メモリーズオブ光治(8)
―咲っ。―
たった二日前に会った少女、その事だけを考える。
―咲っ、どうか無事でいてくれ。―
そして、目的地に着くと、この前の奴がいる。30人程の子分を連れて。
『よう、”赤色の悪魔”、遅かったな。』
『やはり、二日前の…、お前か!!咲をどこにやった!!!』(光治)
『ま〜あ、そう急ぐな、お目当ての嬢ちゃんなら』
そいつは体を横に反らした。すると、後方に咲がさるぐつわのようなものを噛まされて、両手も縛られ、立ってムームー言っていた。
『ほら、ここにいる。』
『テメェら全員、三途の川拝ませてやんぜ!!』(光治)
と、言いつつ、正直、光治は―これはまずいかもな―と思っていた。雑魚とはいえ、人数が桁違いだ。
とにかく、咲を救うため、奴らに突進していく。奴らは光治を中心に囲っていく。ここから光治はサンドバッグだった。咲のことだけを考えて他に何も考えない。そのせいでいつもの半分の力もでていない。奴らは以前に光治にやられた事をそのまんま仕返す。
光治は蹴られ、殴られ、転がされる中、奴らの間から、泣いている咲を見た。
しかし、何もできない自分を呪う。
―ゴメン、咲、偉そうにでてきたけど、助けられそうもない―
そして力つき、目を閉じる瞬間、光治の目は開かれた。
『駄目っ!』(咲)
この声が聞こえたからである。咲はいつのまにか、さるぐつわを外していた。
(両手はそのままで)
その声に反応したのは光治だけではなかった。
『おうおう、かわいいのう、ねーちゃん。』
『ヒャハハハハ。』
『だめー、だってよ。かわいがってやるか』
全員、光治には関心がなくなったかのように、咲の方へ行く。
光治はこいつらの言っているように本当にかわいがってやる為に咲の方へ行ったのではないと理解していた。
その瞬間、光治に力がもどった。目に光りが、爛々と輝く。逃げる者もいれば、かかっていく者もいた。
かかっていく者は少数で、数人だったが、光治はいつものように軽くいなす。そして、殴る、蹴る、殴る、蹴る。”赤色の悪魔”の降臨だった。
リーダーヅラが吠える。
『チッ、こうなったら、俺自らが』
そう言っているうちに光治はボスヅラを全力で殴っていた。ボスヅラも倒れた。…が、倒れる前に後方に合図を送っていた。光治は後ろを振り向く。