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興味を持たれる人

前話にてちょっと修正を入れました、陸遜もつれていくはずだったのに置いていく意味不明さ

それを修正しているので今回の場には陸遜も居ます


 連合軍の中心には袁術軍が陣取り、その周囲に他の諸侯が陣地を張っている。

 必然的に袁術に用がある者は連合軍の中心に向かう、そこに時間も合えば当然行き合う。


「あら、奇遇ね」

「そうでもなさそうだけど」

「あれ、皆さんも袁術さんに用があるんですか?」


 孫策、曹操、劉備、それぞれが自軍の軍師を引き連れて、袁術の天幕の前で出くわす。


「少し考えれば必要性を見出せるでしょうね」


 頭が回る者なら嫌がらせの意味と峡谷に入った後の状態など簡単に予想出来る、と曹操。


「軍議の必要性は当然、問題は集まってどうにかなるかって事でしょう?」


 考えて分からなかった、だからこそ優れた他者と予想を交わした後、有効と言える対策を打ち出せるか、と孫策。


「えーっと、とりあえず袁術さんを……」


 何となく曹操と孫策が言っている事が分かるも、夜も更けてきたし袁術に話しておこうと薦める劉備。


「……なんですかぁ? 人の天幕の前で騒ぐなんて常識知らずにもほどがありますよ?」


 瞼をこすりながら天幕の中から顔を見せたのは張勲。

 それを見て荀イクや周瑜は溜息を吐いた、実際に襲ってこなかったが夜襲が起きたと言うのに今まで寝ていたその状況。

 危機感がまるで足りないと、そのお気楽さに頭を痛める。


「張勲、袁術は起きているかしら」

「お嬢さまは行軍でお疲れですから寝てますよ」

「なら起こしなさい、重要な用件があるわ」

「重要な用件? でしたら私に言ってくださいよ、お嬢さまは関わっていないんですから」


 連合軍盟主でありながら軍務に関わっていない、それは盟主の役割を果たしていないと言うことのなのだが。


「この場所では不適切だわ」


 曹操はそれならそれで良いと話を続ける、もとから袁術に期待していないための薄い反応。

 孫策も同様で、今盟主の仕事をこなしているのは袁術の軍師である張勲だと言うことを知っている為に反応しない。


「でしたら軍議の天幕に行きましょうか、あそこなら文句は無いですよね?」

「そうね」


 一言曹操、先頭で歩き出して天幕へと移動する。

 孫策組、劉備組もそれに習い移動する。

 距離も時間も僅か、軍議用の天幕へとぞろぞろ入る。


「それじゃあ始めるわよ、恐らく玄胞は連合軍を早めに峡谷へと押し込もうとしている、そして押し込んで連合軍が汜水関へと達して攻撃を始めた頃に背後から襲撃を掛けてくる可能性がある」

「それに対しての対応は迅速に汜水関を落として挟み撃ちを防ぐしかない、私としては早めに峡谷へと押し込もうとする方が気になるわね」

「挟み撃ちですか……、まああの人なら平然とやりそうですよね。 兵数の差は結構ありそうですし、軽く十万くらい後ろに持ってきそうですよ」


 淡々と言う張勲に、再度不利だと言う事を確認する一行。

 袁紹が董卓に加担した時点で兵数の差など大体は予想されていた、曹操に至っては三軍師の情報で正解に近い予測を弾き出している。


「夜襲の構えをしてくるのは基本として、今になって仕掛けてきたのも推察できる。 そして玄胞が夜襲を仕掛けて、我ら連合軍を峡谷へと押し込もうとしているように私は見えるわ」

「曹操殿に同意だな、兵の気力を奪われる事を避けたい故に、背後だけに気を配ればいい峡谷に入り込む、そこに何らかの狙いがあるような気がする」

「その狙いが何なのか、皆さんはそれが分からないんですね?」

「……そうよ、やるなら徹底的に足止めを掛け、兵の気力を根こそぎ奪ったほうが有効でしょう」


 そう、わざわざ会戦を急ぐ理由がよく分からないからこそ、曹操、孫策、劉備とそれぞれがこうして集い夜の軍議と相成った。


「何で急ぐんだろうな、汜水関をしっかり守りきれば勝てるのに。 汜水関を破ってもまだ虎牢関が後ろにあるんだし」

「……策として考えれば、曹操さんの言う通りです」


 一刀の後ろで、おずおずと呟きに答えたのは鳳統。


「雛里もわかんない?」

「……はい」

「雛里がわかんないなら俺じゃあ無理だろうな」


 一刀から見れば鳳統は諸葛亮に並ぶ頼れる軍師、全体の統括を任せれば比べるのがおこがましいほど上手く動かす事が出来る。

 戦いに必要となる策の立案も同様で、一刀が思いも寄らなかった作戦を諸葛亮と共にぽんぽんと口にする。

 その諸葛亮と鳳統、さらに荀イクや周瑜と言った名立たる軍師を持ってして図りかねる出来事。


「うーん、急ぐ理由は分からないけど、急がない理由ってなんだろ?」

「それって急ぐ理由と同じだと思うけど」


 劉備の呟きに一刀が返す。


「同じかなぁ? だって何か理由があって早く戦いたいなら向こうから出てくればいいし、私たちが来るのを待ってる必要は無いと思うんだけど」

「……それもそうか、兵の数は向こうの方が多いんだし、真正面から戦えば普通は勝てるだろうし」


 その一刀と劉備の会話を聞き、鳳統は思考に埋没し始める。


「……今攻めたくない、……だとしたら」

「……雛里?」

「……あ」


 鳳統は一つ思いついて、何で気が付かなかったんだろうと思ってしまった。


「……ご主人様、桃香様、予測なんですが聞いてもらえますか?」


 一刀と劉備の傍に寄って、二人にしか聞こえぬように小声で聞いた。


「……皆と一緒に聞いたほうが良いんじゃ?」

「……ただの予想ですから、皆さんの考えを阻害するかもしれません」


 そう言って諸葛亮を見る鳳統、積極的に会話へと加わって考えを口にしていた。


「じゃあ朱里は良いよな?」

「はい」

「うん、朱里! 討論の最中ごめんけど、ちょっと来てもらっていいか?」

「え? あ、はい」


 予測を披露していた所で引っ張り戻したせいか、一刀に視線が集中するもすぐに諸葛亮を除いて討論に戻るその他一行。


「ご主人様、何か分かったんですか?」

「いやな、雛里が予想があるから聞いて欲しいって」

「何か思いついたの、雛里ちゃん?」


 その問いに鳳統は頷き、変わらず小声で予想を語りだす。


「……皆さん深く考え過ぎているんだと思います」

「深く考えすぎてる?」

「はい、皆さん玄胞さんの風評に引っ張られているんだと思います」

「……それは否定できませんね、聞く限りではかなり出来る方だと言われてますし」


 鳳統の言葉に相槌を打つ諸葛亮。


「……問題となってくる峡谷へと押し込みなんですが、その前にもっと考える事がありました」

「その問題って?」

「……董卓さんが本当に圧政を敷いていたり、皇帝陛下を傀儡にしていると言う事です」


 それはそもそも連合軍が発足する事になった理由、大前提と言って良い問題。


「本当は董卓さんが圧政や皇帝陛下を傀儡にしていなくて、連合軍が陛下に弓引く逆賊だった場合なんです」

「……あ、そうだったんだ……。 雛里ちゃんの言う通り引っ張られすぎてたんだ……」


 鳳統の言葉に諸葛亮が気が付く、それは至極簡単な理由、董卓・袁紹軍の大義名分となる理由。

 玄胞は優れた軍師だ、早めに峡谷に押し込めようとするのは裏に何か策があるからに違いない。

 相手の裏を読もうとしたからこそ単純過ぎる事を見落とした。


「……玄胞さんは、連合軍がこの峡谷に入った所で、連合軍を殲滅するつもりだと思うんです」

「……殲滅」

「はい、圧政や皇帝陛下を傀儡にしていないと言う前提が必要ですが……」

「……董卓さんと袁紹さんが正しいなら、私たちは紛れも無く逆賊で、連合軍を討つ大義名分が立っていることになります」

「もしかすると本当に予想もつかない策を繰り出して、連合軍に大打撃を与えてくるかもしれません。 ですが雛里ちゃんの予想が事実だったら汜水関攻めの時に、我々は行動で示さなければいけません」


 権力を手中にせんと皇帝陛下に弓引く逆賊だから、そのような輩は見せしめとしてここで徹底的に叩く。

 今になって夜襲を掛けてきた理由は移動に時間が掛かったのも有るかもしれないが、戦力差に怖気づいて連合軍が退くのを避けたいが為。

 これほどの規模で諸侯が一堂に会する事など早々無い、ここで纏めて叩ければ一度で複数の芽を潰す事が出来る。

 退いたなら退いたでも問題は無い、寄り集まった戦力が散ければ、袁紹一人で一つずつ叩いていけるだけの戦力がある。

 つまりは連合軍は退けぬ状態にはまっていると言う事、今ここで連合軍から脱退しても参加したと言う事実は消えない。


 反董卓連合軍と董卓・袁紹軍は敵対している、ここで禍根を残しておけば災いとなって芽吹くかもしれない。

 だから確実に戦うよう仕向け、ここで参加した諸侯を討ち取る。

 ごくごく単純な事、敵だから倒す、夜襲も挟撃の可能性もそこに至る過程でしかなかった。


「……玄胞さんがそこまで突いてくるか、洛陽の事を知らなかったから見逃してくれるのか、そこは分からないですが……。 少なくとも向こうは今こちらを許す気は無いのかもしれません」


 鳳統の予想が正しければ、玄胞が夜襲を行わせ峡谷の中に進ませるのは連合軍が退くのを避ける為。

 汜水関攻めを開始すれば背後から董卓・袁紹軍が攻めてくるかもしれない、そうなったら背後へと戦力を向ける必要もあるし、汜水関に取り付く前に汜水関から出撃してくるかもしれない。

 汜水関からの弓矢の援護に挟み撃ち、完全にお手上げ状態となって連合軍は壊滅する可能性がある。

 その考えに至り、怖気づいて連合軍から逃亡する諸侯を封じる為の策。


「……そうなったら拙いってレベルじゃないぞ」


 逃がさないための夜襲、戦いになっても関を抜かれず負けないと言う自信、策があるというのが分かった。


「ど、どうしよう……」

「……やっぱり先んじて、向こうと接触を図らなきゃ。 ……見つからないように手紙とか出せないかな?」

「……夜襲の部隊がうろついていますから、送ったとしても途中で見つかってしまう可能性が大きいです」

「なら今夜の警邏もこっちで引き受けてさ、……愛紗に手紙を持たせてはどうかな?」

「うん、そうだね。 愛紗ちゃんに頼めばきっとやってくれるよ」


 一刀たちは討論を繰り広げる後ろを気にしながらも、なんとかして打開策を打ち出す。

 逆賊になるために義勇軍を立ち上げたわけじゃない、こんな世の中で苦しむ人たちを一人でも多く減らしたいが為に動いてきたのだ。

 董卓が良い人か悪い人か、そこも気になるが悪い人なら袁紹は加担しなかったんじゃないのか?

 そんなことを考え、色んな事を知らないのだと気が付く。

 つい先ほどまで汜水関を攻める時に話を聞こうなんて思っていた、それでは遅すぎるし、何より知るために自分たちが動いていなかった事に気が付いた。


 他の諸侯の目があったが、何でもいいので理由を作って南の函谷関にも斥候や手紙を持たせた使者を送ればよかった。

 甘い考え、なるようになるさと考えていた付けがここで回ってきた。

 董卓が良い人、袁紹が良い人、そうでなくて悪い人である可能性もあることはあるが、ここは袁紹、もとより玄胞の風評を信じてみようと動くことを決める。


「じゃあこれが終わったらすぐにでも」

「はい」


 それぞれが頷き、今後の行動、連合軍から脱退して董卓・袁紹に付くかも知れないことを決めた。

 内輪でそれが決まり、一向に狙いが判明しない討論へと視線を戻す一刀たち。


「……考えを出し合えば分かるかと思ったけど、駄目なようね」

「……そうねぇ」


 孫策一行としては実際奇妙な動きをされたのだから、寄り集まっても有効な対策がでないかもしれないと一部達観していた。


「……なあ、ちょっと良いか?」

「……何かしら?」


 ここで一刀は先ほど鳳統が考えた予想を一部分だけ出して、連合軍の今後をどうなるか試してみる。


「ちょっとこっちで話し合ったんだけどさ、本当に玄胞さんってかなり凄い人なのか?」

「……冀州を見ればその手腕を図れるでしょうね」

「それって内政の手腕だろ? 軍師としての手腕はどうなんだ?」

「相当できると聞いているわ」

「はい、ここに居る軍師の方々と見劣りしないぐらいには出来ると思いますよ?」

「……定石と奇策をやってのける人物よ」

「奇行もしそうよねぇ」

「たしかに、なりは普通だからこそ判断できない人物だ」

「風評も結構な方ですからねぇ、実際にあって話し合わないと図りかねる人物ではないかと~」


 それぞれが玄胞に対しての評価を打ち出す、それを聞いて一刀は。


「皆深く考えすぎなんじゃないか? 凄い軍師だから思いつかない凄い策が有るって考えてるんじゃないのか? 峡谷で出来る事って挟み撃ちくらいしかないしさ、もっと単純にこっちを倒そうとか考えてたりするんじゃないのか?」

「だからってこっちに大きな損害を与える策がないと言うわけじゃないでしょ! もっと考えてから発言しなさいよ!」

「そうですねぇ、実際に会って接した身としては何かあると考えてしまう方ですからね」


 一刀たちが至った考えとは別の論点から始まる考え、実はただ逃げるのを防ぐための策かもしれないと考えた鳳統とは違い。

 会って話した結果、それだけで済むはずがないと考えた荀イクたち。

 それぞれの印象が深く思考に絡みついた結果だった。


「……具体的には?」

「そうですねぇ、一つ有りますよ」


 聞きますか? と程昱が聞き、一刀は頷く。


「天の御遣いさんならこの話が分かるかも知れませんねぇ、それじゃあお聞きします。 多くの者が何らかの理由で亡くなり、大地にその亡骸を晒したとしましょう」


 そこまで聞いて既視感を覚える一刀たち。

 孫策たちも分かりかねる問いかけに黙って耳を傾ける。


「……その人たちを燃やす理由か?」

「よくわかりましたねぇー、風ちゃんはびっくりですよ」


 欠片も驚いた様子を見せない程昱、一刀は見つめ返した後答えを口にする。


「……疫病を防ぐ為だと思う」

「……その理由は?」


 今度は荀イクが問いかける、その表情は真剣でごまかしは許さないと言った感じが見えた。


「多分亡骸が腐って、蝿でも湧いて病を街に持っていくからだと思うよ」

「………」


 荀イクの視線がさらに鋭くなり、程昱の瞼がほんの僅かに驚きに開かれた。


「天の御遣いさんは本物かもしれませんねー」

「……と言うか、それどこで聞いたんだ?」

「今話題の人ですよ」


 薄々一刀は気が付いていた、この話は二度目で、この場で全く関係ない者の話を出す訳が無い。

 一度目は趙雲から、そして今趙雲が居るのは袁紹の下。

 その袁紹の下には玄胞も居て、程昱たちも以前袁紹の下に居たと言う。

 そして今、天の御遣いと言われる北郷 一刀が、玄胞と同じ答えを出した。


「へぇー、面白い話ね」


 孫策は獰猛な笑みを浮かべ、曹操も孫策と似たような表情。

 天の御遣いと言う半信半疑な存在である一刀の事と、その一刀と同じ答えを出した玄胞の関連付け。

 特異な両者がより特異に、曹操陣営と孫策陣営の記憶に刻まれる。


 程昱が名前を出さず指し示した一言に、一刀の中で一つの思いが急激に膨れ上がっていた。

 一刀が知る三国志とは性別の点で大きな違いが有るとは言え、同じ姓名字の者たちが多数居て、英傑足る実力を備えている。

 そこに混ざる一点の無知、玄胞と言う存在にもしかすれば同郷、自分と同じ出来事に陥った者かも知れないと。

 だからこそ会って話をしてみたいと、そう強く思い始めた一刀。


「……それって本当か?」

「ここで嘘を言う利点があるんですか?」


 誤った情報を流し、孫策陣営や劉備陣営が判断を間違って大打撃を蒙れば、曹操陣営にもその重い余波が来る。

 誰にとっても欠点しかない情報など流す意味などありはしないと程昱。


「……玄胞、一体何者なんだ……」


 視線が集まるその中で、一刀は小さく呟いた。

一体何者なんだ……(ネタを含まず

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