ドーナツホール
勉強につかれた
なんとなく気分が落ちてるので小説書く
駅前のドーナツ店に入ると、甘い匂いが私を包んで幸せな気分に満たしてくれる。
なににしようかなあ、
オールドファッションと、ポンデリングと、Dポップと、あと適当にめぼしいものをたくさんトレーに放り込んでレジに向かう。
店内はほどほどに混んでいて、いつものようにあたたかい雰囲気で、さっきのメールのことなんてとっくのとうに忘れていた。
なのに、
私の世界に平穏なんて訪れないのかと思ってしまうくらいに、私はまた掻き乱されるのだった。
「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりでっ………あ」
「………………っ」
「………………あおい?」
「………………」
「ねえ、………葵だよね?」
「……店内で食べますので」
「あ、あ、はい」
「…あ、あとアイスコーヒー」
「………かしこまりました」
「……………………………」
「…………アイスコーヒーあとでお持ちしま
「はい」
なんで
なんでお前がここにいるんだ
やけくそにドーナツを一口かじる。
口のなかの水分を持っていくだけのその物体は、さっきまで店内の照明に照らされてまるで今にも跳ねだしそうにお客さんに買われていくのを待ちわびていたそれとは全くの別物だった。
「…お待たせいたしました、アイスコーヒー…
「ねえ」
「……やっぱり……葵………………」
「諒太………藤沢諒太はもう、私の他人だからね」
「…知ってる」
「会っても反応しないで、話しかけないで」
「…………うん、ごめん」
目を落として戻って行った彼は
私の、私がまだ普通だったときの私の、元彼であった