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27.膠着

 平太と昴が剛力の元へ走り出すと同時に、カオルもまた、そちらの方向へ走り出した。一歩足を上げるだけで土が龍のように宙へ登る。重量級のダッシュ。

 トドメを刺す気だ。平太は焦りながら、足を動かした。



「平太!! 剛力を介抱してそのまま後退しなさい!! デカブツは私が引き付けるわ」


 昴はそう言うより速く走ると、カオルの前に躍り出た。


「身を呈しての行動、見事なり!! 先に貴殿から潰そう!」


 カオルはニヤリと笑い、大剣を再度振り上げ、前進する。


「何度も同じ攻撃が効くと思ったかしら!!」


 昴は三本の矢を、4本の指で器用に挟むと弓を横にして放った。矢は風を切りながらカオルへ向かう。


 カオルは雄牛のように、飛んで来た矢を、頭の振りで二本弾き飛ばした。そのうちの一本は額を掠めるが、カオルは止まらない。それを見た昴は怒鳴り散らすように声をあげた。


「平太。 何してる! さっさと逃げなさい!! 」


 平太は息も絶え絶え、剛力の元へたどり着いた。剛力はヘラヘラと笑いながら胸に出来た赤い線を指差している。血が出ているようにも見え無くもない。平太は軽くトラウマを思い出しそうになって首を振った。


「おう、ダメージが大きすぎて、混乱になったわ。回復してくれい」


「剛力さんが軽すぎて嫌になりますね」


 平太はそう言いつつ、回復薬を剛力に飲ませた。剛力は光に包まれ、胸の赤い線が消える。


「昴さん。剛力さんを回復させましたよ!!」


「何回言わせるの!! 後退なさい!! さも無いと、私が倒されるより先に、あんたを潰すわよ!! 」


 昴の叱咤に平太と剛力は走る。容易に潰される姿が想像出来てしまった。


「〜〜を大地の神々に捧ぐ。アースクエイク!! 時間稼ぎは少ししか出来ないわ。走って!!」


 一人遠くにいる速水はそう言って先を光らせた杖を地面に突き刺した。一瞬、地面が水面のように揺れ、杖の先の光る物体が池へ落ちるように吸収されていく。


「剛力さんアースクエイクって何ですか?」


 平太が走りながら聞くと剛力は地面にダイブした。


「地震だよ!! 飛べ。ほふく前進しろ。絶対に立つなよ!!」


 平太は言われるがまま飛んだ。着地するとゴツゴツとしたアスファルトで肘と足が砕けるかと思った。ゆっくり寝転がれば良かった。平太は軽く涙を流す。



「ナイス速水!!」


 昴は悪そうな顔をすると、カオルとの距離を更に縮めた。


「自害を選ぶか!! それもまた僥倖!」


 正面衝突寸前、カオルはニヤリと笑い、正面から来る昴に振り上げた剣を下ろした。


「そんなわけないでしょ。ウスノロ」


 剣は空気を切る。昴は体を横に逸らし、ギリギリを見極め剣を避けた。砂礫が飛び散り、刃は昴のスカートの裾の端を切るだけに止まった。


「チィ」


 昴は悪態をつくと、振り落とされたカオルの腕を駆け上がり、顔を足蹴に一回転しながら平太達の方へ跳躍した。


 昴はアーチを描きながら平太と剛力の上に着地、同時に平太と剛力は血反吐を吐いた。


「昴さん。重い「......なんか言った?」.....いえ、なにも」


 この人のやる事には何も言うまい。平太は痛みを堪えた。


 ふと、目の前に転がる石に目が入った。小さな石はカタカタと揺れる。それは微振動から大きな動きとなり、大きな地面にへばりつかなければならない程強い揺れが来た。


 ほふく全身しようとするも真っ直ぐ進むことが出来ない。揺れが強過ぎてどっちへ進めているのかわからなかった。


「ぬううう。何のこれしきぃ」


 カオルはしゃがむと同時に剣を地面に突き刺し、揺れに耐えていた。鎧が重いのだろうか?


「平太!! 早くこっちに来なさい!置いていくわよ!」


 声がした方向を見ると昴と剛力が到底人間には出来ないような動き方でほふく前進していた。その姿はすでに遠く、平太のみが置いてかれていた。


「既に置いてかれてるじゃないですか......」


 平太がボソリと呟くが早いか、揺れが収まり始めた。


「平太!! 走れ!! 来るぞ」


「俺ばっかり、こんな感じだなぁ」


 平太はゴキブリの姿を頭に描きながらカサカサと両手足を必死に動かす。剛力たちには到底、追いつけそうになかった。


 完全に揺れが収まる頃、やっと仁王立ちしている剛力の足元へたどり着いた。立ち上がろうとすると足がガクガクする。明日は筋肉痛だろうか?




「どうした? コレで終わりか?」


 カオルはそう言って立ち上がった。遠目に見ても全くダメージを受けていないようだ。


「ウルセェ。準備運動しただけだ!! テメェなんか全然怖くないからなぁ!! バーカ!! バーカ!!お前の母ちゃん......」


 剛力が負け犬の遠吠えよりも惨めな言い訳を大声で怒鳴る。策でも有るのだろうか?


 そんなことを考えていると剛力が後ろ手にチョイチョイと合図した。なんだろうか? 不審議に見ていると、平太の視界が青い物体で遮られた。


 それは青いウィンドウだった。唐突に出てきたウィンドウには、ほふく全身している剛力の映像が写っていた。状況から察するに、逃亡している時に撮影したのだろう。


『あー。聞こえているか? ビデオメールでスマンな。チャットだと入力に時間が掛かるからビデオで撮っている。とりあえず、俺が会話で時間を稼ぐからその間にみんなは作戦を聞いて欲しい.......』


 そういうことか。平太は剛力の時間稼ぎ(笑)が時間稼ぎになることを祈りつつ耳を傾けた。


『現在、オレと昴、平太はカオルの真正面から5m程の場所にいる。反対に速水はカオルの後方.....10mくらいか? の場所にいるな。さて、作戦としては、平太が囮となってカオルをひきつける......』


 俺が囮!? 平太は既に嫌な予感しかしなかった。


『その間に俺は『メテオショット』の溜め動作を行う。速水は地形を変えて俺を隠してから、昴と一緒に、カオルの顔を狙って遠距離攻撃をしてくれ。そして、溜め動作が終わり次第、平太は俺の方にカオルを誘導しろ。罠にかかったカオルを、後ろから俺が叩き潰す.....』


 剛力の待ち伏せ作戦には概ね賛成だが、今の所、奴にこちら攻撃が効いている感じは無い。どういうつもりだろうか?


『多分、奴は遠距離攻撃は鎧で防げるが、背後からの近距離攻撃はダメージを受けると思われる。わざわざ跳躍してまで、後ろにいた俺を攻撃してきたんだ。背後に何かあるのは確実だろう。あとは、みんな気付いている通り顔だな。カオルは顔への攻撃を避けている。鎧がないから当たり前だろうが......。気を逸らすには充分だろう』


 そういうことか。平太は理解「可」能となった。


「なまむぎなまごめなまたまごみたいな腐乱臭するぞお前ぇ!!」


 ビデオの剛力に気を取られていたが、悪口を言い続けている剛力は結構限界そうだ。腐乱臭が漂ってるのは語彙力の少ない剛力の頭では無かろうか?


『説明は終わりだ。と、その前に平太。カオルの誘導をお前に頼む訳だが、奴の攻撃は振り上げてから下ろす一刀両断の戦法だ。ギリギリを見極めて回避するか、間合いに入らず手榴弾かフラッシュバンを投げて誘導をしてくれ。こんなもんか。準備が良ければ手を挙げてくれ』


 回避か。平太は考える。カオルは1パターンでの攻撃しかしてきていない。ということは、他の戦法もあり得るということだ。剛力案の後者を採用し、攻撃の範囲外からフラッシュバンを投げて時間稼ぎをしよう。


 考え事を辞め周りを見ると、昴と速水は既に手を挙げていた。ヤバイ。平太も慌てて手を挙げた。


「......猫のトイレ砂を頭から被れやコラァといつつ、平太頼むぞ!!」


 完全に語彙の切れた剛力は足を開き、武器を構えた。溜めの姿勢だろう。


「行きます!!」


 平太はそう言って走り出した。

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