メモリーズオブ光治(1)
放課後のミーティングも終わり、みんながガヤガヤさわいでいる。聞こえる共通のキーワードは”体育祭”。
『体育祭?何だ、それ?』(光治)
明は呆れた顔で話す。
『光治君、ミーティングで居眠りするクセなおしなよ。』(明)
そして、一息ついてからめんどくさそうに話す。
『体育祭ってのはつまりね、小中学校でやった運動会みたいなものだよ。まあ、内容は小中学校のような遊戯と違って、本格…わっ。』(明)
光治の机の正面にいすで座っていた明は横からいきなりきた、人影に驚いた。
『そう、”体育祭”はこれまでのような、お遊びじゃない。本格的なスポーツで、純粋な魂と魂のぶつかり合いなのよ。そんなエネルギーの固まりのような奴が、話し聞かないで、どーすんのよ。』(舞)
半ば、怒っているようにもみえる。が、光治は関心なさげに、
『へー。』(光治)
とだけ言う。実の所、光治は本当に関心がなかった。光治が関心あるのは同じ魂のぶつかり合いでもボクシングや、プロレス、といった、もっと過激なスポーツの方だった。幼少のころから喧嘩ばっかしてきた彼にとっては仕方がないことだといえる。
光治はサッカーや、テニスといったスポーツは、―あんなの遊戯と変わんね―と、馬鹿にしてさえいた。
まあ、体育は5以外の評定をもらったことがないことからしても彼の運動能力の高さはうかがえる。
『やる気ないわね〜。自覚してんの?あんたがやる気なかったら、私達のクラス全体の指揮も下がっちゃうんだからね。』(舞)
『あ〜、わーってるよ。』(光治)
分かったふりだけはしている。
明は首を横に振る。―今回は…駄目かな。―と思い、諦める。
ここで、いい加減、協調性のない光治に対して苛立ちをおぼえていた広梳はついに、切り札を出す。
『光治、お前、恐いんじゃないか?』(広梳)
無関心だった光治が、反応するように光治の左眉がぴくりと跳ね上がる。
『あ?何がだ?』(光治)
平静を装っているつもりらしいが、声はうわずっている。
『負けることにだよ。』(広梳)
『誰に。』(光治)
今度は両眉をピクつかせている。やはり、怒っているらしい。
『芦来河や、』(広梳)
―奴には一度勝ってるし。―
『花月、』(広梳)
テニス、サッカーをしているみなさん、ごめんなさい。