かぜのしっぽ
風にカーテンが吹かれたとき
そこに誰かいる気がした。
風に形はないけれど
風は形を与えてまわる。
水の波紋と木々のゆらぎと
髪のみだれと裾のなびき。
風に形はないけれど
ぼくらの形のなかに
たしかにのこる
ほおをなでて
このてにふれて
いのちの形をおしえてくれる
いきているものは皆、呼吸する。
けれど、風は呼吸そのものだ。
さて、いきているのかいないのか。
ぼくにはさっぱりわからない
だけど風はいつも
いのちの隣によりそっている
風にカーテンが吹かれたとき
そこに誰かいる気がした。
それはいつもすがたをみせない
風のしっぽをつかまえたような
心地のよいきぶんだった。