メモリーズオブ光治(10)
―咲が?俺を助けなくても死んでいた?そんなばかなっ。―
そして、咲の母親はまだ口を休めない。
『実は、貴方宛ての手紙があります。いつ書いたのかはわかりませんが…。これを。』
…そして、その手紙を貰って、少し咲について話したあと、咲の母親とは別れた。
家に着いて、光治は咲の手紙を開けてみる。
―こんにちは、光治君。今日が最期の日です。でも光治君がこれを見るころにはもういないと思うから、これは天国からのメッセージかな?私が突然いなくなって、驚いたかもしれません。ごめんね。実は―この後は病気の事が書かれていた。―
ネコを助けている光治君を見たのは、実は病院の中で入院している時だったんです。その後光治君を見て、寂しそうに思えた。強そうにみえて、実は誰よりも弱い人にみえた。だから、変えてあげたかった。
素直な君に。
本来の、強い君に。
光治君と話した日ははっきり言って、楽しかった。自分でも驚くぐらい。
最期に、光治君に暴力なんて似合わない。だから、もっと優しく、素直になって。
そうすれば、きっと、かっこいいから。
そして、今度は光治君、君が他の人を変えてあげて。君ならできるよ。君の優しさなら…。
最後に、好きだったよ、光治君。
あとのあつい気持ちは公園についてから、ということで。これまでっ。バイバイ、光治君。―
『くっ、咲、咲〜〜〜〜〜〜〜、俺も好きだった、そして、俺は変わった、今、変わったんだ〜〜〜。』(光治)
光治は叫ぶ、天にも届くような声で。
それから、光治は転校する。思い出を残して。
”赤色の悪魔”と”咲”
二人は死んで、新しい一人が生まれた。
和田、光治。
本作の主人公の始まりの物語。
今、光治は咲の墓の前にいる。
―咲っ、なんで、なんで、お前は死んでしまったんだ。―
声がかえってきたような気がした。
―元気だして、光治君、私は元々、そういう運命だったし、今、君には仲間がいるでしょ?ほら、後ろに。―
後ろには舞、明、広梳がいた。
『なっ、お前ら、ついてきて…。』(光治)
『何言ってんの、僕ら、光治君が自殺でもするんじゃないかって心配だったんだよ。』(明)
『そうそう、心配して損した。』(舞)
『気がすんだか?』(広梳)
広梳からみた光治の顔は以前とうってかわって晴々(はればれ)していた。
『ああ、帰ろうぜ。』(光治)
―君には、私の加護があるから。―
最後に聞こえた(気がした)その言葉は光治を元気づけた。
―ははっ、頼むぜ、俺の女神様。―
『運動会でも俺らが1番だぜっ。』(光治)
『…体育祭だって。』(明)
『どっちでもいいじゃねーかよ。』(光治)
『馬鹿ね』(舞)
『なんだと。』(光治)
『同感。』(広梳)
『おいっ、お前までっ。』(光治)
こうして話は続いてく。家に着くまで。
夏の暑さは思い出を残す。乗り越えなければならない、そして、乗り越えた思い出を。
メモリーズオブ光治・完