒息」
掌に浮かんだ水の球が、先ほどとは違い、ビュンッと固まりのなかで一番大きなトカゲに飛んでいき、イメージ通り、顔に張り付き、ゆっくりと頭全体を飲み込んだ。
そのトカゲはジタバタしていたが、すぐに動かなくなった。
周りにいたトカゲは素早い動きでどこかに逃げていった。
ヂクンッと心が痛んだけど、生きる為に心の隅に追いやった。
豚肉の時のように、後ろの座席に乗せて太陽で焼いてみた。背中もお腹も赤黒いグロテスクなトカゲの丸焼きが完成した。
食べたら、お腹を壊した。
食感や味は聞かないで欲しい。食べられないことはない。とだけ言っておくね。
すんごい勢いでお腹がギュルギュルいいだして決壊寸前。何かが身体中を回るかんじで気分も悪くなったので、毒を持っていたのかもしれない。それを無理やり回復魔法で治した。
他に食べれる物が砂漠にはなかったので、小さいトカゲを見つけるたびに窒息させて、後ろ座席に置いた。
食べて、出して、水飲んで、回復して、また食べる。
そんな事を4日続けたらお腹のギュルギュルも気分が悪くなるのもなくなった。耐性が出来たってやつなんだろうか。
そして、マップを見ながらひたすら歩く。
最初の数日は昼と夜の寒暖差もきつかったけど、マントのおかげで何とかなったしだんだんと体が慣れてきたみたい。
昼にひたすら歩き、暗くなってきたらマントにくるまり寝る。朝方明るくなってきたら歩く。それの繰り返し。
16日目。異変が起きた。
ってか、ちゃんと見えてたのよ?目が覚めるとそこには!ってかんじじゃなかったけれど、昼間にじわじわ遠くから迫り来る影!みたいなかんじで。
それは、トカゲだった。ちっちゃくないトカゲ。遠くで見えた時はちっちゃいトカゲの大群かと思ったら、近づいてきたそいつらは一匹一匹がコモドドラゴンみたいなやつだった。
そいつらが、聖域の回りでカリカリしだして…なすすべもなく、100匹近くのオオトカゲが周りを囲み、砂漠のど真ん中で立ち往生。
私、この時、気が狂っちゃった。
いや、違うな。
後で持ち直したから、発狂寸前までいったってのが正しいのかも。
ちょっと限界きちゃったんだよね~。知らない世界で30の普通のオバちゃんが
(おばちゃんって言ったけど、自分の事おばちゃんなんて思ってませんから!最近のはやりとかには疎いけど、5歳の子供いるママだけど。母でも乙女心は忘れてないの!おばちゃん言っちゃダメ!)
【砂漠横断!ママチャリを引いて果たして砂漠を渡り歩けるのか?】
みたいな事を2週間以上やってて、なすすべもなくオオトカゲに囲まれたら発狂とかもするよね~………
まず、泣いた。
この世界来てちょいちょい泣いてたけど、それ以上に泣いた。今までで一番泣いた。1日は泣いたね。
そして、オオトカゲにダイブして食われてやろうか。死んじまおうかとか思ってみたりもした。
そのあとは叫んだり聖域の淵をグルグル回ったり砂漠の上でジタバタ叫んだりした。
ユウマごめんね。ママは絶対に見せられない姿でわめき散らしちゃったのだよ。
最後は体育座りでチェックをひたすらブツブツ呪い倒した。体を前後に揺すりながら。この時間が1番長かったかも。
でも、でも。
やっぱりユウマが救ってくれた。
チェックにこれも!って改造させた永遠に電源が落ちない携帯を片手に(ママチャリ改造の時ついでにやってもらった。そんくらい出来るでしょ?って)産まれた時からのユウマの写真を順番に眺めているうちに、何が何でも帰らなきゃ!って思った。
あの子には私しかいないし、私にもあの子しかいない。
ここで負けたらアカン!って自分に渇を入れた。




