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33.避難

 マンホールに逃げ込んでしばらく後、平太は蓋をずらして頭だけを外に出した。


「どこにいるのだ。戦士たちよ!!!」


 カオルの声が空気を震わせると、視界の端に高速移動する建物が映る。


「ひえ!!」平太が頭を引っ込めると同時に、轟音と揺れが起こった。建物が崩れているのだろう。工事現場のドリル音以上の爆音が雨のように鳴り響いていた。


 平太達が逃げ込んだマンホールはセーフハウスになっていた。20畳くらいありそうな大きめの部屋で、銃などの物資がぶら下がっている。中央には大きめの卓袱台と大量の座布団が並べられていた。


 聞いたところによると平太たちが今居るエリア『アクアガーデン』は『海獣』と呼ばれる巨大怪獣出現イベントがあるそうで、セーフエリアはそこかしこに点在していた。


 平太たちの他にもチョコチョコ逃げ込んでくるプレイヤーが居て、部屋を圧迫させ始めていた。


 平太達の近くにいた重装備プレイヤー二人の呑気に会話が聞こえる。


「にしても、今回のイベントは告知無かったなー。いつもは陸に上がって来ないのに、今回のは上がってくるし」


「不具合じゃね。外の様子見てみろよ。みんな様子おかしいぜ。変な病気が流行ってるらしいから、運営側もイベント間に合ってないんじゃね」


「ははっ。最近部屋から出てないから知らんわ。たまには、ポテチ買いにコンビニ行ってくるわ」


 平太は口に手をかざして、剛力に話しかけた。


「これ、ヤバイやつじゃ無いですか? 完全に怒らせちゃってそうですよ」


 平太の声に立てた赤髪がヘナヘナになった剛力が笑う。


「どーしよ。本当に。勝つ方法って何かあったっけ?」


「勝つ方法なんてあるわけ無いだろ」


 剛力の言葉に答えたのは、何処から現れたかわからない胸ポケットにペンを入れた白シャツの外人だった。


「あ、あの〜あなた誰ですか?」


 平太がおずおずと声を掛けても、全く聞いている様子が無かった。


「お前らゴジラ見たことあるかよ。あの巨人、ゴジラ以上のサイズだぜ。イエー。考えられるかよ。ゴジラ以上にデカイ奴が言葉喋りながら、建物投げてくるんだぜ。勝てるわけねぇよ」


「はははー。そうかも知れないわね。というか誰?」


 速水もまた怪訝な表情を浮かべながら男へ問い掛ける。


「しかも、さっき『アクアガーデン自衛隊』が『海獣』討伐しようと、『ロッキードマーティン F -35AライトニングⅡ』『10式戦車』持ち出してたぜ。攻撃は成功したが、鉄くずしか残らなかったって言えばわかるか? イエー。絶望的だよな。次は『B-2』でも持ってきて、焼け野原にするか? 多分効かないだろ。あれ」


 言い終わると同時に、大きな揺れとともに弾けるような爆音が響いた。部屋の証明が明滅し、埃がボロボロと降ってくる。それらが剛力の頭に降りかかり、少し白っぽくなった。


「なんだぁ今の? あと、誰なんだお前」


「『03式中距離地対空誘導弾』まで飛ばしてきたか。さてさて、どんな調子かな。オーイエー。元気そうだぜ。倒せない敵って何だよ。クソゲーだな。そうだったこんなことしてる暇は無かった。今日は早めに終わってクソ漁りでもするかな.....」


 そう言うと男は消えていった。ログアウトしたのだろう。


「「「だから、誰なんだ!!」」」


 剛力、速水、平太が思わず声を揃えてしまった。結局、何だったんだ。


「まあ、〇〇〇〇ナードは置いといて、速水の『奥の手』を使う時が来たんじゃない?」


 昴がギラリと目を光らせた。前回のくまさん事件のせいか、凄く怖い気がするのは気のせいでは無いだろう。


「もう使うのー? 仕方ないけどー」


「ええ。奴に目にものを見せてやりましょう?」


 速水の言葉に昴が満足そうに頷いた。


「そういえば、速水さんの奥の手って何ですか?」


「『なかまの呼びラッパ』よ。これを吹くと10分に一人兵士を呼び出せるわー」


「凄いですね。2日吹けば約300人ですか.....武器とか戦車とか出るんですか?」


「出せるわよー。現代自衛隊が持ってる武器は出せるわー」


「そんなことよりさっさと始めましょう? 速水はココでラッパを吹いて。剛力と平太は、私と作戦立案よ。さあshall we game?と行きましょうか?」

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