メモリーズオブ光治(2)
―あいつには勝てないこともわかりきってるし、光明が制御してるからかってに出てきはしないだろう。―
『拓也、とか。』(広梳)
―奴が、奴が、なんだってんだ!―
光治は自らライバルだと思っている男に一度も勝ったことがないことに対して劣等感をおぼえていた。その男にまた負けるのが恐い、と言われたことに対して、以上な反応を示した。
『ウォォォォォ、奴がなんだってんだ、らっしゃぁぁぁぁぁ、やってやろうじゃねーか。俺が、奴に勝てばいいんだろ?』(光治)
そのクラスにいたみんなが光治の狂いざまにビクッとした。
小学校まで一緒にいた広梳でさえたじろいた。
『あ、ああ。だが、あいつは強い。必ず決勝辺りにはくるんじゃないかな。』(広梳)
『わかってる。』(光治)
そう言って、いきなり立つと、鞄を持って、クラスを出て行った。
『良かったんだか、悪かったんだか…。でも一応感謝はしとくわ。ありがと。』(舞)
『いや、俺もただ本気のあいつを見たくなっただけさ。…でもあの時、確かに昔のあいつに戻ってたな…。』(広梳)
『昔の…光治君?なんか興味あるな。』(明)
『やめとけ、あいつは過去を詮索される事を極端に嫌がる。』(広梳)
『まあ、簡単に言うと、昔はグレてて気に入らないものはたたきつぶす一匹狼だったってわけさ。』(広梳)
『光治君にそんな過去があったなんて。』(明)
『へ〜、光治もいろいろあって変わったのね〜。』(舞)
『変わったのは中学校時代の親友のおかげって言ってたけど、詳しくは…。』(広梳)
『なんか、興味が湧いてくるのよね。』(舞)
『僕も。』(明)
『明君、光治の過去を探ることで、一緒に手を組もっか。』(舞)
『いいね。』(明)
『おまえら……』(広梳)
―さっき、警告したばかりだろうが―と言おうとしたが、呆れて何も言えなかった。
……咲。なんで、なんで、お前はっ!!!
帰り道、光治は悔やんでいた。過去の事で。先程、光治が異常反応を示したのは”拓也”の事を言われたからだけではない。この時期も関係していた。この時期が光治を余計に感情的にさせていた。
中学2年の夏、光治は彼女に会った。あれは…今年のように、真夏の日。
光治はいつものように学校を休んでいた。正式に休む手順をとったわけではなく、サボタージュ、いわゆる、サボりをしていた。何するつもりもなく、公園に向かって歩く。