表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/83

思いを馳せる人

最長

もうだめだぁ、おしまいだぁ・・・

 趙雲との話も終わり、開けていた窓からは赤黄の光、それを放つ夕日が地平線の向こう沈んでいた。

 強烈な光に照らされ真っ黒な影を引く薄く赤く染まった雲、空は紺と青と赤の三色が交わり、美しいとしか表現できない模様を作り出している。

 あと一刻もすれば太陽は地平線の向こう側に隠れ、交代と言わんばかりに月が空へと昇る。

 それは多くの者にとって一日の終了を告げる、今の郷刷にとっても同じ。

 これからやる事は夕食を取って風呂に入り、また書物を読んで早々に寝るだけ。


 夕食はいつもの如く持ってきてもらえば良いのだが、風呂となると部屋を出なければならない。

 となると袁紹の許可を貰わなければいけない、人を呼んで話を通そうと立ち上がったとき。


「安景さんは居ますわね!」


 戸の蝶番が吹き飛びそうな勢いで戸が開き、部屋に入ってきたのは袁紹。

 昼頃親衛隊に連れて行けと言った様子とはまるで違う、いつもと変わらない声と態度。


「何かあったのですか?」

「何かあったのですか? ではありませんわ!」


 ズンズンと遠慮なく踏み込んできて、机を挟んで郷刷と対峙して口を開く。


「猪々子さんと斗詩さんが仕事で手を離せないとおっしゃってましたわよ! これではお風呂に入れませんわ!」


 そこまで聞いて、ああ、そうだったかと郷刷。

 袁紹はいつも文醜と顔良と風呂に入る、その理由はいつもの縦巻きの髪が崩れた姿を見せたくないと言うものであった。

 故に髪型が崩れる風呂や就寝から寝起きの朝方は決して、文醜、顔良、郷刷の三人以外には絶対に姿を見させない。


「確かに本初様の髪の手入れは大変だとは思われますが、皆さん本初様の為に仕事をしているのですよ? ここはお一人で入っていただかなければ、それかお二人の仕事が一段落するまでお待ちに……」

「なぜわたくしが待たねばなりませんの!?」

「本初様が私から仕事を取り上げた所為でございます」

「……あ、あら? そうでしたかしら?」


 あまり気にした事ではなかったのだろう、一応袁紹本人にもその皺寄せが来ているので何も言わない郷刷。


「本初様のお髪を他の者に触らせたくないのはわかります。 ですが私ではどうにも出来ませんし、解決策として誰か女官を選出する他無いのでは?」

「うぐぐ……、はっ! それでしたら!」

「駄目です」


 名案を思いついたと、ニヤリと袁紹が笑みを浮かべるが郷刷は聞く前に却下。


「まだ何も言ってはいませんわよ!」

「どうせ私に手伝えとかおっしゃるつもりでしょう?」


 図星、そんなこと出来るわけ無いでしょうと郷刷はピシャリと言い放つ。


「昔はわたくしの世話でやっていたでしょう!?」

「もう十年以上前の事ではないですか」


 あの頃は袁紹と郷刷、二人とも文字通り子供だった。

 郷刷が年上と言っても十代前半弱、袁紹に至っては二桁の年齢に達していなかった。

 確かに袁紹の母であった袁成の命の下、息女である袁紹の従者として一時付き従った時が有った。

 その時は大して気にせず袁紹の髪を洗ったりもした、しかし今は二人とも大人だ。

 郷刷にそう言う気は無いとは言え、若い二人の男女が一緒に風呂に入るなどやってはいけない事だと郷刷は強めに言う。


「……そう言う気? なんだかよくわかりませんが、早く準備なさい」

「こればかりは従えません、本初様はお一人で入っていただきます」


 命じる袁紹に、郷刷は拒否の意を示す。


「なっ、わたくしの命令が聞けませんの!?」

「聞けません、無理強いしたとしても私は決してやりません」


 袁紹の命で兵に連行されたとしても動かないと、強く郷刷は言う。

 袁家内の体裁のこともあるが、郷刷が頑なに拒否するのも目的があった。

 袁紹は最低一日一回は風呂に入りたいが、一人で入るのは嫌で三人以外に髪や姿を晒したくない。

 文醜と顔良は仕事で風呂に入る暇が無く、残る一人である郷刷も絶対にやらないと宣言した。

 となればどうすれば良いのか、本を正せば袁紹が郷刷に軟禁休暇を与えたからだ。


 郷刷は仕事をしたくないと言っているわけではないし、郷刷がすれば良い仕事を他の者たちに分けた為こうなった。

 だったら袁紹が一人で入るか、郷刷の休暇を取り止めて普段通りに仕事をさせれば問題はあっさりと解決する。


「本初様、今のような通常の状態を崩してもいい事は有りませんよ。 本初様が一言、私に仕事をしろと言えば全てが解決するのですから」


 そうすれば煩わなくて済むと、郷刷は囁くように袁紹へと言う。


「そんなの知った事ではありませんわ!」


 そんな郷刷の妥協点を伝える声に意味が無くなった。

 我関せずと郷刷の腕をガシッと掴み、無理やり引っ張る。

 この細腕のどこにこれほどの力があるのかと、見る間に引っ張られ部屋の外に。


「お、お待ち下さい!」

「わたくしは安景さんの意見など聞いておりませんわ!」


 郷刷の部屋の衛兵たちは、引っ張られ廊下の奥へと消えていく二人を唖然として見つめていた。

 そうして郷刷が踏ん張るも抵抗など無いかのごとく進んでいく袁紹、郷刷の腕を掴む手のどこにこんな力が有ったのかと疑問に思うほど。

 これほど強行する理由がわからないと、なんとか押し留めようとするが問答無用。

 そして気づく、裏目に出たかと郷刷に、もうこれしかないと言わんばかりの袁紹。


「今からお二人を誘えば良いではありませんか、休憩がてらに付き合っていただけるでしょうから」

「お二人は仕事中ですし、でしたら何もしていない安景さんしか残っていませんわ」

「ではもう一度だけ、お二人に伺いましょう! それで駄目でしたらお手伝いさせていただきますから!」


 完璧に決定している、もう何を言っても変える事は出来ないだろうと半ば諦めた郷刷。

 最後の希望は文醜と顔良が了承してくれるだけ、それに望みを託すしかなかった。







「……本初様が湯浴みをなされる、用意は出来ていますか?」

「はい、整っております」


 袁家の大浴場、袁紹と文醜と顔良の三人しか使わない巨大な浴場。

 縦横三町(約327メートル)以上もある、贅沢としか言えない場所。

 彫刻や壁画など豪華な拵え、来賓が皇帝であろうと使用出来る作り。

 その浴場の入り口で郷刷は女官から浴場を使えるかどうか聞き、その返答に一つ溜息をつく。

 文醜と顔良に袁紹が入浴するので、郷刷はいつものように一緒に入ってくれと頼めば。


『昔は一緒に入ってたんだろ? だったらいいじゃん、つーか仕事の邪魔』


 と、文醜は戸を開け五秒で戸を閉めた。


『……一緒に入って良いんじゃないんですか? 麗羽様は良いって言ってるんだし。 そういえば麗羽様、昔は一緒に入ってたって言ってましたよね?』


 顔良もごく普通に微笑んでそう言った。

 つまり二人とも袁紹と一緒に入らない、郷刷が入れてやれと言った。


『……安景さん! なにをしていらっしゃるの!』


 浴場と浴場の出入り口の間にある脱衣所の中から郷刷を呼ぶ声。


「……ただいま参ります」

「……玄胞様、あの、頑張ってください」


 励まされるとは思って居なかった郷刷は、少し驚いてもう一度女官を見た。


「……ええ」


 真っ直ぐと見つめてくる女官に頷き、両開きの戸を開けて脱衣所に入る。


「遅いですわよ!」

「準備が出来ているか確かめていたのですよ、いざ入ろうとして湯船が張られていなければ徒労ですから」


 腰に手を当てて立つ袁紹、未だ衣服は着たまま。

 郷刷としては僥倖、既に衣服を脱ぎ捨て裸だったりしたら困る。


「それでは、いつもの入る前の手順は?」

「そんなことから教えなくてはなりませんの?」

「何せ十年以上も前の事ですから、記憶にございません」


 記憶に有るか無いかであれば有る、袁紹との付き合いのごく最初の記憶ではあるがしっかりと覚えている。

 だがその昔の記憶と今とでは同じかどうかはわからない、だからこそ忘れたと郷刷。

 しかしながら、一番にしなければならないことは分かる。


「……まず髪を整えなければなりませんね」


 クルクルと縦巻きの金髪を解かなければならない、衣服は前が開き、右胸の上で留める形なので脱ぐのには支障は無いが。

 髪を洗う際、縦巻きのままでは洗いにくく、かつ膝下まであるほど長い為に初めから真っ直ぐに伸ばしておいた方が手間が掛からない。


「お座り下さい」


 郷刷は脱衣所の中にあった背凭れの無い椅子を引っ張り出し、座るように勧める。


「床に触れないように」

「わかっております」


 袁紹が座り、郷刷は右手に櫛を取り、左腕に袁紹の髪を乗せるようにしてから梳き始める。


「……確か、昔もこのような事をしていましたね」

「ええ、安景さんがどうしてもと言うから、わたくしは渋々梳かせて差し上げてましたわね」

「そんな事もありましたな」


 髪が櫛の梳き間に引っ掛からないよう、上から下へとゆっくりと梳かしていく。

 幼い頃どうしても髪を梳かせて欲しいと言ったのは、当時の袁紹がちいさな縦巻き髪そのまま風呂へと入ろうとしていたからだ。

 解いていた方が髪が洗い易くなるだろうと思っての事、今ではかなり長大になっている為に手間も一入だった。


「……これでよろしいですか?」


 十分ほど掛かり、縦巻き髪を梳き終われば細い金色の髪が流れていた。

 形が崩れないよう強めに巻いている所為か、長髪は癖が付いて波打っていた。


「手並みが変わっていないじゃないですこと? 十年前とさほど変わりませんわよ、時間は掛かっていますけど」

「今と昔では長さが違うでしょう? 時間が掛かるのは当たり前です」


 床に触れぬよう腕の上に置いていた髪を、袁紹の頭の上へと纏め上げる。


「さーて、今日は行軍で汗と埃塗れになってしまいましたわ」


 郷刷が髪留めで崩れないように押さえた後、袁紹は立ち上がって腰帯を解き、上着を投げ捨てるように脱いだ。

 それに対して郷刷は手を顔に当て、一つ溜息を吐いた。


「……ん? 安景さん、どうかなさいましたの?」

「いえ、信用されていると思えば嬉しいのですが……」


 恥じらいも無くあっさり脱ぎ捨て、胸の黒い下着を惜しげもなく晒している袁紹。


「早く安景さんもお脱ぎなさい、服を着たままお風呂に入るなんて非常識ですわよ」

「……お手伝いをするだけですので、服を脱ぐ必要はありませんよ」

「あら、そうですの?」


 言いながらもスカートに手を掛けて外し、変わらず平然と下着を晒す袁紹。


「……まったく、違いを理解していただきたいものです」


 しょうがなく腕捲りをして、邪魔にならないように袁紹の衣服を拾い折りたたんで竹籠の中へと入れる。


「良いですか? 私は……」


 郷刷が言いながら振り返るも、袁紹は既に胸の下着を取り外しに掛かっていた。

 それを見て郷刷の顔は自然と上に向き、体だけではなく精神面も成長して欲しかったと思いを馳せた郷刷。


「安景さん?」


 顔を上へと向け天井を見つめる郷刷に、袁紹も何かあるのかと見上げるもあるのはおかしな所が無い天井。

 また視線を郷刷へ戻し、まだ上を見つめている郷刷を見て、再度天井に視線を向ける袁紹。


「天井に何かあるんですの?」

「いえ、人生とはかくも無情だと考えていただけです」


 視線を袁紹に戻した郷刷は、袁紹の衣服を入れた竹籠を手に取って袁紹へと差し出す。


「暖かいとは言えそのままではお体に触るかもしれませんのでお早く」

「そうですわね」


 頷いた袁紹は下着を全て外した後、竹籠の中へと放り込んだ。




 惜しげもなく郷刷に肢体を晒して浴場へと入る袁紹に、どこか遠い目でその後に続く郷刷。

 小さかった頃を思い出しながら、あまり変わっていないかと袁紹の仕草を見る。


「お待ちを、先に──」

「体を洗ってから、と言いたいのでしょう? 何度も何度も懲りずに言い続ければ、いい加減覚えてしまいますわ」


 一緒に風呂に入っていたのは半年も無かったというのに、それから十年近くたった今、よく覚えていたなと笑みを浮かべる郷刷。


「でしたら次の言葉もお分かりですね?」

「勿論ですわ」


 髪で大きくなった頭を揺らしながら、袁紹は背の小さな木製の椅子へと座る。


「まずは髪から、でしょう? 猪々子さんが毎度毎度一番にお風呂に飛び込むから、何度も言って聞かせなければなりませんのよ」


 背中を向けたまま言う袁紹に、よく覚えておられましたね、と視界に入った石鹸などを取りに行く郷刷。


「何年一緒に居ると思っていますの? 安景さんの事ならどんな事でもお見通しですわ!」


 そう言って高笑いをあげるも、もくもくと漂う湯気が器官に入ったのか咽た袁紹。


「確かに、もうすぐ十年。 初めてお会いしてから十四年になります」

「お母様がいきなり安景さんを連れて来た時の事ですわね? 最初は一体何なのかと思いましたわ、見た目全く冴えていない安景さんを連れて来て良く分かりませんでしたわ」


 その一言に本当によくお覚えで、と桶にお湯を汲み取り置いて、袁紹につけていた髪留めを外す。


「覚えていないかと思っていました、あの時は本初様は本当に小さくあられましたので」

「うーん、覚えていると言うより思い出しましたわね」


 袁紹の長い金髪をお湯で濡らし、洗髪剤を手に塗って指で梳いていく。

 何度か梳けば僅かに泡立つ、お湯と混ざった洗髪剤が郷刷の腕を伝い肘から滴り落ちた。


「……あの頃は如何でしたか?」

「楽しかったですわね、勿論今も楽しいですわよ? ですけど、お母様も一緒にお風呂に入って……」


 小さい頃に、郷刷は袁紹の母である袁成 文開に見出された。

 十になる前から知を示し、神童や麒麟児と噂されていた所に袁成が尋ねてきた。

 幾つかの問答の末、発揮した知恵が偽りで無いと認めて袁成は将来袁家に遣えて欲しいと頼まれた。

 当時の郷刷はさほど袁家に興味は無かった、袁成にも同様に興味は無かった。

 今返事は出来ないと断り、袁成はそれを受け入れた。


 それからだ、十に満たない子供の所へと毎日押し掛けて、名門袁家の人物が庶人である郷刷の両親に贈り物をして機嫌を取っていたのだ。

 差し詰め『将を射んと欲すればまず馬を射よ』と言ったところだろう、どうしてそこまで入れ込むのか当時の郷刷にはわからなかった。

 幼少の頃神童だ麒麟児だと言われ、成長したらそれほどの者ではなかったと言う事は良くあるのに、どうして自分を欲しがるのかと素直に郷刷は聞いた。


『何故かと? 私は自慢ではないけど、人を見る目があると思ってる。 私のこの目が郷刷、貴方がいずれ多くの者を治める大器を持つ大人物になると教えてくれるのよ』


 そう言って笑う一子を持つ金髪美女に、郷刷は一瞬見惚れたのを覚えている。

 そう郷刷を大人物になると評した袁成もまた、郷刷が可愛く見えるぐらいに大人物だった。

 並外れた武と広く深い知を併せ持ち、礼節を重んじながらも人当たりが良く、当時の大将軍や袁家の外戚とも上手く付き合い好評だった。

 次代の袁家頭領は妹の袁逢、袁隗ではなく袁成だと話題に、既に決まっているかのような状態だった。

 だがそれは叶わなかった、袁成は病に掛かり医者の治療も甲斐なく命を落としたのであった。


 当時は妹たちの嫉妬による毒殺ではないのか、と噂されたが当の姉妹たちは仲が良く次の頭領は長女だと触れ回るほどに認めていた。

 治療に当たった医者たちも毒ではないと断言した、その中には名医揃いと名高い医療教団五斗米道の者らも同じであった

 つまり袁成を殺したのは五斗米道の者らでも退治出来ない強大な病魔であった、その死に多くの者が嘆いた。

 袁成の両親は本より、姉妹から娘の袁紹、そして郷刷も嘆いた。

 今も存命で袁家の頭領であったなら、勢力図は間違いなく塗り替えられ今袁紹が率いる袁家よりも強大なものになっていただろう大人物であった。


「お母様も一緒に背中の流しっこをしましたわね」

「ええ、私にも良くしてくださいました」


 我が子のように扱ってもらった郷刷、自身を生んでくれた母とは違う、もう一人の母とでも言うべき存在であった。


「……懐かしいですね」

「ええ、今のわたくしを見てお母様は何とおっしゃるか」

「多くの事を言われるでしょうね、例えば考えが足りない、他の者に対しての気配りがたりないなどなど」

「な、なんですってぇ~!?」

「おや、何故お怒りになられるのですか? 文開様でも完璧ではありませんでしたよ、息女である本初様もまた完璧ではありません。 文開様がなる事は出来なかった袁家の頭領、今そこに座る本初様はこれからなのですから焦る事はありませんよ」

「……そうですわね」


 越えるべき壁はとても高いですよ、私はいつまででもそのお手伝いをさせていただきますから。

 袁紹の髪を洗いつつ、郷刷は優しく語りかけるように言った。






 袁紹の入浴も終わり、昔話に思い出を馳せつつ郷刷は自室へ戻ろうとするも。


「そうでしたわ、今日は安景さんのお部屋で寝ることにしましたわ」

「……また随分と。 いえ、駄目だと言っても止める気は無いのでしょう?」

「わたくし、忘れていた事もたくさん有りましたわ。 お母様が亡くなられてからの事、お母様が生きておられた時の事も」


 郷刷が切欠で思い出したと、つまり郷刷と昔話に興じればもっと思い出せるのではないかと、そう袁紹は言う。


「……そうですね、最近は昔ほど本初様とお話をしていませんでしたね」


 袁成が亡くなり、それから長い時間を掛けずに袁家は薄汚い者たちによって汚されていった。

 郷刷はそれが嫌で堪らず、思い出が汚されているかのように感じた。

 だからこそ薄汚い者たちが不要になるようにと、郷刷は勉学に励んだ。

 それからだ、袁紹と離れ始めたのは。

 余る時間を出来るだけ勉強に費やし、文官として一人前になった頃には数年の月日が経っていた。


 袁紹の下へと戻ってくれば、即座に袁家頭領となっていた袁紹の傍へと立ち位置が移り。

 袁家の金や名声で私腹を肥やす者たちをごっそりと削ぎ落とした、その甲斐あって不正塗れの者は消えたが仕事の量は一気に増えた。

 袁紹との話す時間も無く、話す内容の殆どが袁家の仕事に関する物ばかりであった。

 改革の内政案もそれを助長した、ここ数ヶ月は少し増えていたが数年前は無理に会おうとしなければ数週間は会えない事もざらであった。


「わかりました、髪を整える器具も持ってきておきましょう」


 郷刷の部屋に泊まるとなれば、朝の髪型を整えるのは必然的に郷刷になる。

 一つ頷いた郷刷に、袁紹は一つ。


「よろしくてよ」


 きりの良い長さでいくつかに折りたたまれた髪を揺らして袁紹が頷く。


「では参りましょう、ですが話しすぎて夜更かしは駄目ですよ?」

「当たり前ですわ!」


 郷刷は一つ笑い、先導して部屋へと案内した。

 そのお陰で一つ、知らない事を知る事になる郷刷であった。

袁紹の母親である袁成さま、親か叔父かわかんないけど実際いたらしいのですがこの話じゃ勿論捏造

イメージ的には孫策の母親である孫堅さまのと同じ感じのぶっ飛んだ人です

曹操もかくやというほどの完璧超人、しかしてその実態は・・・!

いつか外伝とかでやるかもしれない


と言うか思い出の回想でしか出てこないからオリキャラだけどノーカウント、ノーカウントだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ