26.石室ライフが充実しはじめてます
今回から新しい展開に入っていきます!
「ハルカ、はい、どうぞ。食後のお茶です」
「ありがとね、モルエ」
朝ごはんを食べたあと、こたつテーブルに寄りかかっていると、いつものようにモルエがお茶を淹れてくれた。
なんだか、最近のモルエさんからは嫁の香りがする気がします。
ちなみに私は、疲れてるとか体調が悪いとかではなく、ただ食べ過ぎて突っ伏してただけです。
「ずずず……。うんん~っ。モルエが淹れてくれるお茶は相変わらずおいしいねぇ~」
相変わらずというか、最近はさらに磨きがかかってる。
あまりのホッとした感に、つい口調がおばあちゃんくさくなってしまったほどだ。
「ハルカ? 毎度ですし、いつもそう言っていただかなくてもいいんですよ?」
「ん~? モルエは嫌なの?」
「あ、いえ……そんなことはないんですけど。ただ、毎回気を遣わせてしまってるような気がして……」
あ。
これは、さては……。
「いい? モルエ。私は、モルエが淹れてくれたお茶が心からおいしいって思うから、それを素直に伝えてるだけなんだ」
私は思ったことをそのまま伝えるタイプだからね。
ていうか、思ってるのと逆の対応をとるのが苦手ってだけだけどさ……。
「それでもし、モルエが嫌なら今後は控えるけど……」
「い、いえっ! ボクも、自分の淹れたお茶をハルカにおいしいって言ってもらえるのはとても嬉しいですし、誇らしくもなります……!」
やっぱり。
モルエは、気恥ずかしさからか、私の言葉を素直に受け止められなくなってたんだな。
「なら、よかったら私の言葉をそのまま受け取ってほしいな。私はモルエに嘘はつかないからさ」
「は、はい。……すみません。変に遠慮しちゃったみたいで……」
「わかればよろしい。私に遠慮なんていらないんだからね? なんなら、夜も一緒に寝たげよっか?」
「そ、それはさすがに恥ずかしいので遠慮しておきます……!」
今回は本音からの遠慮だった。
よしよし、それでよし。
「……また、どうしても寂しくなったらお邪魔するかもしれませんが」
と、少し離れたところでボソッと言う。
「うん。その時を楽しみにしてるよ」
「た、楽しみにはしなくてもいいです……」
石室で生活を初めて約一ヶ月。
うちの妹が可愛すぎて毎日充実しております!
……ちなみに、そっち系の嗜好は持ち合わせてないからね?
でもほんと、芽衣の他にもう一人妹ができた気分な毎日だ。
ところで、充実しているのはなにも私とモルエの関係だけではない。
生活そのものも、少しずつではあるけど、より住みやすいものへと変わっていっているのだ。
まずは内装。
石室の奥の開けた場所には、こたつテーブルと座布団という『THE・居間』なスペースがある。
やっぱり、まったりじだらくに過ごすならここは重要だね。
ちなみに、今はそんなに寒くないので、こたつに付属していた布団は無限かばんにしまってある。
その居間スペース近くの壁には、これまた取り寄せた時計を掛けた。
現世と合ってるかは残念ながらわからないけど、これで大方の時間がわかるようになった。
ちょうど、時計を掛けられそうな出っ張りがあったのはラッキーだ。
釣り糸と同じく、『縁結びの糸』を利用した。
……私、縁結びの神さまにとことん嫌われそうで怖いっす。
石室の入口側には、食事用の長テーブルとパイプ椅子。あとはもろもろの電化製品。
調味料や調理道具なんかは全部無限かばんにしまってあるので、省スペースもバッチリだ。私とモルエだけだと広すぎるくらいです。
続いて、外装。
入口のすぐ脇には、神社で鳴らす"ガラガラ"を設置。誰かが来たらこれを鳴らして知らせてもらうシステムだ。
……ぶっちゃけ、ドアも窓もないので、誰かが来たら中からすぐ見えるんだけどね。これは装飾の類かな? ちょっとセンスはどうかと思うところだけど……。
そして、石室の裏手に回ると……
……何ということでしょう!
そこには、木造の小部屋が建てられていて、中にはバスルームがあるのです!
これには、元神さまの力をお借りした。
まず、部屋自体は集落にいた「建築の元神さま」にある程度のイメージを伝えて作ってもらった。
集落全部の家屋や工場を作ったのだから、小部屋一つくらい造作もないとのことだと、ヒゲもじゃの強面で豪快に笑っておられました。……恐れ入ります。
中のお風呂に関しては、お取寄せスキルで湯船を、泣沢女ちゃんに涙の水を、ヒノ長老に湯沸かし用の炎をお借りした。
水は、最初は川の水をと思ったけど、無限かばんですくうと川全てを飲んでしまう恐れがあったのでやめた。
いきなりやってきた私が、この世界の環境をみだりに破壊する気はさらさらないしね。
そこで、無限の水|(=涙)を生み出せる泣沢女ちゃんに頼んだのだ。泣沢女ちゃんも快諾してくれてお湯の元は確保できた。
湯加減は炎で調整。
炎を閉じ込めた小瓶、そのフタを開けて、コショウを振りかけるような要領で振る。すると適量の炎が出るので、それを草や枯れ木などに移して火を熾す。
小瓶一つでほぼ無限に炎が使えるので、非常に便利なのだ。
ちなみに、バスルームと併設してトイレも置いたけど、そこに関しては乙女の秘密ってことで。
私はまあいいとしても、うちには年頃のモルエちゃんがいるからね。仕方ないね。
ともあれ。
こんな感じで、石室生活はけっこう快適なものになった。
本来どういった理由でここにあるのか、過去にも、私たち以外に誰かが住んでいたのか……。
そういったところは全然わからないんだけど、これからもこのまま利用させてもらう所存だ。
このはざま世界に来てから今まで、この石室関連で何事も起こってないし……。
…………フラグじゃないよな?
さて、と。
モルエのお茶も堪能したことだし、これから昼まで惰眠でも貪ろうか。
そう思った矢先……。
「ハルカ、これから元神さまの集落へ行こうと思うのですが、一緒にどうですか?」
モルエからお誘いがあった。
「集落かあ。……うん、それもいいね。ご一緒するよ」
目的変更。私はモルエと集落へ向かうことにした。
……いや。
考えてみれば、行動こそ変更したけど目的は変わってないな。




