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交わす人たち

 張遼隊が曹操軍とぶつかった頃、左翼の華雄隊も孫策軍と激突していた。


「はああああああっ!」


 声を荒らげて剛撃一閃、旋風さえ巻き起こしそうな横薙ぎは孫策軍兵士を吹き飛ばす。


「孫策はどこだ!?」


 右から左へと振られた戦斧・金剛爆斧、その軌跡を止められる者は今華雄の周囲には居ない。

 だからこそ振るわれ続ける、まるで止められる者が現れるのを待つかのように。


「邪魔だっ!」


 華雄は踏み込む、左を向いていた斧頭が弾けるように弧を描いて右へと移る。

 それだけで兵士が吹き飛び、華雄の周囲に誰もいない空間が出来る。


「どうした! 怖気付いたか! 孫策!」


 留まることを知らず、金剛爆斧を振り回しながら華雄は進む。

 その都度、腰に添えた短刀が揺れる。


「なんだ、江東の虎の娘は怯えて姿さえ見せれない子猫だったようだな! 孫堅も木陰で泣いておろう! 娘がこのような腰抜けであることにな!」


 けたたましく口上を発しながら、一向に姿を見せない孫策を貶しながら進み続ける。

 それに付いていく華雄隊の猛攻に孫策軍は防戦に回り始めるが。

 当然その行動、言葉に黙っていられない者が居る。


「少し遅れた位で言ってくれるわねぇ、我が母の眼中にも無かった者がよくも大口を叩けるわ」


 華雄の正面、赤い鎧を身に纏う孫策軍兵士が割れて姿を見せたのは孫策。

 右手には南海覇王を持ち、一歩一歩堂々と華雄の前に歩み出る。


「ふん、あの時は不甲斐ない友軍が居なければしてやられては居なかった、そうでなければ今頃私は貴様の仇になっていただろうな!」


 ぎらつく眼で孫策を見、金剛爆斧を一度振り抜いて華雄は構える。


「それが大口だって言うのよ、猪如きにしてやられる孫堅ではないわ!」


 華雄に引けを取らない苛烈な視線、南海覇王を一度華雄に向けて構える孫策。

 その光景に華雄隊、孫堅軍の両兵士は一騎打ちの邪魔にならないよう距離を離して小競り合う。


「虎の娘はまた虎か、確かめてやろう」

「まあ、証明できた時には貴女は死んでいるけどね」


 華雄に返す孫策、その言葉を言い終わった瞬間。


「はあああああっ!」

「やっぱり猪……ねっ!」


 爆発したような突進の華雄、それに対して孫策は南海覇王を両手で持ち迎え撃つ。

 華雄の腕力にモノを言わせた横薙ぎの一撃を、低い姿勢で孫策は踊るように避けて斬り込む。

 放たれる攻撃、打ち合う鉄と鉄は火花を散らせ、匂い立つような強者による死合いは並の者では決して入り込むことが出来ない領域。


「……ふむ、予想通りの展開か」


 そうして起こる玄胞が唯一認めた一騎打ち、それを眺めていたのは趙雲。


「となればこちらも予想通りになるか? ……明命は後ろか、これは仕方ないか」


 一案を投じるつもりであったがそれが出来ないことに呟く。

 そんな趙雲は華雄隊の前曲付近、旗も掲げず袁紹軍兵士を引き連れて紛れ込んでいる。


「……そら来た、敵将を抑える、残る趙雲隊は華雄隊の支援を怠るな」

「はっ!」


 副官に趙雲は命じ、一声。


「道を開けよ! 趙雲隊が前に出る!」


 その号令に趙雲の前面に展開していた華雄隊が速やかに割れ、孫策軍右前曲への道が出来る。


「孫策軍に斬り込む! 天下を乱そうとする輩を許すな!!」

「応っ!」


 趙雲の声に応じ、先頭を進む趙雲に追従して兵が得物を構えた。

 一方の孫策軍前曲、唐突に兵が左右に割れて現れた袁紹軍に驚き対応が遅れる。

 それを見逃してやるほど優しくはない、一気に突っ込み衝突。

 そして趙雲は竜牙を振るい、兵を伴って立ち所に深く孫策軍を抉り入り込む。


「そこな者は将と見た! この趙 子龍と尋常に立ち会えい!」

「なんじゃと!?」


 あまりにもあっさりと食い込まれた事、狙い澄ましたように直進して来たことに呉の宿将、黄蓋が声を上げた。


「よもや相手が華雄だけだと考えていた訳ではあるまい?」


 盛大に侮辱されたとは言え、総大将を一騎打ちに持ってきたことから華雄に勝てると踏んだか。

 その間に華雄隊を削るつもりだったのか、それを前に兵を率いるはずだった頭を抑えられた。


「……そう思っていたのなら楽じゃったがの」


 してやられた、と言った顔だった黄蓋であったが、あっさりとその表情が笑みに変わる。

 周瑜が一騎打ちの間に仕掛けてくると玄胞が読んでいたように、玄胞が仕掛けるのを邪魔してくると読んでいた周瑜。

 なるべくしてなった状況、互いに想定して嵌り込んだ。


「聞いておるぞ、随分出来ると策殿が言っておった」

「ほう、それは随分と光栄な事だ。 王たる器を持つ者に言われるのであれば、武を磨いたかいがあったもの」


 黄蓋は言いながらも大弓・多幻双弓を左手に持ち、右手は腰の矢筒へと伸ばす。

 それを前に趙雲は竜牙の穂先を僅かに揺らし、左足を擦らせて前に出す。

 互いの牽制、弓と槍と言う用途がはっきり別れた武器を持っての対峙。

 趙雲が持つ槍は、黄蓋の持つ弓よりも少ない工程で攻撃を繰り出せる。

 黄蓋が持つ弓は、趙雲が持つ槍よりも長い射程で攻撃を撃ち放てる。


 二人の距離は十一間(約20メートル)ほど、距離的に見れば弓の黄蓋が有利となるだろう。

 しかして趙雲に焦りはない、己の武に自信を持ってなお油断なく佇む。

 趙雲は一見して黄蓋が高い実力を持つ武人と判断した、得物からすれば懐に飛び込むのは難しい。


(……速いだけならば、極を目指してみるのも良いか)


 己の武が通じなかった者の言葉、大陸全土で趙雲に並ぶ者など数える程しか居ないと言うのに怖くないと言いのけた。

 ならば通用するほどに磨き上げて見せようか、意識の切り替え、己を試すかのごとく意識を極限まで集中させる。


「趙 子龍! いざ参る!」


 覇気を込めた掛け声、趙雲が動くと判断した黄蓋は高速で二本の矢を人差し指、中指、薬指で挟み引き抜いて弓に番える。

 その動作よりも前に駆け出す趙雲、大地を吹き抜ける風の如き走りで黄蓋に迫る。

 竜牙の穂先が僅かに地面を擦り、敵を貫かんと鋭さを覗かせる。

 その穂先に狙われる黄蓋は冷静に迫る趙雲を捉え、素早く構える多幻双弓は確りと趙雲へと向けられている。

 いつでも矢を放てる状態、しかし矢を引き絞るだけで撃たない。


(速い、これは外せぬ!)


 駆ける趙雲は疾風の如く、黄蓋が多幻双弓に番える二本の矢を外せば、その結果は命の喪失。

 黄蓋とて油断したつもりなどさらさら無い、ただ趙雲が予想以上の速さを持っていただけ。

 二本の矢を撃ったとして、次の矢を取り番える時間など無い。

 故に外した時には趙雲の槍が黄蓋の命を絶つ、だからこそ外せない。

 黄蓋は不動にてギリギリと多幻双弓の弦を張り詰め、趙雲は槍を構えたまま直進する。


(動かぬか、ならば小細工は無用!)


 趙雲が狙うは黄蓋の心の臓、放たれる矢の回避で無駄な動きを混じえれば黄蓋は素早く次の矢を引き抜き番えるだろう。

 そのような隙を見せれば一気に劣勢へと追い込まれる、少なくとも黄蓋にはそれだけの実力がある。

 ならばこそ無駄を控える直進、傍から見れば自ら矢に突き進む光景だろう。

 お互いの読み合う行動は単純にして、裏を見れば一歩どころか重心の移動から予測しての動き。


(初射は囮、本命は次射、中る!)


 多幻双弓の張り詰めた弦が弾力によって元の形に戻ろうと、番えられた矢を急激に押し出す。

 狙いは趙雲の胸、心の臓を目標にし黄蓋は一本目の矢を放った。

 高速で空を駆ける矢は回転しながら趙雲に迫る、当たれば体の深くまで抉り致命傷に成り得る。

 だが当たるまいとする趙雲は然と迫る矢をその瞳で捉え、上体を右に捻って回避行動。

 趙雲が耳にするのは矢が空を切り、後方へと流れていく音。


 黄蓋の一射目は趙雲の左脇を通り過ぎて外れる、当然それは二射目を中てるために誘導。

 上体の捻りによって趙雲の重心が僅かに右へとずれ、直進していた走りも僅かに右へとずれる。

 多幻双弓は黄蓋が予測した方向へと修正され、中指と薬指にて支えていた弦と矢を解き放った。

 張り詰めた弦が解放される音は、さしずめ命を刈り取る音。

 尋常な者であれば射抜かれ絶命するであろう一撃は、尋常で無き者によって覆された。


(これを避けるかっ!)


 趙雲は二射目が放たれる寸前に右足を大きく前に踏み込み、対の左足を右足よりも前に大きく踏み出しながら上体を屈めた。

 急激な屈伸により趙雲が被る白い頭飾り、大きく位置を下げて胸や頭の代わりに矢に射抜かれた。

 衝撃により吹き飛ぶ頭飾り、それを意に介せず腕を動かす。

 低い姿勢から繰り出されるのは竜牙の一刺し、高速かつ正確な一撃は外すことを拒む。


(すまぬっ!)


 誰に対しての謝罪なのか、迫る穂先を見て黄蓋は内心で詫びた。

 それは避けられないモノだと判断しての思い、つまり趙雲が黄蓋の死命を制したこと。

 乾坤一擲を取ったと、勝負を決めたと趙雲が確信したその時。


「だりゃあああああっ!!」


 大声と共に、黄蓋の胸に突き刺さるはずであった一撃が叩き落された。

 穂先が勢い良く地面を抉って食い込み、黄蓋の衣服の裾を僅かに切り裂いただけに留まる。


(集中しすぎたかっ!)


 起こったのは瞬きほどの一瞬の間、その隙に黄蓋は飛び退き矢筒に手を伸ばす。


「助かった!」


 横槍を許すほどに集中していた趙雲は内心、己に悔いる。

 そうでなければ竜牙を撃ち落とす一撃を避け、黄蓋を貫いていた。


「いいって! それよりも!」


 それを封じて趙雲の槍、竜牙を上から押さえつけていたのは同じく槍。

 直刀の竜牙とは違い、穂先が十字となった得物。

 趙雲と交差する視線、その長柄を持つのは馬 孟起、西涼の錦馬超であった。

話とは関係ないけど関係ないけど郷刷さんの能力

6点満点中統率5、武力2、知力5、政治5、魅力2と言う能力値

6点はごく一部の人間の限界超えた人たちの物、恋の武力とか桃香の魅力とか、そういった点で郷刷さんも人間止まり

しかし文官として必要なモノが揃ってるので軍師、内政官としては最高級なんでしょう

ちなみに1は才能なしレベル、2が凡人レベル、3が腕が立つレベル、4が一角レベル、5が基本的に最高レベル、6が人外レベルと想定、恋姫キャラの中で6を持ってるのは五人しか居ません

ちなみに郷刷さんが警戒する華琳さまの能力値は統率5、武力4、知力5、政治5、魅力5と言うチートレベル

なぜ警戒するのかお分かりいただけただろうか・・・、ちなみに華琳さまの能力値は公式のものです

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