二話 目覚め
この作品はご都合主義展開が多々ありますので、ご了承ください。
──ガンッ!!!!
(痛っ!!!!)
突然の頭部に感じる鈍痛によって、目を覚ました。先程まで女神ミルス? とモコモコな雲の上で転生について話してたというのに。
不思議に思っていると、頭上から声が聞こえた。
「あなた!? しっかりと掴んで下さいと言ったではないですかっ!」
「ごめんっ! 俺としたことがこの子の笑顔が天使すぎてつい体の力が……」
「親バカじみた言い訳はいいですから! 早く! 私たちの子は無事なのですか!?」
何やら若い男女が言い争っている声が頭上から聞こえる。いやまて、頭上? 疑問に思い、自分の倒れている体を動かして仰向けになって上を見てみる。
「見ろ! ユキノ! 綺麗なクリクリおめめでこちらを見つめる姿を! 天使だ。俺らの子は天使だったんだ!」
「意味が分かりません! とりあえず、私たちの子は無事ということですね!?」
「あ、あぁ……」
ベットの上の女性が物凄い剣幕で側に立つ男性の腕を握りしめる。おそらく、握られている腕は万力で挟まれているかのような信じられない力が込められているのだろう。若干、男の人の顔が苦しそうだ。
「ほらユキノ! 見ろ! ピンピンしているだろう?」
そういって、男の人は僕の体を両手で掴む。っておい! いくらあんたが筋肉質で筋力があったとしても、大の大人の僕を持ち上げられ──はい。持ち上がっちゃいました。しかも軽々と。
なんかやけに体が小さい気がしてたんだよ。何故だかようやく分かった。僕──赤ちゃんになってるよ!
「はぁー……。良かったです! もう、頭から床に落ちたからビックリしましたよ!」
こらこら。頭から落ちたって、赤子がそれで無事なわけないでしょうよ!
可能性としては何らかの力が働いて死亡を免れたとしか……。
ふと再び周囲を見回す。どうやらここは、ユキノと呼ばれた女性の寝室らしい。というか、先程からの話によると、この男女が僕のミルフィールドでの両親なのだろうか。やれやれ、僕も順応早いな。
女性の方は銀髪で透き通った蒼眼で、柔らかい物腰のとっても綺麗な容姿をした人だった。白いワンピースを着たら幸薄ヒロインの出来上がりだ。僕がイメージしてた聖女のような女性だ。って、完全に日本人じゃないなこの人。マジで異世界ならではという感じの別次元の美しさだった。
男性の方は長身痩躯の引き締まった身体に黒髪黒目。極めつけは爽やか系イケメン。なんて言うか、どこの主人公? って感じだ。僕を見てる間は顔がデレデレなんだけどね。イケメンフェイスが崩れすぎて若干引く。
そして、この男性の足元に寄り添うようにお座りしている真っ白な毛色の狼。犬ではなく狼だ。だって何か威圧感あるもの。ペットなのだろうか。
とにかく、僕の両親はどちらも美形という事だった。ということは、僕の顔もかなりいい方に生まれたのでは?
丁度近くに大きなスタンドミラーがある。そちらを向いてみる、まあ可愛らしいのだけれど、普通の域だった。強いて特徴をあげるのなら、髪はお母さん譲りの銀髪で、前髪に三本の黒いメッシュが入っている事だ。
まぁ銀髪ってだけでもなんかカッコイイし、容姿的には悪くもないので良しとしよう。
僕が一人で納得していると、どこからとも無く声が聞こえてきた。
──雪斗様。どうやらそちらの世界の貴方のお父様が貴方をうっかり抱き落としてしまい、その際に頭を強く打って前世の記憶が戻ってしまったようですね。まさかこんなことになるとは……。
(女神さまですか?)
──はい。私は女神ミルス。記憶が戻ってしまったことは予想外ではありますが、この際致し方ありません。こちらの把握ミスとも言えますので、お詫びに私から少しこの世界についてお話をしておきましょう。
目の前のご両親ガン無視で女神様のご高説が始まるようだった。まぁ、新しい環境の話は必要だから聞いておくか。情報、大事。
──まず、この世界は魔書と呼ばれる様々な書物によってたくさんの恩恵を得ながら成り立っています。貴方が使いたいと仰っていた『魔法』なるものもこの魔書によって使用できます。しかし、この世界では魔法とは違う、ちょっと複雑になる『魔術』と呼ばれるものになります。そして、魔術を使用するための魔書を人々は『魔術書』と呼びます。もちろん、使うためには魔力などが必要です。
なるほどなぁ。つまりその魔術書があれば魔術とやらが使い放題ってことだ。限界などはあるだろうけどね。
(じゃあ、魔術書を手に入れれば魔術が使えるということですね!)
──そうなのですが、まだ話は終わってません。魔書を手に入れることは簡単なのです。この世界の一般の人々は生まれてすぐに私共の使徒である神父などから魔書召喚という洗礼を行ってもらいます。すると、魔書召喚によって魔術書などが手に入るのですが──。
「いやー、サンフォードさん。お待たせいたしました。洗礼の準備が整いましたよ。ご案内いたします」
女神様の話に割り込むようにして、寝室の入口の扉が開き、某RPGの教会にいそうな格好の神父らしき人物が入ってきた。
そうか、これから魔書召喚を行うのか。ほんとに生まれてすぐなんだな。
──そうですね。説明するより、体験してみた方が早いでしょう。私も口頭だけですが、下界に干渉出来るのも長くはありませんので。
(そうなんですか? 僕もどんな魔術書が手に入るか楽しみです!)
脳内会話していると、僕のミルフィールドでのお父さんは神父さんに、連れられて僕を抱きかかえて案内されている。
さぁて、どんな魔術書が手に入るのかな! わくわく!






