プロローグ
すみません。また書かせていただきました。
まさか、僕の最期は銀行のタイルの上だなんてつい先程まで考えもよらなかった。
運悪く、銀行強盗に遭遇し、撃たれそうになった少女を助けた。
僕自身、正義感が強い方ではなかったはずだった。
それなのに、僕は少女が強盗に撃たれそうになったのを庇い、自分が銃弾を浴び、血に塗れて冷たいタイルの床に伏している。
劇的な死を望んでいたわけでもいないのに、身体が咄嗟に動いてしまった。
犯人はもう逃走した。銀行内にはさっきまでの緊迫した雰囲気はもう無い。けれど、人質になっていた人達が僕を見ている。
先程助けた少女が、側で何か泣きながら叫んでいるが、聴覚に異常があるのかうまく聞き取れない。冷たいと感じていたタイルも、冷たいと感じなくなった。
けれど、最期は人を守る為に死んだのだ。
僕の中を、名誉と誇りが満たしていた。
最後の最後で、少女の言葉が聞き取れた。
「ありがとう……ッ!」
それは、心からの感謝だったのだろう。涙を流しながら、懸命に僕の手を握り、必死に伝えてきている。
ほかの人達も、「死ぬんじゃねぇ!」「くそっ! 何でこんなことにっ!」「ごめんなさい……」と口々に声を掛けてきた。
皆、ありがとう……。僕のために泣いてくれて……。
あぁ、駄目だ。もう、意識が──