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36.激戦

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 カオルが川に足を踏み入れた瞬間、大きな爆発が起こった。あらかじめ川にセットしていたC4爆薬がカオルの腰まで届くほどの水柱をあげていた。


 しかし、平太達の期待叶わず、爆発を受けたその巨体は転倒すること無かった。千年杉のような足は、なおも地面を捉え続けていた。またも低い低音が響く。


「罠か殊勝だな」


 平太達の作戦を笑っているようだった。平太はマイクを使って現地に呼びかけた。


「作戦をフェーズ2へ移行可能です。皆さんお願いします!!」


「「「フェーズ2了解!!」」」


 平太達より早く河川敷に到着していたチヌーク1号機からプレイヤー達が降り立ち、次々に遠距離攻撃を開始する。


 RPG、マテリアルライフル、レールガン、ロングボウ、ライトニングボルテックス、マジックランス。それらは空を埋め尽くしながらカオルの顔面を狙った。


「ほう。ならばコレで返そう」


 カオルが腕を組むと同時に、鎧の各所が開き、全身を紫色の光が包んだ。


 遠距離攻撃が届くまであと少し。平太とプレイヤー達が一様に固唾を飲んだ。カオルは静寂を破る。


「マテリアルレーザー」


 カオルを包む光が一際強くなった時、紫の光の筋が発射された。鎧の各所から放たれたビームは曲線を描きながら、こちらの攻撃を捉えた。


 ドン。ドン。と連続した爆発音が鳴り響き、カオルの周囲が煙に包まれる。少しして煙が晴れると唇を引き締めたまま、無傷のカオルが現れる。どうやらこちらの攻撃は全弾打ち落とされたようだ。


「ちぃぃぃ!! 総員デカブツを休ませるな!! MPが切れるまで打ち尽くせ!!」


 画面の向こうで、チヌーク1号機に乗っていたプレイヤーの声が響き渡った。




「もう少しで河川敷に到着します。既に戦闘が始まっているようなので攻撃準備をして下さい」


 チヌーク3号機を運転しているパイロットの言葉に平太は画面から目を離し、窓を覗き込んだ。河川の中にプレイヤー達の攻撃を受け流しているカオルの姿が見える。


 何の気なしに平太が眺めていると、カオルと目があった。


 カオルは......笑っていた。


「回避しろぉぉぉ!!」


 平太は喉が張り裂けんばかりに大声を出した。カオルは深く息を吸い込むように胸を膨らませる。紫色の光がカオルを更に輝かせる。


「くるぞぉぉぉぉ」


「マテリアルブレス」


 カオルは口から紫色のビームを吐きだした。

 空気が一気に乾燥し、大気が震える。チヌーク三号機は機体を前傾にすることで、ギリギリ底部を擦りながら回避した。


 紫色のビームは、平太達の後方に佇んでいたビル群に当たると、真っ赤に燃え上がり、マグマを形成していく。


「危な!! 早く降ろしてくれ!! オラこんなゲーム嫌だぁ」


 同乗しているプレイヤーから悲痛な叫び声が聞こえる。ホイホイ付いてくるやつが悪い。平太はもう一度窓の外へ視線を戻した。


 窓の外は未だ輝いていた。カオル紫色の光の本流で、平太達が乗るチヌーク三号機を捉えんとしているようだった。


「終わってない!! 加速しろ!!」


「加速はするが、全員パラシュートをしてくれ!! もう間に合わないかもしれない!!」


 チヌーク三号機はパイロットの言葉に呼応するように機体を斜めにして加速した。平太は椅子の下にしまったパラシュートを探りながら窓の外を見ていた。


 紫の閃光がチヌーク3号機を捉えそうに見えた時、口からソレを吐き続けるカオルの頭の横から、もう一台のチヌークが現れた。


「チヌーク3号機、チヌーク3号機。こちらチヌーク2号機。これからカオルの顔面に突撃する。これから顔面突撃する。プレイヤー達は全員カオルの鎧上に移動済み。そちらの健闘を祈る。FUBAR!!」


 辛うじて聞き取れた無線の音を最後に、カオルの横っ面を殴るようにチヌーク2号機が突撃した。


 爆発が起きるか? 平太は期待したが、カオルは顔に当たるより早く、紫のブレスでチヌーク2号機を吹き飛ばしてしまった。


 ドン。平太が同情を感じるより早く、機内に揺れが響く。ズレた射線は、直撃を免れたが、何処かをやられたようだった。機内が傾き、重力を忘れたプレイヤー達が機内を飛び回った。


「チヌーク3号機被弾! チヌーク3号機被弾! 総員後方ハッチから脱出せよ。総員後方ハッチから脱出せよ」


 平太は探り出したパラシュートを着用し、機内から脱出しようと脱出口へ急ごうとした。その時だった。


 視界の端に、頭を赤く染め、ふわふわ漂う速水が見えた。速水の目はオロオロと動いていたが、体は一切動いていなかった。


 ショックダメージだ。平太は戦慄した。先ほどの攻撃で、速水がダメージを受けてしまったのだ。剛力の時と同じ。強いダメージで動けなくなっているようだった。


 平太は頭を回転させた。チヌークの機内が無重力ということは、ほぼ墜落だろう。


 死ぬ可能性が有るのは2通り。

1.墜落しチヌーク諸共、炎に呑まれる。

2.脱出時の高さが足りなければ、パラシュートでの減速が間に合わず潰れる。

 この場合、平太はダメージが少ないため助かるが、速水のダメージではキャラロストだろう。


 自分だけ助かるか? 痛いのは嫌だし。頭に悪魔の囁きが逡巡して、平太は迷った。迷ってしまった。


 気付けば、動けるプレイヤー達は平太とショックダメージを受けた速水他数名を残して脱出してしまったようだ。


 平太は口に指を突っ込んで、窓の外をみた。地面は大きな腕を広げて、平太が落ちる瞬間を待ち構えていた。死がもうすぐだ。目の前に迫っている。


 平太は速水を見やった。

 速水は.....薄ら笑いを浮かべて達観した表情をしていた。


「あああああ!! チクショウ!!」


 平太は大声をあげると共に、速水を抱えてチヌークから脱出した。チヌークが切った風は平太達を高く押し上げ、平太達は空へ舞い上がった。


「何してるの!? 何で私を助けるの!?」


 速水が慌てたようにまくし立てる。平太は負けじと怒鳴りかえした。


「助けて何が悪いんですか!? 仲間じゃないですか!!」


 平太は言葉を続けようとする速水の頭を自らの胸元に押し当て黙らせると、チヌーク2号機が地面に吸い込まれ、赤い花を咲かせた。


 爆風が吹き荒れ、平太達は木の葉のように吹き飛ばされた。


 平太は上下の感覚が失われ無いよう頭を下にして自由落下の姿勢をとった。


 速水が胸元で何かを怒鳴る。平太はガタつく顎を引き締めると、どんどん大きくなる地面に頭から吸い込まれていった。


 落ちていく瞬間、平太はパンツを確認した。派手な柄だった。

次くらいで終わらせたいですね

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