天才と武闘大会 初日3
連続投稿中。次は一時間後です。
ある程度日が昇ったのでギルドマスターたちと別れ、受付に来た。
日は差し込んでいるが、まだ朝早いことには変わりない。人は少なかった。
「あ、クレアちゃん! 本当に来たんだ」
「あら、リリアさん。お久しぶりね。本当にって、どういうことかしら?」
リリアも受付として来ていたようだ。
朝も早いのに、ご苦労なことである。
「ああ、うん。久しぶり。ディアナから来るかもって聞いてたんだ」
そう言うと、リリアは辺りを見渡し、何も見つけられなかったのだろう、安心したかのように息を吐く。
「あー、それとね。……この前はごめん。私、気絶しちゃったみたいで」
「この前? ……あぁ。いえ、こちらも軽率だったわ。ごめんなさいね」
おそらく冒険者ギルドでギルドカードを作った時のことを言っているのだろう。
リリアはアサシンの威圧を真正面から受けてしまった。だから気絶――というか失神――したのだ。
「あぅ……こんなんじゃ立派なギルド嬢になれないよね。冒険者さんの気に負けてるようじゃ全然ダメじゃん」
「ギルド嬢ってなにかしら?」
「へ? あ、知らないんだ。んと、ギルド嬢はギルドで受付する人のことなの。つまり今、私がやっている仕事ね。まあ、私は下っ端もいいところだけどさ。――でもほら、やるからにはやっぱり上、目指したいじゃん?」
にっしっしと笑う彼女はとても誇らしげだ。
「アサシンの場合は仕方ないわよ。それに不意打ちでもあっただろうし。……けど、そうね。彼は優しい人だから。もし怖がらずに話すことが出来たら、きっと喜ぶと思うわ」
「そうなんだ! アサシンさんね。……うん。ありがとう、クレアちゃん。私、頑張るね! 目標はアサシンさんと目を見て話すこと!!」
――ここの世界の人たちは、本当に優しいな。
「あ、ごめん。話し込んじゃった。クレアちゃんの登録をしなくちゃだね! ギルドカードを出して、ここに手を当てて」
「ええ、わかったわ」
言われた通りにギルドカードを渡し、手を木の板に置く。
「はい、登録完了! クレアちゃんは12番だよ。お昼になったら番号が張り出されて、自分の対戦時間がわかるようになるからね。時間には遅れずに!!」
ギルドカードを返された。そしてそのまま手を握られる。
「クレアちゃんに巫女様のご加護がありますように。……よっし、無茶しちゃダメだからね! 頑張って」
「ありがとう、リリアさん。ええ、頑張ってくるわ」
手を振ってその場を後にする。振り返ると、リリアはもう次の冒険者の登録をしていた。
握られた手も、心も、とても暖かかった。
「それにしても、お昼に張り出されるのね。……時間どうやってつぶそうかしら?」
とりあえず宿に戻ろう。
他にすることも思いつかなかったので、フィーたちに会いに行くことにした。
「あ、クレア! お帰り!! 戻ってきてよかったの?」
フィーがうさ耳をピコピコ動かして、出迎えてくれる。
「受付はちゃんと終わらせてきたわ。お昼にならないと自分の対戦時間が分からないのよ」
「ああ、人数が多いらしいしな。受付にも時間がかかるんだろう」
フィーと共に席に座ると、オルザが当然のようにお茶を出してくれる。
今回は茶菓子も一緒だ。
「ほら、食え。……もし昼一番だった際、腹が減ったら困るだろう」
オルザなりの気遣いだったらしい。だから茶菓子にしては量が多いのか。
「あ、あたしも欲しい! オルザ、あたしの分も」
「フィー様はダメです。お昼が入らなくなりますから」
その代わりこっち。と言われ、フィーの前に小さめのお菓子が置かれた。
「むー。……けち」
それでも駄々をこねずに大人しく食べるのだから、フィーぐらいの年の子にしては聞き分けのいい方だろう。
「そうだ、クレア! 今ね、エーゲルが場所取りをしてくれているの。頑張るって言ってたから、きっととってもいい席よ! だからね、クレアの戦うところ、近くでちゃんと見てるからね!」
「あら、大変。だったら余計に、無様な戦いはできないわね。任せなさい。いいところ、見せてあげるわ」
満面の笑みを浮かべるフィーを悲しませることなどできない。
ただの優勝だけじゃダメだ。キレイに、優雅に勝たなければ。
「……俺としては、フィー様に血なまぐさいところを見せたくないのだがな」
オルザのため息は、ご機嫌なフィーの耳には届かない。
保護者な彼の心情を思うと、余計にキレイに勝たなければと気合を入れるのだった。




