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17.妹がもう一人できました


「いやあ、ハルカさん! やっはりわいわいとバーベキューは最高れすね!」


 しばらくお肉とごはんのハーモニーに涙していると、突然まかみさんが後ろから私の肩を抱いてきた。


「ええ、お肉もとってもおいし…………て、くせぇっ!?」


 ちょ、まかみさん酒くさいっ!

 よく見ればまかみさん、呂律も怪しいし焦点も合ってない。

 この短時間でどれだけ飲んだんだ……。


「お魚がこんらにお酒に合うとは夢にも思いませんれした~。これは、いつもの八倍速でお酒が進みまふよ~」


 なんかDVDの録画速度みたいだな。

 生まれて初めての魚も、よっぽどお気に召してくれたようだ。


 ……というか、まかみさんの私の肩に乗せた手の動きがうねうねと怪しいぞ……?


「ハルカさ~ん。ちょっと男の子っぽいラフな格好ですのに、意外と女らしい身体つきされてますねぇ~」


「ギャーッ! やっぱりそんな展開かー!」


 悪酔いして絡んできたー!

 こういう場では一人はいるであろう定番キャラだ!


「今日のデザートはもしや、ハルカさんで決まりですかあ~?」


「そして絡み方がオヤジ!」


 まかみさんはそっちの気でもあるのかっ?


 モルエに手伝ってもらい、なんとかまかみさんを引き剥がした。

 彼女をカカシさんたちに預けて、そして休憩も兼ねて、少し喧騒の中から離れることにする。


「はぁぁ、大変だった……」


「お酒は人も神さまも変えてしまうんですね」


 そう言ったモルエの表情は、心なしか沈んでいるようだった。


「ん? どしたのモルエ? ……もしかして、お酒にいい思い出がないとか?」


 お父さんがどうしようもなく酒癖が悪くて、暴力を振るわれる毎日だった……とか……?


「あ、いえいえ。お酒は関係ないんですよ。ただ、ハルカたちが触れ合うのを見てて……」


「……」


 …………ははぁん?


 なるほどね。


「で、ちょっと故郷の家族が恋しくなっちゃったか。それとも、友だちかな?」


「うっ……ま、まあ、そんなところです」


 そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。

 家族が恋しくなるなんて、誰にでもある感情なんだからさ。


 私だって、こっちに来て以来、芽衣や両親のことを思い出して胸が苦しくなることが何度かあったし。


「今までちゃんと言ってなかったけど……ごめんねモルエ。変なことに巻き込んじゃって」


 モルエと会ってから、そういえば彼女に直接謝ってなかった。

 そもそも、この子はただ巻き込まれただけの被害者だ。本人は自分の責任だと言い張るだろうけど。


 ……いや、それを言うなら私もそうなんだけど……そこは今は置いておくよ。

 今はモルエのことが最重要だ、うん。


「そ、そんな……! 謝らないでください。そもそもボクが早とちりで突っ込んだのがいけないんですから。自業自得です」


 予想通りの応えが返ってきた。

 ほんと、どこまでも真面目だねぇ、モルエちゃんは。


 真面目すぎて、ちょっと危なっかしくさえ思える。

 自分の気持ちを隠しちゃったりとかさ。


「よし。じゃあ、言い換えるよ。……モルエ、今日まで私に付き合ってくれてありがとうね。それと、これからもよろしく」


「は、はいっ。こちらこそ」


「それとさ。もし、今日みたいに寂しい気持ちになったら……ていうか、この世界にいる間だけでもさ、私をお姉ちゃんとでも思って甘えてくれていいんだよ?」


 モルエは黙ってこっちを見ていたけど、返事がない。

 気絶はしてないようだけど……固まったように動かない。


 ……え。

 ちょっと恥ずかしいこと言った手前、この間が心地悪いんですけど……?


「やっ、嫌ならちゃんと言ってよ? 私も強要はしたくないしさ?」


「い、いえ! 全然……! 全然……嫌じゃないです」


 どうやら嫌な訳ではないようだった。ちょっと安心。


 ……そうだ。

 そこで、さらに思いついた。

 思いついて、私は"あるもの"を取り寄せて、モルエに手渡す。


「……これは?」


「これは、『ぬいぐるみ』っていってね。日本の子どもたちの人気ものなんだよ」


 お取寄せリストの中の端っこに載っていたのを思い出したのだ。


 神社のどこかで迷子になっていたであろう、イヌのぬいぐるみ。

 本物はまだあっちにあるだろうけど……少しは寂しさも和らぐといいな。


「これをモルエに預けるよ。私とモルエの姉妹の記念として」


 モルエは再び黙り込んだ。

 そしてしばらく経ってから、私の肩口に頭を預けてきた。


「ありがとうございます。…………お、お姉ちゃん」


 ほとんど独り言のように囁いたようだったけど、その言葉に、今度は私がグッとくる番だった。

 ごまかすようにモルエの頭を撫でてあげる。


「改めて、モルエ、これからもよろしくね!」


「はい……! こちらこそ!」


 元神さまの集まるテーブルの周りでは、カカシさんたちがその場でクルクル回るダンスのようなものを披露していた。


 そしてまた別の場所では、積み重ねた薪の上に乗った長老が、張り切って燃え盛っている。

 あんな怖いキャンプファイヤーは初めて見たぞ……。


 あの調子だと、もう少し宴は続くようだ。


 よしっ。

 なら、今日はとことん食べて、そして明日からまた生死のはざまライフを楽しんでいくとするか!





次回、一つおまけを挟んで新しい展開に入っていきます!

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