六話 ステイン2
(君が通常の魔物使いって人達にとって、のどから手が出る程欲しい存在だって言うのも理解したよ。将来の職業は決まったも同然ってことか……。なにせ生まれた街が調教師の街。魔物使いを目指すってことで、ひとまずの目標にするよ)
『まぁ、他にも俺様は誕生したばかりとは言え、『叡智閲覧項』という役割も備えているらしい。俺様の凄さがどんどん判明していくな!』
(え? ごめん、ライブラリって何?)
『なっ!? これだから転生者は! いいか!? お前さんはこの世界の知識が皆無だよな?』
(そうだね。この世界のことは、まぁ成長していくにつれて覚えていくんだろうけど、前世の記憶があるからかな。不安でいっぱいだよ)
『そうだろう、そうだろう。そこで必要になるのがこの『叡智閲覧項』って機能さ! この機能はどのような物品の価値や人物の素性、その他諸々の情報を引き出せる大変有難い代物なのだよ!』
(あー、つまりよくある鑑定とか解析能力みたいなもの?)
『そうさな、確かに『鑑定』の魔導書は存在するな。だが、魔導書の鑑定は相手の持つ魔書には通用しない。物品、人物までだ。その点、『叡智閲覧項』があれば魔書どころか個人の情報なんて手に取るように分かるし、この世界に住む者達にとって、どうでもいい情報でも、お前が生きていくために必要な基礎知識も余裕で閲覧できる。どうだ? すごいだろ?』
なるほどね。確かに凄いや。『叡智閲覧項』か。この機能は重宝しそうだよ。
『知りたい情報があったら、俺様に頭の中で念じろ。そうすれば、俺様が『叡智閲覧項』からその情報を引き出してやる』
(ありがとう。ミルフィールドで知識での心配はしなくて良さそうだよ)
この世界の法とか、常識がどんな辺境にいてもこの『従魔の書』ステインを所持していればいかなる情報も手に入れることは用意だ。
そして、肝心な本来の特性のほうは?
(『従魔の書』本来の力を試したいんだけども……)
『お前さんが赤ん坊っつーことで、まだ魔物がいるエリアへと移動できないからな。シュラのスノーウルフがいるが……、アイツで実験するとシュラがどうにかなりそうで後が怖いからな』
(人の従魔も奪うことが出来るの?)
『あぁ、ほかの奴らはテイムっつーかは、懐かれて一緒にいる訳だが、お前さんは強制的に従えることが可能。つまり、主人の上書きが出来るのさ』
おいおい。人のポケ〇ンを取ったらどろぼう! これ常識だよ!
『ってことで、『従魔の書』の本懐を見せるにはせめて自由に動き回れるようになったらってことだ。それまでは魔力を少しずつ上昇させたりする訓練だ。『叡智閲覧項』から魔力を上げる修行法をピックアップしといたから、それをやってみろ。魔力は俺様の力を使うのにとんでもなく消費するからな。あるだけ損はしないぞ』
(そうだね、知識を溜め込むのと魔力を上げるのが外に出れるまでの間の暇つぶしってことで、頑張るよ)
『おう! あー、あと俺様のページは従魔が増えていくに比例してどんどん増えていくから今はこんな不格好でもいずれは正真正銘のこの姿と相まって神々しい魔導書になるからあんまりいじけるなよ?』
そうなのか。まぁ、そのあたりも外に出られるようになってから実験でいいかな。
じゃあ、もう夜も遅いし魔力を上げる修行法は明日から頑張ろう。
『それ、頑張らない奴がいうセリフ……』
(うっさい。じゃあ、ステイン。明日から僕らの本格的な活動に向けての修行を始めるから今日はおやすみ)
『お、おう。俺様のご主人様はマイペースなんだな……。わかったぜ。明日から魔力上げの修行開始だ。ビシバシいくから覚悟しろ!』
ふぁぁ、おやすみ……。
『おい! おぉぉぉいっ! 早いな! ちくしょう! ったく! ゆっくり休めよ! 相棒!』
ステインのその言葉を聞いたあと、僕は眠気に呑まれるように眠ったのだった。
明日から頑張ろう。
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