天才と秘密共有
連続投稿中。次は一時間後です。
「錬金術だったかな。……素晴らしいものだね」
エーゲルはそれぞれ席に座るように促す。
未だに私に対して疑いの目を向けているオルザも、渋々着席した。
「すごいよ、クレア! ピンクの髪も好きだけど、この色もとっても良い!!」
フィーは手鏡を片手に、カチューシャを付けたり外したりして遊んでいる。その都度、髪色や長さがコロコロと変わっていた。
さすが私、天才。問題ないわね。
「さて、フィー様。それを付けてでしたら、大会を見に行ってもいいですよ。それに、明日も外出されて構いません」
「エーゲル、それは本当!?」
「はい、このエーゲル。嘘はつきません」
フィーはキャッキャッと喜んだ。
「しかし、エーゲル様。そんな得体のしれないもの、危険では」
「危ないものではないのだろう? クレアお嬢さん」
「ええ、大丈夫だと思うわ」
「思うでは困るのだ!」
オルザが恨めしそうに見てくる。
「だったら使わなければいいでしょう。私はあなたたちにあげただけよ。それを使うか捨てるかは、あなたたち次第だわ」
「捨てるなんて嫌! オルザは心配し過ぎなのよ」
フィーが頬を膨らませて言う。
そしていいことを思いついたというように笑った。
「ねえ、オルザが付けたらどうなるの? 付けてみて」
そんな彼女に悪乗りして、私も勧める。
「そうね。危険かどうか、ご自分で付けて判断したらいいじゃない」
「なっ! そ、そのような可愛らしいものは……俺には……」
「ダイジョウブ、ダイジョウブ。似合う似合う」
「貴様、適当に言っているだろう!」
「本気で言ってほしいの?」
「そういう意味では……ぐぅっ」
言い返せなくて唸っているオルザ。この人面白いな。
「ふむ。だが、クレアお嬢さんさえ良ければ、オルザの分も作ってはくれないか? もちろん、材料費も謝礼も支払おう」
「このうさ耳カチューシャを?」
「なっ! エーゲル様まで!!」
「はっはっは、違う違う。髪と目の色が変わるものを、だ。……どうかな、クレアお嬢さん。引き受けてはくれないか?」
エーゲルが真剣に聞いてくる。
「もちろん、喜んで承りましょう」
懐の寒い今だ。上客は掴んでおいて損はないだろう。
二つ返事で引き受けた。
「ありがたい。できれば成人男性でも身に着けられるものにしてやってくれ。……そして、報酬に色は付ける。だから彼らに姿が変わる魔道具を与えたことは、どうか内密にしてほしい」
「魔道具ね……。いいわよ。誰にも言わないわ」
「助かる」
オルザも不服そうだが、礼を言う。
「ま、その代わり報酬はいっぱいもらうけれどね!」
「貴様というやつは!」
ふっふーん、と彼の怒声を聞き流す。
だがこれは私が意地汚いのではなく、秘密を知ってしまった際のお約束のようなものだ。報酬を納得するまで貰うことで、絶対にバラしたりしない。
「まずは、上質な金属が欲しいわ。できればダンジョン産。次に宝石ね。加工されていても、アクセサリーになっていないもの。それか原石で。あとは、素材になりそうなものを随時購入ね」
「もちろん、クレアお嬢さんのお好きなものを選んでくれ」
「……本当に容赦ないな」
「金属はあなたのものの材料にもなるのよ? うさ耳カチューシャが良いのなら、私は楽でいいのだけれど……。あ、うさ耳よりも、猫耳の方が良いのかしら?」
「どっちも断る!」
オルザは怒って部屋の奥へと引っ込んでしまった。食器の鳴る音が聞こえているので、おそらく食器を洗っているのだろう。
フィーと二人で顔を見合わせて笑った。
「クレアお嬢さん、買い物は明日でもよろしいかな? 案内は付けるので、フィー様と一緒に回ってはくれないか?」
「構わないわよ」
こうして明日の予定は決まった。
武器と鍋の素材も入手できそうだし。加えてお風呂にも入れてくれると言う。
ウッキウキ気分で風呂場へと向かった。




