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夜に尋ねてきた人

 皇帝が洛陽に戻り、祝いの宴が開かれた。

 もとより盛大な宴にしようと袁紹が張り切り、どれだけ金が掛かったか分からないほどのものになった。

 その宴が行われている宮廷の一角、自分が選ばれなかった事に不愉快を感じながらも、今さっぱりそれを忘れて皇帝が無事だった事を祝う袁紹。

 皇帝の背後に付けないと言うのは悔しいながらも、何れ董卓が酷い目に遭うから気が収まると言うのもあった。


 その宴会も早々にお開きとなり、無理やり連れて行かれ出戻りの皇帝や行軍で洛陽に来た董卓も共に疲れており既に引いて居ない。

 袁紹も皇帝が居るなら留まって祝うのだが、居ない為にさっさと引き上げて洛陽にある一等級の宿に部屋を取って引いている。

 郷刷も袁紹が居る部屋と同じ階の、別の部屋で一人部屋に篭る。

 扉の前には護衛が付き、良からぬ輩が入ってこないよう守っている。

 その中で郷刷はこれからの事、この大陸で起こる事を再度確かめていた。


 皇帝は幼いながらも聡明で、成人まで成長すれば十分に明君へとなる事も出来る逸材。

 傍に控える董卓は私利私欲が薄く、傀儡にする意思も無い為、奸臣のような振る舞いはしないだろう。

 このまま何事も無く時が流れれば、黄巾の乱で失墜している漢王朝の権威を取り戻す事も可能かもしれない。

 だが、そうなる確率は低いと言わざるを得ない。

 野心に燃える諸侯は認めないだろう、今の漢王朝に諸侯を統べる能力は無く、賢帝になるであろう劉協の背後にぽっと出の地方豪族に。


 今の漢王朝を打ち崩し、新たな王朝の幕開けになろうとする諸侯。

 間違いなく何らかの行動を起こし、皇帝を廃しようと企む。

 董卓はその体の良い身代わり、董卓を打ち倒して幼帝を保護したとしても何れ殺されるか、あるいは保護した諸侯が一大勢力となった際禅譲を要求されるだろう。

 つまり漢王朝の崩壊はもう始まっている、大きな亀裂を入れた黄巾の乱に、止めとなるであろう洛陽に居座る董卓の排除。

 延命処置でさえ難しい、袁紹が選ばれていたら僅かばかりに延命となったかもしれないが、似たような理由で袁紹を排除しようと動き出す事も十分考えられる。


 勿論郷刷としてはそうなる前に皇帝から離れるつもりではあったが、申し訳ないが董卓が選ばれた事に安堵を感じていた。

 立場としては間違いなく漢王朝寄りだが、流れる風評の是非で王朝を打ち倒す方へと回らなければいけないからだ。

 出来るなら王朝が存続し続け、来る戦乱を無くすか、せめて先送りにでもして欲しい。

 無くなれば言う事なし、何年か先送りになればその間に治世の兆しを見せられるかもしれない。


「……淡い期待か」


 そう考える郷刷は、筆を置いて目頭を揉む。

 考えた事は賭けるにはあまりにも低い確率、状況はもう押さえられない所にまで来ているとほぼ確信しているのにそう考えている。

 世の中を良くしようとするのは良い、どうせなら流れる血が少ない謀略で決めて欲しいが、分かりやすく力を見せる必要もあるために武器を持っての戦いをする。

 それを行うためには乱れた世で無ければいけない、でなければ世を憂い立ち上がった、と言う徳を見せる事が出来ない。

 そしてその世が間近に迫っている、郷刷はその世をどうやって乗り切るか、生き残り方を模索して一つ溜息を吐いた。


「……寝るか」


 最近は夜遅くまで起きていた、今日くらいは早めに寝ようかと椅子から立ち上がり、寝台へと潜り込んで瞼を閉じた。

 そうして郷刷が寝台で瞼を閉じ、すやすやと寝息を立て始めてから五分ほど。


「──アニキー」


 ドンドンドン、と強く戸を叩かれる音。


「アニキー、起きてっかー? 麗羽様が呼んでるんだけどー」


 何度も強く叩かれる戸の音と、呼びかける声で強制的に覚醒させられる郷刷。

 無理やり開いた瞼には歪む視界、頭痛すらする頭。

 顔を手で押さえつつ、一つ息を吐いて起き上がる郷刷。


「……何かあったんですか?」


 戸を開き、強く叩いていた文醜を見下ろす郷刷。


「寝てた? ごめんなー、麗羽様が呼んでるから早く着てくれってさ」

「分かりました、着替えてきますので……」

「それでいいんじゃね? 今日着替えてないっしょ」


 そう言われて自分の衣服、いつもの文官服だった事に気が付いた。

 見て分かるような汚れが付いていないか確かめて、両手で自分の顔を叩いてから少し揉む。


「行きましょうか、本初様の部屋でよろしいんでしょうか?」

「うん、しっかしそれだけでよく目が覚めるよな」


 いつもの目を覚ます時の行動、痛みで意識を覚醒させる。


「これくらいしないと冴えませんからね」


 結構な力を入れて叩くのだ、わずかばかりであったが頬辺りが赤くなっている。

 袁家の文官としてやり始めてから見る間に睡眠時間が減っていた郷刷、仕官する前までのと比べたら三分の二ほどに減っている。

 人に必要な睡眠が郷刷には四時間ほど足りていない、その四時間を仕事の時間に宛てる毎日であった。

 そんなやり取りを文醜として、二人は袁紹の部屋へと出向く。


「麗羽様ー、アニキを連れてきましたよー」


 文醜は戸を開きながらの一言、そうして郷刷が文醜の後ろから室内を見れば影が三つ。

 一人は今この部屋の主である袁紹に、もう一人の袁家の良心たる顔良、そして最後に何故ここに居るのか分かりかねる存在。


「あら、安景さん。 呼びつけて申し訳ありませんわね、安景さんに是非ともお聞かせしたい話がありまして」

「私であればいつでも呼びつけて下さって構いません」


 主である袁紹に頭を下げ、袁紹でも顔良でもない三人目に顔を向けて一言。


「……これは賈駆殿、宴会の時振りですね」


 振り返る賈駆の眉を顰められ、会いたくない人物に出会ってしまったような雰囲気を醸していた。


「……そうね、夕方の宴会振り」


 少々冷たい言い方で返事を返す賈駆、気にする事もなく郷刷はもう一度袁紹に頭を下げて入室する。


「それでは本初様、お話というのは?」


 元に座っていただろう椅子に座りなおす文醜、その隣には顔良が座り、その椅子から三歩もない位置にある寝台に座って足を組む袁紹。

 その袁紹が座る寝台、袁紹から真っ直ぐと相対するように椅子に座る賈駆。

 戸に背を向けていた賈駆と戸が見える位置にある寝台に座る袁紹との間。

 賈駆をして左手奥に文醜と顔良、正面に袁紹、そして郷刷はその右手、袁紹、賈駆、郷刷と三角形になる位置取りに立つ郷刷。


「ええ、この賈駆さんが董卓さんの代わりに見えまして、是非ともお話を聞いて欲しいと」

「……麗羽様は賈駆さんが持ってきたお話を受けるつもりなんですけど、その前に安景さんにも意見を聞いておいたほうが良いんじゃないかなってと思って」


 言う袁紹に補足して顔良、その隣の文醜はうんうんと頷いている。


「……そのお話とは?」

「それは賈駆さんから聞いた方が早いんじゃないですこと?」


 袁紹に言われ、郷刷は賈駆へと視線を向ける。


「では聞かせていただきましょう、本初様が受けると言ったお話を」

「……分かったわ」


 一つ呼吸、自分を落ち着かせるようにした賈駆は郷刷を見て口を開く。


「私たちは、袁紹さんに力を貸して欲しいのよ」


 そうして賈駆は、郷刷が聞きたくない言葉を吐いた。

皇帝にキャラ付けするか悩み中、オリは主人公だけが良いんで完全空気化にすべきかなぁと

つまりセリフは一度も出でこないと言う事、容姿とかその他もろもろも同様

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