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語る人

 虎牢関、汜水関よりも強固な関。

 並々ならぬ堅牢さは、篭れば攻略のために三倍どころか五倍もの兵が必要となるだろう。

 それを投げ打って虎牢関の後方、洛陽側に兵を布陣させた男は一体何を考えているのか、虎牢関の城壁の上で見下ろしながら賈駆は考える。

 董卓軍の呂、張、華の軍旗が風でなびき、袁紹軍の趙、顔、文、そして玄の軍旗が並んでいた。

 兵数は十万を超え、これに単体で対抗できる諸侯など居ると思えない。


 数の上ではこちらに味方する袁紹軍ならあるいは、と思うけど実際の所はどれほど出せるのかは分からない。

 味方で助かったと思う反面、敵にならなくて良かったと考える。

 秘める力は戦況を決定付けかねない戦力を持っている、現に連合軍を挟撃出来る兵力で仕掛けることが出来ている。

 間違いなく袁紹は十三州州牧の中で最も強大、その袁紹が味方に付いたのは心強い。

 これなら連合軍にも十二分に勝てる、そう思える戦力であるのに、実質袁家の支配者である玄胞は警戒を払って止まない。


 諸侯が寄り集まった連合軍はたしかに手強い、とんでもない飛距離を出す新型投石機を持ちだしてくるほどに。

 だけどおそらくあの投石機は使ってこないだろう、正確に言えば使えないだろう。

 五町(約545メートル)以上も投石出来る代物が、簡単に持ち運び出来るなんて思えない。

 大きさも相応なはず、そんなものを組み立てて使用し、そのあと解体してもう一度運ぶとなると結構な時間が取られるはず。

 連合軍は遠征で兵たちは見知らぬ土地で命を掛けて戦うことになる、遠征である以上士気を維持するために必要な食事も良い物は取れない。


 どうしても連合軍は出来るだけ速く先に進んで、兵の士気が尽きる前に董卓・袁紹軍を打ち破りたいはず。

 だからこそ「待ち」、虎牢関で専守防衛に徹すれば連合軍は自壊する。

 さらに追撃を掛ける背後からの挟撃、一人残らず殲滅することも可能であるはずなのに玄胞は出撃を選んだ。

 真っ当な軍師を名乗る者なら虎牢関の優位性を利用する、それを捨てて出ていく理由は……。


「……投石機をまた使ってくる?」


 虎牢関が強固だからこそ、離れたところから安全に攻撃を加えられるあの投石機を使ってくる。

 そう考えるとむしろあの投石機は必須、投石で虎牢関城壁上の射手を排除できるし、苦しくなる関攻めをせずに引っ張り出せる。

 虎牢関攻略の起点、だったらある程度時間が掛かってもあの投石機を持ってくる?

 十分にありえる、あの投石機には時間を使っても取り返すだけの威力がある。


「………」


 十万以上もの兵士が犇く虎牢関後方の光景を見下ろす、紺色の鎧を纏う董卓軍の軍勢と目が痛くなる金色の鎧を待とう袁紹軍の軍勢。


「……? なにあれ」


 金色の上に薄めの灰色で覆われていく、次々と広げられ金色が減っていく。

 何をしているんだろうか、と気になって虎牢関城壁の上から階段を伝って降りる。

 董卓軍の人混みを抜けて開けた光景は、棒と布だけで作り広げられた簡易天幕の列だった。

 その簡易天幕の下では兜を脱いだ袁紹軍の兵が各々に寛ぎ、もうすぐ戦いが始まることを知らないかのような気の抜き様。

 兵に一体何をさせているのか、よく見たら董卓軍側にも簡易天幕を立て始めている。


「日陰?」


 地面に棒を突き刺して天幕を張り、暑いから天幕の下に入るように董卓軍兵士に言って回る複数の袁紹軍兵士。

 それを聞いて合点がいった、天には日が登り中々に暑い。

 自分はまだしも、蒸すだろう防具を纏って日の下に居ればそれだけで疲れてしまう。

 それを避けるためにこうやって日陰を作り、無駄な体力は使わないように配慮したんでしょう。

 体力も士気の増減に関わる、汜水関でしなかったのは見える位置に連合軍が居たから。


「賈駆様、ここに居らっしゃいましたか。 玄胞様がお呼びになられていますので」

「分かったわ」


 考え事をしていたら声が掛けられた、それは玄胞からの使い。

 頷いて使いの後に付いて行き、玄胞がいる場所へと向かいながらも考えを続ける。

 十万以上の兵が休める所など無く、連合軍との戦いになるまで野晒しで待機することになる。

 そうなると簡易天幕の有無は大きな差を作るはず、設置にも撤去にも時間が掛かる普通の天幕よりも楽。

 今頃連合軍は日中の進軍で兵の疲労が溜まっていっているでしょうね、兵士たちからしたら地獄かもしれない。


 空の汜水関に困惑し足止めを食って時間を浪費した連合軍は、出来るだけ早く虎牢関へ辿り着こうと向かってきているかもしれない。

 そして対峙した時にはどれほど兵の体力が削られているか、それがどれだけ戦いに響くか。

 ボクの考えが合っていれば連合軍は数を減らさず戦力の低下を招いている、それもよっぽど分かりにくい形で。

 さすがに玄胞が狙ってやってはないでしょうけど、こっちに追い風を吹き込んだのは間違いない。

 ……狙ってたなら怖いけど。


「……来ましたか、他の方ももうすぐ来るでしょうから」

 

 案内されたのは袁紹軍の後方で広げられた簡易天幕の下、椅子が円を描くように九つ並べられていた。

 その椅子の一つの傍に玄胞は立っており、案内されたボクに着席を勧める。

 言われた通りに座り、目の前の小さく軽そうな机の上にお茶が置かれた。


「どうぞ」


 玄胞の従者がお茶を置き、玄胞が勧める。

 手にとって見れば冷ややか、口に含んでみれば涼を取るには十分すぎるほどに冷えたお茶。


「……氷なんて、こんなのによくお金使っていられるわね」

「氷ではありませんよ、水を洛陽から運ばせただけですから」

「氷じゃない?」


 最初から冷たい水でも持ってきてお茶を冷やしてたのかな? そう考えていたら玄胞が軽く笑う。


「賈駆殿、手を濡らした時に風で涼やかになったりしませんか?」

「……するけど」

「それと同じ事をしただけですよ、氷よりも時間が掛かりますが氷要らずで冷やせますから」


 確かに氷で冷やしたものよりは温かい、だけど一刻置いて冷ましたお茶よりも冷たい。


「……よくそんな事思いつくわね」

「氷を用意するにはかなりの費用が掛かりますからね、でしたらより安価な代替案を考えておくべきでしょう?」

 

 お金はあるが無限ではない、だったら対費用効果を求め効率的な使い方を心掛ける。

 この冷却方法もそれに当たり、水は氷よりも冷える速度は遅く水以下の温度にはならないが、費用は氷よりも遥かに安く冷たくなり過ぎることはない。

 取りすぎて体調を崩すことも氷でより冷えた物よりも少ない、なにより氷で冷やした物よりも飲みやすい。

 そう説明されて、確かにと頷いてしまった。


「お菓子は如何ですか?」

「……貰うわ」


 小皿に盛られたお菓子、それをつまみながら横目で玄胞を見る。

 次々に来る報告や指示待ちの兵に対応しながら、座ってお菓子を摘んでいる自分が申し訳ないくらいに仕事をしている玄胞。


「必要ありません、賈駆殿は賈駆殿がやるべき事をやればいいだけですから」


 何か手伝うわ、と言う前に制された。


「……不満ですか? 矢の数を揃えて配備させてください、均一にね」

「不満にも思うじゃない」

「後に仕事をするのですから、今不要な労力を消費する必要もないでしょう。 呂布隊には袁紹軍から歩兵五千の追加を、張遼と華雄隊には二千五百ずつ編入させてください」

「……それはそうだけど」


 問答の最中でも仕事をする玄胞、伝令に封筒を渡して袁紹に届けるようにを言付ける。

 玄胞が指揮を取るのはおそらくこの戦いに決着が付くまで、勝って連合軍を打ち倒しても、負けて連合軍に討たれるか捕らえられても。

 そのどちらかで指揮権は失効し、ボクの手に戻ってくる。


「でしたらお分かりですね? 決してこの戦いに負けはないことを」


 その一言に頷く、例え虎牢関前で玄胞率いる董卓・袁紹軍が敗北を喫して将らが捕らえられても、決して連合軍からの交渉には応じず押し潰すと。

 連合軍背後から迫る挟撃部隊が間に合わず戦いになり、負けても戦いは続行し。

 捕まった将の安否を徹底的に無視した、後に来る挟撃部隊と虎牢関に詰める兵での連合軍殲滅の戦略。

 その指揮を取るのがボクの仕事。


「ですから手伝いなど不要です、皆が揃うまでゆっくりとしていてください」


 視線さえ向けられず、淡々と言われて。


「……そんな風に言わなくてもいいじゃないの」

「はっきり言われるのは嫌いですか? 私は言い切られたほうが勘違いも後腐れも無くて良いのですが」


 確かに後でそんな事言ってない! なんて言われたりしなければ賛成するけど。

 自分の命を掛けるくらいなんだから、責任転換なんて今更か……。


「そのお菓子、洛陽で人気があるそうですよ」

「……そうね、美味しいわ」


 結局その後はぽつぽつと一言二言の会話だけで時間が過ぎ、玄胞に呼ばれた武将たちが続々と現れた。

 その度に着席を勧められ、冷えたお茶を差し出させる。

 何度かそれを繰り返し、ボクを除いた出陣する八人が揃った。


「あまり時間がありませんので、このような簡易天幕で申し訳無いのですが軍議を行わせて頂きます」


 その一言で視線が集まり、玄胞は話を続ける。


「まずは絶対に忘れてはいけない前提を一つ」


 皆を一遍見て、玄胞は右手の人差し指を立てる。


「我々は連合軍相手に戦い勝利を得るでしょう、ですが勝利を得るための要因は個人の武勇でも、兵の数でもありません。 それだけで勝てるなら今頃連合軍は殲滅して、我々は後始末をしていたでしょう」


 椅子に座りながら、勝利を得るための条件を話す。


「我々が連合軍に勝利するために必要な要因は? 至極簡単、『連携』です」


 その一言に、何当たり前のこと言ってるんだ? と言った感じで皆が玄胞を見た。

 ボクも当然の事をさも大事そうに話すその姿に、自然と視線を向けた。


「私が言う連携とは当然協力し合うことです、つまり敵の挑発や策略に乗らず闇雲に攻撃を仕掛けない、と言うことなのですが」

「……!? な、なぜ私を見る!?」


 それに恋に霞、ねねも華雄を見た。


「言っておきますが全員に当てはまることですよ? はっきりと言えば戦いに夢中になり、他の部隊よりも突出してしまう事などですが。 要は戦っている時でも他の部隊の位置を気に掛け、敵が後退したからと言って追撃を掛けるような真似は絶対にしないようにしていただきたいのです」


 玄胞は武将の面々、特に華雄と霞を見て言う。


「呂布殿も当然命令が無ければ突出してはいけません、陳宮殿も呂布殿だから、なんて理由で突撃など絶対にしないでください」

「それには及びませぬぞ、呂布殿が──」

「それが駄目だと言っているのです」


 誰が来ようと恋は負けない、そう言おうとしたねねの言葉を遮る。


「天下の飛将軍? 万夫不当? だからなんだと言うのです、それは統率を欠く有象無象の輩だからこそであって、一定以上の軍師からすれば呂布殿一人の突撃など簡単にいなして捕縛する事など容易い」


 個の武勇にのみ頼る戦法など、軍師と称する者が口にしていい言葉では無い。

 そう口調は変わらないが、声が大きくなったような錯覚を覚える玄胞の声。


「呂布殿の武勇をこの上なく活かすには左右や後方に意識を割り振らせず、まっすぐと正面の敵にだけ集中させるべきだと私は考えておりますが」


 確かに恋の力は隔絶している、華雄と霞の二人掛かりでも蹴散らしてしまえる力がある。


「陳宮殿、貴女が呂布殿の軍師を名乗ると言うのであれば、呂布殿が最も力を発揮できるよう策を弄するべきではありませんか?」

「それは……」

「全力で得物を振れるように一人で進ませる、そんなものは策とは言えず軍師としての職務を放棄しているとしか言えません。 呂布殿の軍師のままで居たいのでしたら、もっと考えるようにしましょう」


 連合軍は呂布殿の力だけで粉砕することは出来ませんよ? そう一転して優しげに諭すように言う玄胞。


「確かに呂布殿は強い、だからこそ今まで単身で向かって行ってもやっていけたのです。 他の方ではこうは行かなかったでしょう、今までは陳宮殿は呂布殿の力に助けられていただけだと、それを理解して、今後は呂布殿の力だけではなく、陳宮殿の策で力添えしてあげてください」

「……わ、わかったのです」


 お願いするように言う玄胞、恋もねねの頭を撫でていた。


「それでは連携の重要さを理解して頂いたでしょう、董卓軍と袁紹軍と言う二つの力を合わせて勝利を勝ち取る。 そのための布陣を説明します」


 取り出した紙、小さかったが簡潔にわかりやすく書かれた布陣図。


「まずは先鋒、董卓・袁紹混合軍の最前線には呂布隊を、よろしいですね?」


 左右の断崖絶壁と、その間に描かれた先頭となる三角を指さして玄胞が恋に言い。

 それに対して恋が頷く、恋を擁する軍の軍師なら当然軍前面に持ってくる。

 ボクもそうしてたし、対面する敵からすればその圧力は死に直結しうるもの。


「呂布隊には我が方の歩兵を五千、編入させました。 練度は十二分にありますので普段通りに使ってもらっても十分に働くでしょう、陳宮殿は呂布隊の指揮をお願いします。 くれぐれも周囲に気を配って突出しないよう、歩調を合わせてください」

「任せるのです!」


 調子が戻ったのか、いつも通りにねねが頷く。


「次は張遼隊ですが」

「お、きたな」

「張遼隊は呂布隊の右翼に展開してもらいます、その際支援として文醜、顔良隊の一万ずつを付けます。 それと、こちらから二千五百の兵を編入させました」

「私たちですか? ぶんちゃんか私を呂布さんの部隊に付けたほうが……」

「いえ、それでは駄目です。 おそらく呂布隊には武を誇る将が当てられるでしょう。 少なくとも呂布殿と戦い一撃でやられない程度の力量を持つ将が」


 呂布殿の一撃、防げないでしょう? と顔良に向かって言えば。


「……無理です」


 顔良ががっくりと項垂れて返事。


「あたいだって無理だから落ち込むなって」


 その隣の文醜が顔良を慰める、恋の攻撃を防げる相手なんてそうそう居ないんだし落ち込むことではないと思うけど。


「ですから張遼隊の支援に二人とも付いてもらいます、役目は連合軍左前曲、おそらくは曹操軍と戦ってもらうことですが。 重要となるのは張遼殿の援護ですね」

「なんや? うちが華雄みたく突っ込むと思ってるん?」

「張遼! それはどういう意味だ!」

「そのままの意味や」


 自制心がある、そう華雄に言う霞に。


「確かに突撃はしないとは思いますが、強い相手との一騎打ちになると夢中になるでしょう?」


 霞の実力もかなりある、神速の用兵と言われているけど実際は一騎打ちに価値を見出す武人。

 しかも相手が強ければ強いほど燃える型の将、一騎打ちしていて気が付いたら囲まれていた、なんてことになるかも。


「むむむ……、たしかにそやな」

「一騎打ちは遠慮して欲しいのですがそうは言えない場合もあるでしょう、ですから一騎打ちになった場合こちらの二人に釣り出しを防いでもらいます」

「わかった、二人とも頼むで!」

「はい!」

「あたいらに任せとけば問題ないって!」

「それでは最後、華雄隊は左前曲で敵右前曲で孫策軍と戦ってもらいます」

「よし、それでいい!」

「華雄隊にも二千五百の兵を編入させます、それと支援に趙雲隊を付けますので存分に孫策と斬り合ってください」

「ならば私の役目はその邪魔をさせない事、と言ったところですかな?」


 いつの間にかメンマを摘んでいた趙雲、玄胞を見ながら役目を予想した。


「ええ、その通りです。 おそらくは手っ取り早く華雄殿を排除して、隊の混乱を狙うでしょう。 もしかすれば一騎打ちに孫策自ら受けることもありえます、その時には邪魔させずに妨害してこようとする敵を排除してください」

「承った」

「兵は二万を率いてもらいます、文句はありませんね?」

「露払いは任せるぞ」

「露払いをしたはいいが、それが無駄になるような場面は見せてくれるな」

「ふん、奴は必ず討ち取ってみせるわ!」


 華雄はいつも通り血気盛んに、趙雲は冷ややかに華雄を煽っていた。


「私の部隊が中曲と後曲を兼ね、本陣となりますが落とされたとしても問題は無いことを覚えていておいてください」

「……それはどういう意味で?」

「そのままです、基本的に指揮官を置く場所を本陣としますが、例として本陣を置いているだけです。 真の本陣は虎牢関そのもの、我々が連合軍に打ち負けたとしても戦いは継続して行われます」


 函谷関から連合軍を挟撃するために出陣した軍勢と、虎牢関に詰める兵とで挟撃して連合軍を殲滅する。

 そして負けて捕虜になった時、本陣は捕虜となった我々の救出には動かない。

 そのまま疲弊した連合軍を押しつぶすために攻め立てる、そう説明してさらに続ける。


「勿論我々が壊滅しない限り、捕虜となった方の救出に動きますが、壊滅した際には動かないことを留意しておいてください」

「なんや当たり前のこと」

「負けなければ良い、捕まらなければ良い、その程度の話でしょう?」

「……では期待させて頂きます」


 あっけらかんと言った霞と趙雲、なにか言いたげで何も言わなかった玄胞。

 あまりにも軽く流した事で困惑が玄胞の中で生まれ、それを飲み込んだのかもしれない。


「布陣に関しての話はこれで終わりです、連合軍が確認出来、変化があれば布陣の変更を兼ねてもう一度詳しくやりますので」


 今回はこれで解散です、そう言って終わらせた玄胞。

 それを聞いてそれぞれが立ち上がり、自分の仕事へと戻っていく。


「……もうちょっとなにか言われるかと思ってたけど」


 居なくなった武官たち、戦うことが仕事とは言っても軽く流し過ぎなんじゃないと? と思わなくもない。


「武官と文官、立つ場所が違うのですからこうもなるんでしょう。 それにしても彼女らは違い過ぎるような気もしますが」


 目頭を抑えつつ、ため息を付きながら言う。


「正しく期待に答えていただけるのなら、損害は大きく減らせるでしょう。 後はその期待を持ち支え続けられるか」


 お茶を手に取って口に含み、一息に飲み干す玄胞。


「……惜しいものですな、今の世の中は」


 茶碗を置きながら、玄胞はどこか悲しそうに呟く。

 それは虎牢関前で起きる決戦の三日前の出来事だった。

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