メモリーズオブ光治(9)
振り向くと、さっき逃げた者がもどってきていて、全員が光治にナイフを投げていた。気付いた時には必殺必中の位置にいた。よける術もない、もう間に合わない。
その時だった。咲が二日前と同じように体を滑りこませてきた。咲の背中には無数のナイフが深々と刺さる。それからの1分程度の記憶はない。気付けば、奴らは全員倒れていた。
そして、光治は咲のもとにもどる、何かを、一生懸命喋ろうとしていた。光治にはかろうじて聞こえた。
『ごめんね。ありがとう。』(咲)
そして、目を閉じた。
『なんで、お前が謝らなきゃなんねえ、ウォォォォォ。』(光治)
光治は泣いた。が、立ち尽くしている暇はない、咲を優しく抱くと、走った。走って、病院まで連れて行った。…が、手遅れだった。薄幸の少女だった。光治はその晩、ずっと病院にいて、泣きつくした。
そして翌日、公園に言ってみる。咲がいるような気がして。しかし、いない。代わりにヤンキーがいた。いつも以上に激しく痛めつける。
その翌日、光治は病院に行った。
―確か、ここで、ネコを助けたんだっけな。…死んじまったけど。―
光治は苦笑する。
そして建物を殴り、泣く。
『いつも、いつも、こうだ。助けたいものを助けられない。俺は…無力だっ。』(光治)
光治は叫んだ。
『咲ぃーーーーーーーーーー。』(光治)
そのあとすぐに、声がした。
『あのっ、もしかして、光治さん?』
振り向くと40歳ぐらいの女性だった。
光治は話を聞いてみることにした。
話を聞くと、彼女は咲の母親だと言うことがわかった。そして、
『咲は…病気で、入院してたんです。』
『はい、それは聞きました。』(光治)
『病名は、言ってま…せんよね。』
『ええ。』(光治)
『三年病です。』
『三年病!?』(光治)
『知らないのも無理はありません、謎の奇病なのです。もちろん、治療らしいことはしますが、ほとんど、効果はありません。』
『そうですか…。』(光治)
『三年病の怖いところはかかってから、三年で、きっかり死ぬと言うことです。…そして、その最期の日が、二日前、つまり、ナイフで刺された日だったのです。』
『えっ!』(光治)
『あの子は、優しい子でした。どうせ尽きる命なら、貴方の為に使いたかったのでしょう。』
光治はショックを、頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。