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18.再会



 平太は数え切れない程の人々に囲まれ、指をさされていた。

 ある者は平太をあざ笑い、ある者は怒り、蔑み、苦悶の表情を浮かべながら平太に何かを言おうとしていた。

 しかし、平太に声は届かない。


 耳を塞いでいたからだった。


 平太は全てがウンザリだった。

 何事も無く平和に暮らそうとしただけなのに、冤罪を掛けられて牢屋にぶち込まれた。世界を救うと言われ、いきなり連れて来られた先では丸焼きにされた。


 他人は平太に危害しか加えようとしなかった。全て黒柳の言った通りだった。全てが敵だった。

 平太は心に決めた。これからは誰も信用しない。独りで生きてやる。生き抜いてやる。誰にも邪魔はさせない。と。


 平太は周りにいる奴らを睨み、強い決意と共に立ち上がろうとした。


 そこで目が覚めた。額に冷たい汗が伝う。

何だ夢だったのか。平太は肩を落とし、息を吐いた。ある程度落ち着いてくると疑問が頭を擡げる。

 それにしてもここはどこだろうか?


 平太は周囲を見回す。

 真っ白な天井と視界の上で風に揺れるカーテン。肌触りの良いシーツとふわふわの布団。暖かい組木で囲まれたベッドの柵。気温は熱くも寒くも無く丁度良かった。


 とりあえず、生きてはいるのだろう。ここが何処なのかは知らないが。平太は体を起こした。


「おう。起きたか?」


 対面の窓枠に真紅のリーゼント頭の男が腰掛けていた。サラシを胸まで巻き、髪よりも紅い学ランには燃え上がる炎と『剛力』の二文字が描かれていた。いつの時代のヤンキーだろうか?

 顔は現実で見た時より、鬼のようになっていた。


「剛力......さん」


「おいおい、感動の再会だろ。もっと喜んでも良いんだぜ」


 平太は口を一文字に結ぶ。信用はしてはいけない。それをすれば、待つのは地獄だ。


「そうだ体!!」


 平太は布団を捲ると腕や脚を確認した。

 しかし、そこに火傷の痕は何一つ無く、綺麗になっていた。あんなにも熱かったのに火傷の痕が無いってどう言う事なんだ?


 平太の表情を読んでか、剛力が笑いかける。


「回復薬なら使っておいたぜ。動けるし見栄えも良いだろう?」


「......ありがとうございます」


 油断させて突き落とす算段か? それともただの善意か? わからないが礼は言っておこう。仮でも協力者だ。真意はわからないが。


「なんだぁ? なんか不満でもあるのか?」


「別にありませんけど......。なんでですか?」


「.....ふーん。まあいいや。下の部屋で待ってるぜ。顔洗って着替えて来いよ」



 剛力はそう言うと窓枠から飛び降り、部屋の扉を勢いよく開けた。ふと剛力の足が止まった。


「......おい。平太」


「なんですか?」


「......いや。何でも無い。早く来いよ」


 剛力は向き直る事なく、後ろ手で扉を閉めると外へ出て行った。



 剛力は何が言いたかったのだろうか? 少し考えてみたがわからなかった。布団から起き上がり、部屋の隅にある木製の洗面台に近付く。ヒノキの香りがする温かみのある盆に蛇口を開いて水を貯める。


 ユラユラと揺れる水面に目付きの悪い男が映る。それは知っているようで知らなかった男だった。平太は優しく手を入れる。

 波が現れ男の顔は滲んで消えた。



 顔を洗いスッキリした平太は階段を降りる。螺旋状に巻かれた階段や壁は全て木製で良い香りがした。


 階段を降りた先には食堂があった。木目の綺麗な長方形の机とそれを囲むように並べられた幾つもの丸太をセットとして、体育館程の広さに最大限まで詰め込まれていた。

 しかし、広さの割に客は少なく、閑散としていた。

 人が嫌いな平太にはありがたかった。


 食堂の隅から目立つ赤い髪の男が平太の鼓膜を破壊せんばかりの大声を出した。


「おうい。ここだ。ここだ」


 周囲の目線が平太と剛力の二人に注がれ、平太は思わず舌打ちした。


「......クッソ。辞めてくれよ」


 平太が呟いた声は剛力に届かず、肩を落として歩き始めた。


 剛力に近づくと異様な格好をした面々の顔が見えた。隅に置かれた机は丸く作られており、グルリと5席配置されていた。

 平太以外は全員集合していた。


「おそよう。お昼まで寝てるとはいい身分ね」


 春川昴はそう言って平太に笑いかけた。何だコイツ。こっちは死にかけたと言うのに。

 平太は軽く睨み返す。


 昴の服装も大きく変わっていた。全体的に白を基調として、胸元に大きなリボンを飾っていた。短めのスカートとニーソックスと、これ見よがしに出された細いウエスト。

 機械で出来た兎耳。まさに、深夜アニメで見そうな出で立ちだった。平太はおずおずと進言する。


「おそようございます。凄い格好ですね。恥ずかしく無いんですか?」


「おあいにく様。私は開放的な方が好きなタイプなの」


「あははー。ホントに凄い格好よねー」


 速水晶良はそう言って笑う。彼女は真っ白になった髪を青いリボンで縛っていた。

 全体の色は青と白で統一されており、フリフリのドレスを身に纏っていた。長めのスカートに、長手袋とニーソックスで殆ど肌を露出しておらず、立て掛けた日傘を見ると太陽に対して完全防備と言えるだろう。

 昴が深夜アニメなら、速水はメリーポピンズのような服装だった。


「あら、貴方にだけは言われたくないわ。いい大人がその格好はキツいわよ」


「あははー。言うわね。この露出魔。

 そんな格好しなければいけない程、説破詰まる原因でもあるのかしら?」


 売り言葉に買い言葉。部屋の温度が下がる。何でこんな仲悪いんだよ。コイツら。


「お二人さん落ち着けよ。平太も良いから座れ」


 剛力は二人を気にした様子も無く、呆気からんとした表情で平太に笑いかけた。平太は、かくりと頷き、椅子に座った。


「......これで全員集合だね」


 同時に対面に座っている男が本を置く。碧眼、青髪のどこかミステリアスさを感じるイケメン。園崎辰馬だった。

 眼鏡が無くなり、全体的に青を基調とした鎧は、肩と腕を護るプロテクターにのみ留まり、それ以外は上等な布地だった。胸元から鳩尾を逆三角形型に開き、腹の辺りには青い宝石が6つ散りばめられていた。


「体調は良くなったかな?」


 そう言って園崎は微笑んだ。平太は内心の怒りを隠し笑った。


「ええ。お陰さまでもう痛くないですよ」


 その言葉に園崎が表情を曇らせる。何を言っているかわからないそんな表情だった。

 何が言いたいんだよ!! いちいち突っかかって来るな!! 平太は苛立ちを押し殺す。


 その瞬間、背後に気配を感じた。平太は椅子を後ろへ蹴り飛ばすとサイドステップで左側に移動し、逃げる準備を整えてから背後を確認した。


 そこには。


 驚いた表情をしたウエイトレスが料理を持って立っていた。椅子はウエイトレスに当たらずに足元に転がっていた。


「料理をお持ちしました......?」


「スミマセン。ご迷惑をお掛けします。そこに置いておいて下さい」


 園崎はそう言ってウエイトレスに笑いかける。ウエイトレスは顔を赤くして「はい」と小さく返事すると両手に抱えた5枚の皿を置いて奥に引っ込んだ。


「落ち着きなよ。誰も君をとって食べようとはしないさ。さっさと会議の続きをしよう」


 園崎は椅子を指差す。平太は渋々腰を降ろした。机の上に置かれた皿にはケチャップで赤色に彩られたスパゲッティがあった。

 大きめに切られたソーセージにパラパラと撒かれたチーズが美味しそうだった。丁度、グゥと腹が鳴る。


「さて、今後についてだが......」


 他のメンバーはまだ食べる様子がない。平太は我慢できずにフォークに手を伸ばし、スパゲッティを巻き取る。香ばしいトマトの香りがする。平太は一気に口に含んだ。


「塩辛い!!」


 平太は思わず、大声を上げた。思わず、口に含んだものを吐き出し飛ばしてしまう。

 周囲の人間が一斉にこちらを向いた。園崎が本当に不機嫌そうな顔をして声を出した。


「さっきから『痛い』とか『辛い』とか一体何を言ってるんだ!! ゲームに痛みも何もある訳ないだろ!!」


 平太は驚きに目を見開いた。何を言っているのだろうか?

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