30.勝率
29
「どういうつもりだ?」
カオルは意味がわかないといったような視線を平太に向けた。
「どうもこうもない。お前の攻撃なんてコレで充分だ」
平太がそう言って手を振ると、カオルは顔を歪めた。
「ならば、受けるがいい」
カオルは背に下げた剣を掴んだ。
平太は息を大きく吸い込み、恐怖で震える歯を噛み締めた。
一撃で終わる。一撃しか受け止められない。勝つも負けるも一撃だ。
だから.....。平太はもう一度大きく声を張り上げた。
「木偶の坊がァァ!! 一撃で殺してみろやァァ!!」
平太の声に呼応するようにカオルの手は動いた。
カオルが描く煌めく光に平太は少し見惚れた。既に頭上にあった剣は平太の頭を真直に捉えていた。
「平太ァァァァ」
剛力と昴の声が聞こえる。同時に頭に激しい炸裂音が響き、平太の意識は.....。
「テメェよくもやってくれやがったなぁ」
剛力は怒りで顔を真っ赤にして立ち上がった。昴と速水は呆然と何が起きたかわからないような表情をしていた。
カオルはくだらない物を見るような視線を平太に向けると剣を振り、平太を転がした。平太は打ち捨てられたゴミ袋のように受け身も取らず転がった。
「.....弱者が何を考えていたか知らないが、我に立ち向かおうとする気概は良し。次は誰だ?」
「俺が相手だ!! ぶっ殺してやる!!」
剛力は一歩前に進み出た。回復出来たようで盛った猿のような金切り声を上げていた。
「貴様は戦士のようだな」
カオルはニヤリと顔を歪め、平太を軽く蹴り飛ばしながら大股で歩き出した。
平太は......バレないよう立ち上がると同時に跳躍し、武器屋のワゴンで勝った長袖の上着をカオルのクビに巻きつけた。
「なに!? 貴様!?」
カオルは驚いているようだがもう遅い。上着は頭と胴鎧の隙間に入っている。
平太は素早く上着の袖を縛り、反転して走り出した。
「首を絞めるつもりか? 我には効かんぞ」
カオルはまたも小馬鹿にしたように笑うが、平太はもっと笑っていた。
「残念だったなぁ。これでも食らえ」
そう言って平太は大量のピンをカオルに投げつけた。
「何だコレは?」
カオルは再度顔を顰めた。平太はそれを見て笑った。
「クビに上着を巻きつけるだけなんて、つまらないだろう? 手榴弾入れといたぜ。吹き飛べ!!」
カオルが平太の言葉に、慌てて上着を解こうとする直前、上着は閃光を見せた。
上着の袖にくるんで入れた大量の手榴弾は、活躍の場を待っていたと言わんばかりに轟音を上げ、カオルの頭部を煙で包んだ。
爆音と共に発生した風は平太の割れて使えなくなったヘルメットを吹き飛ばした。
剛力達が唖然とした表情をこちらに向けてきた。平太の華麗なる手際に驚いているのだろう。
「平太.....お前、そのあたまは.....」
剛力が泣き笑いの表情を浮かべている。平太としても嬉しい限りだ。
「ええ、やってやりましたよ!」
平太の言葉に剛力は顔をクシャクシャにした。
「.....何で頭にパンツ被ってんだよ」
平太の頭には、ド派手な柄のパンツが風にたなびいていたのだった。




