天才の失敗
リハビリ作品ですが、頑張ります。
アトリエシリーズ大好きだ!!(※二次創作ではありません)
唐突だが、私は天才錬金術師だ。
普通の人なら自分のことを天才と呼べないが、私は自他ともに認める天才なので、言ってもいい。
いや、正確には違うか。今、天才になったのだ。コレを完成させたことによって。
「ついに完成した。……異界渡りの宝珠」
手の中で七色に光り輝く宝珠を眺め、うっとりとする。これによって私が天才であるということが証明された。
「さすがです、師匠」
傍に控えていた弟子が、私のことを賛美する。彼女はその能力を見初め、私が拾ってきた子だ。昔に比べて明らかに肉付きが良くなってきた。良いことだ。
「当然よ。だって私は天才なのだから」
「はい、師匠は天才です」
「ええ、天才なのよ」
鼻高々に言えば、弟子が肯定する。不毛なこの掛け合いが、今は無性に楽しい。
「ですが、師匠。師匠は天才であり、その頭脳は万物を超越しておりますが、残念ながら肉体はまだ子どもです。どうぞ一度休まれてください」
そうだ。この異界渡りの宝珠はこの世の理を操作できるアイテム。作成するためには、超貴重な素材はもちろんだが、5日間ひたすら釜の中を回し続ける必要がある。つまり私は5日も寝ていないのだ。
「そうね。でもお腹が空いたわ。不眠薬のおかげでまだ眠くないし、先に食事とお風呂を済ませたいわね」
「かしこまりました。では用意してまいります。少しばかりお待ちください」
「よろしくね」
「お任せください」
10歳も年の違う少女に偉そうに指示されても、彼女は一切怒らない。むしろ嬉しそうだ。
シックな柄のメイド服を綺麗にさばきながら、配膳のために弟子のエフィーは部屋を後にした。
「んぅー。……あぁ、気分がいいわね」
エフィーの居なくなった部屋で、大きく伸びをする。縮こまっていた筋肉が息を吹き返した。
「久しぶりに外の空気でも吸ってみましょうか」
手の中で光り輝く宝珠をつるりと撫でると、私は意気揚々とアトリエの外に出た。
青々と茂る木々。頬をなでる穏やかな風。歌う小鳥たちのさえずりと、花々のさわやかな匂い。周りを取り囲むすべてが、私の偉業を称えてくれているようだ。
「あぁ、素晴らしい。私はなんて素晴らしい」
宝珠を太陽に掲げる。七色の輝きが一層強くなった。自画自賛。美しい。
「ああ、早く使ってみたいわ。明日、試運転も兼ねてホムンクルスに使用してみて、異界の素材を回収させて。あぁ、なんて待ち遠しい。すぐにでも私に使いたい……」
もちろん危ないからそんなことはしないが。でも欲を言えば第一号は自分が……。いやしかし、危険だし。
「けど私は天才なのだから、失敗なんてするはずがないのよ。これも無事に異界に繋がるはずだわ」
だから、使っちゃってもいいかな?
不眠ゆえのグダグダな思考。頭なんて回っていなかった。だが、それがいけなかった。
穏やかな空気が一瞬にして変わる。体を駆け回る寒気。危険察知。とっさに腰に手を伸ばす。杖を取るつもりだった。でも。
「あぁ、アトリエ内だったわ」
ならばと、右手を前に突き出す。魔法を展開するつもりで。けれど。
「……まずいわね」
そこには光り輝く宝珠が。先ほどよりも、深く濃く輝きを増していて。
「やっちまったわ」
迫りくる刺客と私を包んで、その場から消えた。
天才、天才とうるさい子ですが、どうぞよろしければ可愛がってあげてください。
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弟子「師匠、もしかして私の出番ってこれだけですか?」
師匠「残念だけれど、そのようね」
弟子「かしこまりました。では師匠がご不在の間、アトリエの中で記録して待っております」
師匠「まって、何を?」
弟子「師匠がこれまで行ってきた偉業と、箪笥の中を」
師匠「最後」
弟子「おパンツまでも」
師匠「言い直さないでほしかったわ」
弟子「そしていずれは本にして皆様に師匠の素晴らしさを知らしめるのです」
師匠「おパンツの柄だけが広まる気がするわ」
弟子「ご安心ください。間違いがないように正確に書き記します」
師匠「おパンツの柄を!?」
弟子「▽」