↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/50

39.家出天使 VS


「ちょ、ちょっと待って天使さん! そもそも、私たちは禍じゃ……」


「くらえーーいっ!」


 こちらの弁明も完全スルーで、家出天使は矢を放ってきた!


 これは逃げないとマズい!


「泣沢女ちゃん!」


 隣に立つ泣沢女ちゃんを咄嗟に抱きかかえて、私は次々迫ってくる矢から逃げる。


「ハルカさん! かたじけないのです……!」


「何言ってんの! 今はみんなで逃げるのが先決だよ!」


 隣で泣いている小さな子を放ってはおけないしね!

 泣沢女ちゃんは常時泣いてるんだけど……なんとなく。

 ……そこはひとまず置いておこうか!


「そんなへなちょこな矢なんて、ボクの鎌で十分です!」


 モルエは自身に向かってくる矢を難なくなぎ払っていく。

 なんかカッコいいぞ、モルエちゃん。


 ……これは、私たちモルエの後ろに避難すれば安泰なんじゃね?


 そうと決まれば、早くしない手はない。

 モルエと私たちとの距離は大体二十メートルくらい。


「よし……、泣沢女ちゃん。一旦モルエの後ろに隠れよう!」


「あいあいさーなのです!」


 ビシッと敬礼の手をする泣沢女ちゃんを脇に抱えながら、私はモルエの背後へ飛び込むように走り込む。


 ……が、ちょっと遅かった。


 禍化した白蛇ちゃんの時もそうだったけど、私って、どうにもこういう判断が一歩遅いんだよね。


 ――ブスッ。


 てことで、私はめでたく?、家出少女の放った矢をお尻に引き受けた。


「い……っ!?」


 い、痛てええええぇぇぇぇ――!!!


 その場に倒れ込む。


 瞬時に泣沢女ちゃんをモルエの背後に放り込んだのは、我ながらファインプレーだったと思う。


 でも痛いのには全く変わりない。


「ハルカ……!!」


「マ、マジ痛えぇぇ……」


 お尻に火が点いたかのように痛い!!


 ううう~……。

 たまにニュースになってた矢ガモって、こんな気持ちだったのかな。


 それに、まかみさんも、こんな痛みを味わってたのか……。

 しかもあの人は、私みたいにすぐ治らないし、泣沢女ちゃんみたいに再生する術もない。


 それでよく、森を抜けて集落まで帰ってきたもんだ。


 道中、さぞ痛くて辛くて、そして不安だっただろうと思う……。


 そう思うと、なんかムカついてきた。


「あなた……。よくもハルカをキズモノにしてくれましたね……」


 モルエが私のために怒ってくれるのは嬉しいんだけど……キズモノってワードはちょっと。

 ……いやたしかに傷つけられたけどさ?


「な、なんで……。あたしの矢を受けて浄化しないの……?」


 家出天使も何やらうろたえてるけど、それはモルエの怒りに対してではなく、私の状態に対してのようだった。


 この際だ。

 ちょっとあの小娘にわからせてやろう。


「ちょっと、天使。あんた、さっきから私たちのこと勘違いしてるようだけどさ」


 立ち上がり、お尻に刺さった矢を勢いよく引っこ抜く。


 もう痛みはない。

 すでに傷が治ってるのか、それともアドレナリンが出てるのか。

 今はそんなのどっちだっていいか。


 その矢を手に持ったままずんずん天使の方へ歩いていく。


「わ、わ……。く、来るな……ッ!」


 天使はあからさまに怯えた様子で後退っていく。


 きっと、今の私はそれほど怖い顔をしてるんだろうね。

 実際ちょっと頭にキテるから、それはそうだろうと思う。


 でも、怒らせたそっちが悪いんだからね?


「も、もう一発くらえ……!」


 すかさず、天使は矢を放ってきた。


 ……が、さっきよりもその軌道が遅く感じた。


 私は、矢を持つ手と反対の手で、その飛んできた矢を掴み取った。


「うっ!? ……嘘でしょッ!?」


「もうその矢にはやられないよ」


 今のがよっぽど視覚的に効果があったんだろう。

 さっきよりも明らかに逃げ腰になった天使。

 半ばヤケクソな感じで、再び弓をこちらに構えて矢を放つ体勢に入る。


 でも、もう遅い!


 一気に天使の目の前まで距離をつめる。

 そのまま、弓を引く手を掴み、力を込めた。


「は、離せ……って、いたたたたっ!」


「こんな痛み、私やまかみさんが受けたのに比べたら何でもないよ……!」


 見た目どおり細い天使の手首。その気になればへし折ることくらい簡単だ。

 さすがにそんなエグいことはできないけどね。


「いたたたたた~っ!」


 ……いや、天使の手からはちょっと軋むような音も聞こえてるから、ほんとにそれなりに痛かったりする?


 すでに天使は、持っていた弓を足元に落としてしまっている。


 自分の力加減がまだ微妙にわかってないから、もしかすると彼女も今、矢を受けるのと同じレベルの痛みを味わってるのかも?


 でも、これくらいは仕返ししないと、私だって収まらない。


「いい? あんた、私たちのことを禍だとか言ってるけど、そこからして違うんだよね。……私は、人間。そして、以前あなたが射たケモミミさんは、この世界に住む神さまなの」


 ほんとは「元神さま」なんだけど、そのくらいは脅し文句ってことでいいよね?


「いででで…………! …………え?」


 痛がりながらも、天使の表情が変化したのが見えた。

 話しが全くわからない子でもないようだ。


「だから、私たちは禍じゃないの。その矢で浄化されない理由もわかったでしょ?」


「ひぃぃ……! わ、わかった……! わかったから! この手を緩めてぇぇ~……」


 あまりに痛かったのか、ついには天使はベソをかき始めた。


 ……こうなると、こっちが悪いことしてるような気になってくるんだが。


 仕方なく手を緩めてやると、天使は腰を抜かしてその場に座り込んだ。


「い、痛いぃ~……。なんで、人間がこんなに力強いんだよぉ~……」


 見ると、その子の手首はホラーよろしく青く痣になっていた。


 ちょっとやり過ぎた感があるけど……、もう矢を向けてくる気力はないだろう。


「ハルカさんは普通の人間じゃないんですよ。まいりましたか、この家出天使」


 いつしか近くにいたモルエが吐き捨てる。


 なぜかこの子へのアタリが強い気がするんですが……。


「ところで、天使さん? これから色々と聞きたいんだけど、いいかな?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=69205178&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。