メモリーズオブ光治(4)
『おい、女。どけっ。』(光治)
光治はその女の子にもガンをつける。
だが、女の子は全身が震えているにもかかわらず、どかない。そして、また
『駄目っ!』
と言った。
雑魚なら、光治にガンをつけられただけでも逃げる。それが、普通の、しかも女の子にここまでされたことに怒りをおぼえる。
『もう一度言う。どけっ、どかないと、お前を殴って、こいつも殴る。』(光治)
光治に目を合わせないようにして、女の子は言う。
『じゃあ、私を殴ってもいいから、この人はもう殴って駄目っ!!』
光治は
―弱ったな。―
と思った。
光治にはこの女の子を殴る理由がないのである。もともとムカつく奴だけを殴ってきたので、この子を、しかも女を殴るわけにはいかなかった。確かにこの女の子にもムカつきはしたが、女、しかも理由のない奴を殴るのは光治のプライドが許さなかった。そして、何より、こんなことは初めてだった。
『アニキをかばうのはわからなくもないが(実際わからない)、俺はこいつをもう俺に歯向かえないぐらいに痛めつけないと、こっちがやられるんだ。』(光治)
女の子はまだ震えている。そして言う。
『この人は、アニキでも家族でもないっ。』
『はあっ?』(光治)
つい、声にでた。
―こいつ、馬鹿なのか?―と思い、聞いてみる。
『じゃあ何でそいつを守るんだよ。』(光治)
前より口調も優しくなる。女の子の方はさっきよりも強い口調で言う。
『やり過ぎだよっ!!この人、可哀相。』
『だから自分が犠牲になってもいいってことか?』(光治)
女の子は強く言う。
『うん!!!』
―なんなんだ、この生物は?理解不能だぜ。これだから人間って奴は。―
光治は”人間”という種族が嫌いだった。自分勝手で何を考えているかわからない、これが光治の人間に対する定義だった
それでもなお、光治は説得?を試みる。
『でも俺はこいつを痛みつけないといけねぇ。でないとこいつはまた、歯向かってくる。』(光治)
『駄目っ!!!』
光治はキレる。
『何がダメなんだっ。こいつをやらなきゃやられるのは俺なんだ、やるか、やられるか、そういう世界なんだよ。』(光治)
『それでも駄目っ。光治君は負けないよ。私、知ってる。光治君は他の誰にもない優しさを持ってる。それさえあれば、人を変えられる。ただ、それを強さ、いや、暴力で隠してるっ。もったいないよ!!』