18.まかみさんとお茶してます
今回から新展開です! 新しいあれやこれやが出てきます!
あのバーベキュー歓迎会からまた一週間ほど経って、私とモルエの石室生活は少し豊かになった。
言うまでもなく、元神さまたちとの交流が深まったおかげだ。
目に見えて変わったのは、なんといっても食事にお肉がプラスされたこと。
まかみさんが狩りの帰りに、石室へおすそ分けをしに来てくれる。
あの足長鳩や、他にも豚や牛的なのもあって、お肉に関してはほんとまかみさまさまです。
お礼としてシャチホコを送ると「いつも助かります! ほんと、ハルカさまさまモルエさまさまです!」と言ってくれるので、お互い良い関係が築けていると思う。
他にも、たまに集落へ行っては調理や保管用の電化製品をプレゼントしたり、その使い方をレクチャーしたり。
逆に、こちらは五穀豊穣の元神さまから上質のお米や麦を貰ったりしている。
パックごはんも便利なんだけど、カカシさんたちがつくるお米は格別においしいのだ。玄米でも食べやすく、どんどん箸が進む。
私が日本人だっていう理由もあるかもだけど、モルエの食べる量も心なしか増えてるんだから、お米愛は色んな世界で通じてるんだなって思ったり。
そして、今日も今日とて石室にはまかみさんが遊びに来ていた。
「いやぁ~、今日は森の方まで出かけたんですけど、動物が一匹も見当たりませんでして。あ、これは以前から干していた豚のお肉です。どうぞー」
「あらら、わざわざすみません。こちらも、いつものお魚ですけど、どうぞ」
「ありがとうございます~。この、シャチホコ。このあっさりとした味が飽きがこなくて~。すっかりお気に入りになってしまいました」
「そう言ってもらえると釣った甲斐がありますよ~」
こういうやり取りが続くせいか、最近は自分が主婦にでもなったような気分になるんだよな。
「お茶をお持ちしましたよ」
「あ、モルエさん。ありがとうございます~」
まかみさんと物々交換をしているあいだに、モルエがお茶を淹れてきてくれた。
「いつもありがとうね、モルエ」
「いえいえ、お茶を淹れるのも最近楽しいですので」
ちなみに、このお茶もカカシさんから頂いた大麦からできたものだ。
モルエが麦からお茶をつくる方法を知っていたので、お茶担当は彼女にお任せすることにした。
「ほ。やっぱりモルエさんの淹れるお茶はおいしいですね~。香ばしさが優しく鼻を抜けていきます~」
「鼻で思い出したんですけど……まかみさんって、ケモノの神さまだったんですよね? 鼻もやっぱりよく利くんです?」
「ええ、わたくしはオオカミだったんで、基本的に鼻を使って狩りやら何やらしていましたよ」
まかみさん――大口真神って、オオカミの神さまなのか。
「かつては日本の集落や村の守り神ともいわれていたんですけどね。実際は周りで狩りをしてただけっていう」
「まあ、神さまって人間の信仰心次第なところもありますしね」
「そうそう、そうなんです。そして近年だと人間社会が急激に進んで、神さまの存在自体も薄れてきてたんですよね。わたくしたちの仲間も日本では絶滅しちゃいましたし、そろそろこちらでゆっくりしようかなって」
それがまかみさんが神から降りた経緯らしい。
なんだかほんと、隠居してる偉いさんみたいだ。
てか、絶滅ってことは、まかみさんはニホンオオカミなのかな?
「何はともあれ、今ではこちらの世界でひっそりと暮らしてますよ。こちらはこちらで楽しいですね~」
お茶を一口飲むまかみさん。
普段わりとマイペースそうな人だけど、すごい神さまたちの一柱だったんだなぁ。
「……これで、禍がいなければ言うことないんですけどね~」
「ん?」
……マガ?
この世界に来てから今まで、頻繁といえばそうなんだけど……またもや聞き慣れない名前が出てきた。
「え、ハルカさん。もしかして禍を知らないとか?」
「ええ……、モルエはどう?」
「ボクも初耳ですね。名前からしてあまり良いイメージじゃなさそうですが」
「そうなんですよ~。禍は厄介ですよ~。元神でも太刀打ちできませんし」
おいおい。
それは穏やかじゃないねぇ。
「よかったら、禍について教えてくれませんか?」




