表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能力者は棺の中で眠らない  作者: s_stein
第1章 死後の世界戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/62

23.永劫回帰

「君は、連中から新生ゲートのことを聞いていると思うが、連中の言うことを本当に信じているのかね?」


 信じているから、ここに来たのではないか。(しゆ)(こう)するまでもない。


「その顔は信じているみたいだな」


 本当にあの距離から僕の表情が読み取れるのかは疑問。おそらく、態度で判断しているのだろう。


(えい)(ごう)(かい)()という言葉を知っているか? 永遠に円環運動を繰り返すことだ。

 それこそが人生。

 人間は、生まれ変わったとしても、全く同じ時間に同じ人生を歩む。結局、同じ時刻に同じ原因で死んで、またここに来る。

 つまり、前世も来世もない。すべて、現世と同じなのだ」


 僕は、また姉貴に罵られたり、ホームから転げ落ちる場面が頭に浮かんできた。


「考えてもみよ。そんな自分だけが都合のよいゲートを通って、人生を違う形でやり直せたとしたら、肉親や知人はおろか、周囲の見知らぬ人間にまで影響を与え、それが連鎖的に波及する。

 場合によっては、世界中が全く違う歴史になるやも知れぬのだ」


 確かに、そう思えてきた。


「過去に、死者が蘇って歴史が変わったという事件は起きていない。

 そもそも新生ゲートなど存在しないからだ。私は、そう確信する。

 仮にゲートが存在して、そこから生まれ変わったとしても、同じ人生を歩むだけだ。

 これを無駄な努力と呼ばずして何と呼ぼう?

 さあ、使者の導きに従え」


 ニーチェの言わんとすることが理解できた。つまり、こうだ。


 僕は生まれ変わったとしても、ドキュメンタリー映画のDVDを再生するように、全く同じことを――もちろん、意識せずにだろうが――繰り返す。


 この世界の出来事も人生の出来事の一つなら、ガロアに出会うことも使者と戦うことも、ここでニーチェの言葉を聞くことも、全て繰り返す。


 そして、生まれ変わり、死んで、また生まれ変わる。


 エンドレスライフなのだ。



 ――本当にそうなのか?



 僕は、インビジブルを解除して、ニーチェの前に姿を見せた。


「僕はあなたの意見を聞いて、それも一理あると思いました」


「ほう。聞き分けの良い新入りだ」


「でも、納得できないところがあります」


「ん? 言ってみよ」


「使者の導きに従え、とあなたは言いました」


「確かに」


「なら、なぜあなたは、使者の導きに従わないのですか?」


「…………」


「本当は、あなたも新生ゲートを通って生まれ変わりたいのではないですか?

 もしかしたら、(えい)(ごう)(かい)()は間違っていて、実は違う人生を歩むのかも知れない、という一縷の望みがあるのではないですか?

 でなければ、いつまでもここにいないでしょう」


「…………」


「ここにいるということは、天国にも地獄にも行かないと(あらが)っているからです。

 それが、何よりも、新生ゲートを探している証拠です」


()(べん)だ」


()(べん)ではありません。

 あなたはなぜここにいるのか、使者とどういう取引をしたのか、答えてください」


「フン。マテマティックの諸君。諸君の人生もここで終わりを告げることになるであろう。

 さあ、その運命を受け容れよ」


 そう言いながら、ニーチェは右手を上げて指をパチンと鳴らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=864234457&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ