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裏切り

 どうしてこうなったのだろう。

 俺はいつも孤独だ。いやそれは耐えられた。俺は生まれてから誰かと一緒にいるということが無かったから。俺はこういう存在なんだと生まれた瞬間に理解した。親からも友人からも向けられている目は同じで、そこには大きく、分厚く、堅い。そういう隔たりみたいなものが感じられた。


 今、俺黒龍「クロム」は聖龍と人間の勇者から逃げている。最初に聖龍から受けた傷がズキズキと痛む。俺の鱗を溶かし至る所から血が流れている。安静にしてないとそのうち動かなくなってしまうだろう。それに勇者から受けた傷も馬鹿にはできない。もう一度同じ場所に傷を受けたら命を落としてしまうかもしれない。


 追撃を逃れるために後ろにロストチェーンを展開する。拘束しなくても触れるだけで多少は相手の能力を無くすことができる。聖龍がブレスでチェーンを吹き飛ばす。少しは時間稼ぎはできると思ったが…。


 仕方ない。少し手荒になるがやるしかないな。邪龍はこの時にも相手から能力を奪う能力を発動してない。それは油断しているかとかではなく、単純にこの能力が好きでないからだ。後から返すことができるとはいえ自分が積み上げてきたものを取られるのだ。いい気分ではないだろう。だからこの能力は使わない。使うときは…


「ブラックンドブレス」


 クロムの口から膨大な魔力が集約し一点から放出される。勇者の鎧は聖龍の加護があるから死ぬことは無いだろう。禍々しい攻撃はあたりを焦がしながら一直線に勇者のもとへ向かっていく。たまらず勇者は立ち止まり、聖剣を高く振り上げ、美しい白い魔力を聖剣に宿らせ一気に振り下ろす。

 次の瞬間に起こる衝撃と爆発。その流れに乗るようにその場を脱出。これで少しは稼げるはずだ。しかし、これではほんとに俺が悪役だな。


 この時、俺は油断していたのかもしれない。敵は勇者と聖龍だけだと思っていたのが間違いだった。


「撃てえええええええええ」


 その号令と共に飛んでくるのは無数の魔法の嵐。極大魔法と呼ばれる対超巨大魔物に有効な一撃が何発もクロムの元へ殺到する。まさか守る対象であった人間から攻撃されると思っていなかったクロムに極大魔法がいくつも直撃した。意識が飛びそうになるほどの痛み。頭は自分が攻撃される理由を探っている。


 全く思いつかなかった。いやひとつだけ思い立った。それは…俺が邪龍だからだ。


「ブラックンドフォース」


 いまだ殺到する極大魔法の嵐はクロムを包む薄い魔力の膜ですべて消滅させられる。能力は奪う。これが聖龍と対象の能力を持つ、クロムが最も嫌いな技で一番強力な技だ。今回はブラックンドフォースを自分の周りだけにして効力をあげたお陰で極大魔法が防ぐことができたとういうわけだ。こうしてみると魔王の絶対防御の能力を似ているとおもうかもしれない。


 ブラックンドフォースで攻撃を防いでる間に体制を立て直す。魔法を奪ったので魔力は回復したが傷は全く回復しない。体のあちこちが痛くて、悲鳴をあげている。

 急いでその場を離れようとするも後ろから極光がクロムの翼を貫いた。この攻撃は聖龍によるものだとクロムは一瞬で判断する。ブラックンドフォースを破れるものは数少ない。


「行け!アスタ!新たな魔王を討て

 セイクリッドフォース!」

「うおおおおおおおおおお!」


 深々と勇者の聖剣が俺の体を後ろから貫いた。口から大量の血が逆流してくる。そのまま力が抜け、片翼を失ったクロムは地上に向かって落下していく。これ以上の追撃をさせまいと勇者からブラックンドフォースでセイクリッドフォースの能力を打ち消す。急な虚脱間に襲われしばらくはまともに歩けないはずだ。気遣いなしのこの技は命を簡単に奪ってしまう。

 更に、最後の力を振り絞って膨大にある魔力を口に収束。聖龍に向けてそれをぶつける。聖龍は邪龍に反撃されるとは思ってなかったようでもろにその攻撃を受けてしまう。極大魔法の魔力を更に龍の魔力で昇華させたブレスを浴びたことで、たとえ聖龍といえどただでは済まないだろう。

 

 落ちた場所は森の中。多くの木々を折りながら落下したことが音で分かった。落ちた勢いは止まらず、さらにどこかに穴に落ち、水に流された。そこで俺の意識は完全に闇の中に消えていった。


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