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憧れの御曹司が、なぜか私にだけ甘すぎる。けれど私はまだ、あの日の男の子だと気づけない  作者: 御上常陸介寛浩


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第9話 近づきたいのに、近づくほど怖い

 翌朝、私は駅のホームで電車を待ちながら、昨日の自分の発言を思い出していた。


『ちゃんと、見ようと思います』


 言った。

 たしかに言った。

 あれは夢でも幻でもなく、放課後の廊下で、九条さんに背中を押されたあと、私はちゃんと自分の口でそう言ったのだ。


 どうしてあんなことを言えたんだろう。


 いや、言いたかったのは本当だ。

 このまま“私なんて”だけで全部を閉じてしまうのは、たぶん違うとも思った。

 彼のことを何も見ないまま、勝手に勘違い扱いするのは、やっぱりよくない。


 でも、だからって。


 だからって、翌朝の私が平然としていられるわけではなかった。


「……勢いって怖い」


 小さくつぶやくと、隣に並んでいた会社員らしい人が一瞬こちらを見た。

 私は慌てて口を閉じる。


 そうだ。勢いだ。

 昨日の私は、たぶんいろいろ重なって少しだけ勇気が出ていただけで、根本の部分が急に強くなったわけではない。


 つまり何が言いたいかというと、今日すごく気まずい。


 見ようと思う、と言った。

 彼は嬉しそうに笑った。

 そこまではいい。


 問題は、そのあとだ。


 私はこれからどんな顔で彼に会えばいいんだろう。

 “見ようと思う”と言った翌日に、また目も合わせられないとか、そんな情けないことになったらどうしよう。


 いや、たぶん、なる。


 私は自分の性格をよく知っている。

 意を決して一歩踏み出した次の日ほど、反動で縮こまりたくなるのだ。


 ホームに電車が滑り込んでくる。

 風がふわっと巻いて、髪の端が揺れた。


 私は黒縁眼鏡を指で押し上げて、深く息を吸う。


 大丈夫。

 見るって決めただけだ。

 いきなり全部上手にできなくてもいい。


 そう自分に言い聞かせながら、私は電車に乗り込んだ。


   ◇ ◇ ◇


 教室に着くと、ひまりが私の顔を見るなり、あからさまに何かを察した顔をした。


「おはよ」

「……おはよう」

「何その、“昨日ちょっと前向きになった自分を今朝の自分が処理できてません”みたいな顔」

「やめて」

「図星なんだ」

「やめてって言ってるでしょ」

「はいはい」


 ひまりは笑いながら私の前の席に座る。


「で?」

「何が」

「昨日、何かあった?」

「……」

「その間は、ありましたって言ってるのと同じ」

「最近ほんとに鋭すぎない?」

「栞が分かりやすすぎるの」


 私は机に鞄を置いて、教科書を出すふりをした。

 でも、どうせひまりにはある程度話すことになるだろうとも思っていた。


 彼女はもう、私の気持ちの揺れをかなり正確に見抜いている。


「……少しだけ」

「うん」

「ちゃんと見ようかなって、思った」

「うわ」

「何、その“うわ”」

「いや、ついにそこまで来たかと思って」

「別に大げさなことじゃない」

「栞にとってはかなり大きい前進だよ、それ」

「……そうかな」

「そうだよ。今までのあんた、“見ない”“考えない”“私なんて”の三段構えだったじゃん」

「言い方」

「でも事実でしょ」


 事実なので、反論できない。


 ひまりは頬杖をついて、少しだけやわらかい目で私を見た。


「よかったじゃん」

「よかった、のかな」

「少なくとも、前より自分に嘘ついてない」

「……」

「苦しくても、そっちの方がちゃんと前に進むやつだよ」


 前に進む。


 その言葉に、少しだけ胸がそわつく。

 前に進むということは、何かが変わるということだ。

 何かが変わるのは、正直こわい。


「でも」

 私は小さく言った。

「近づいたら、近づいた分だけ怖くなる気がする」

「うん」

「前は、どうせ関係ないって思えたからまだ楽だったのに」

「うん」

「今は、そう思えなくなってきてる」

「それが恋ってやつでは?」

「そういう軽くまとめ方しないで」

「ごめん。でも本質はそうだと思う」


 ひまりはそう言ってから、教室の入口をちらりと見た。

 つられるように私も見てしまう。


 いない。


 ほっとする。

 ……いや、少しだけ拍子抜けもする。


 もう本当に、自分が面倒くさい。


   ◇ ◇ ◇


 一時間目から三時間目までは、比較的平和だった。


 授業がちゃんと頭に入ったとは言わない。

 でも最近の私にしてはかなりまともな方だったと思う。


 その理由のひとつは、恒星が教室へ来なかったことだろう。

 来ないなら来ないで少し寂しい、なんて昨日は思ったけれど、いざ頭を冷やしてみると、やっぱり朝から話しかけられない方が心臓には優しい。


 ……そう思っていたのに。


 四時間目の終わり際、先生が連絡事項を告げた。


「来週の交流イベントについてだけど、各クラスから実行補助を数名ずつ出すことになった」

 教卓の前で先生がプリントを配る。

「体育館設営、受付、資料配布、各案内役。それぞれ希望も聞くが、人数調整はこちらでやる」


 交流イベント。

 近隣の系列校と合同で行う、小さな学校行事らしい。

 私は去年、ほとんど関わらなかったからあまり記憶にない。

 ひまりだけが「面倒だけどちょっとお祭りっぽくて楽しかったよ」と言っていた気がする。


 先生は出席番号順に何人か名前を読み上げ始めた。

 そして。


「朝比奈」

「……はい?」


 思わず間抜けな声が出た。


「資料配布と来客誘導な」

「……え」

「図書委員で校内配置にも慣れてるだろ」

「……でも」

「あと一条」

「はい」


 隣の方から、聞き慣れた声が上がる。


 私は固まった。


「おまえは受付と案内のまとめ役。朝比奈とも動くこと多いと思うから、必要なら話し合っておけ」

「分かりました」

「では以上」


 先生はさらっと言ったけれど、私にとっては全然さらっと済む話ではなかった。


 ひまりがすぐに横から小声で言う。

「はい来ました」

「来てないでしょ、こんなの」

「来てるよ。イベントで一緒に動くフラグ」

「フラグとか言わないで」

「でもまあ、これはでかいね」

「でかすぎるよ……」


 資料配布と来客誘導。

 しかも一条くんと動くことが多い、とはっきり先生が言った。


 これはつまり、否応なしに一緒にいる時間が増えるということだ。


 見ようと思う、と言った翌日に、こういう形で距離を詰められるのは正直かなり心臓に悪い。


   ◇ ◇ ◇


 昼休み、私はお弁当を広げながらも、ほとんど食欲がなかった。


「ねえ、どうするの?」

 ひまりが唐揚げを箸で持ち上げながら聞く。

「……何を」

「交流イベントの打ち合わせ」

「必要なら、するしかないと思う」

「その“するしかない”って顔じゃないよね」

「だって、したらしたで緊張するし」

「しなかったら?」

「もっと困る」

「うん、知ってた」


 ひまりは唐揚げを口に放り込んで、もぐもぐしながら言う。


「でもいいんじゃない?」

「何が」

「見ようと思うって決めたんでしょ。ちょうどいいじゃん」

「ちょうどよくない」

「よくない?」

「全然よくない。心の準備ってものが」

「栞」

「何」

「準備万端で恋が始まる人なんていないから」

「始まるって決まってない」

「まだそこ言う?」


 まだそこ言う、という目で見られて、私は黙るしかなかった。


 たしかに、言葉としてはもう言い訳の域かもしれない。

 分からないことはまだ多い。

 でも、分からないままで何も感じていないふりは、もうできなくなっている。


「……怖いんだよ」

 小さく言うと、ひまりが少しだけ真面目な顔になった。


「うん」

「一緒にいる時間が増えたら、もっと期待するかもしれない」

「うん」

「期待したら、だめだったとき、たぶん今よりつらい」

「うん」

「でも、近づきたい気持ちも少しある」

「はい」

「だから余計に怖い」


 ひまりは少しのあいだ黙って、それから優しくため息をついた。


「それ、すごく普通のことだよ」

「……普通?」

「うん。近づきたいのに怖いって、めちゃくちゃ普通」

「私はもっと、変なやつかと思ってた」

「変ではある」

「ひまり」

「でも、その悩み自体は全然まとも」


 私は少しだけ笑ってしまった。

 まともと言われたのに、変ではあると付け足されると、何も安心できない。


 けれどその雑さに、少しだけ救われるのも本当だった。


   ◇ ◇ ◇


 昼休みが終わりかけたころ、教室のドアの近くに気配がした。


 私はもう、その存在を気配で察することに慣れつつある自分が嫌だった。


 顔を上げると、やはり恒星がいた。


 最近の彼は、前みたいに真っ直ぐ私の席まで来る前に、一度こちらの様子を見てくれるようになった。

 その慎重さがありがたいような、逆に意識してしまってつらいような、複雑なところだ。


「朝比奈さん」

「……はい」

「少しだけ、イベントのことで話せる?」

「……今?」

「都合悪い?」


 都合が悪いわけではない。

 ただ、心の準備がないだけだ。

 でも、そんなことをいちいち言うのもおかしい。


「……大丈夫です」

「じゃあ廊下でもいい?」

「……はい」


 席を立つとき、ひまりがにやっとしながら小さく拳を握って見せた。

 何その応援。やめてほしい。


 廊下へ出ると、恒星は人通りの少ない窓際の方へ移動した。

 前よりも自然だ。

 たぶん彼なりに、私がざわつくのを避けようとしてくれている。


「ありがとう」

「何がですか」

「出てきてくれて」

「……必要な話なので」

「うん」


 その“うん”が少しだけうれしそうで、私はもうそこで落ち着かなくなる。


 どうしていちいちそんな顔をするんだろう。


「交流イベント」

 恒星はプリントを広げた。

「来週の木曜と金曜で準備、本番はその翌日。朝比奈さんは主に資料配布と来客案内」

「……はい」

「校内の配置、ある程度分かる?」

「図書委員でよく移動するので、たぶん」

「助かる」


 ごく普通のやり取りだ。

 普通のはずだ。

 でも私は、彼と並んでプリントを見る距離感だけで、すでに少し心拍数が上がっている。


「俺は受付と全体の案内役だから、朝比奈さんと動線が重なる」

「……そうですね」

「負担にならないように、できるだけ役割は分けるつもり」

「え」

「でも、もし朝比奈さんが困ったら、すぐフォローに回る」

「……」

「嫌?」


 嫌か、と聞かれて、私は少しだけ困った。


 嫌ではない。

 むしろ、その言い方は嬉しい。

 でも、嬉しいと思ってしまうことが怖い。


「……嫌じゃ、ないです」

 小さく答えると、恒星は少しだけ目を細めた。

「よかった」

「でも」

「うん」

「そういうふうに言われると、期待しそうになるので」

「……え」


 言ってから、自分で固まった。


 何を言っているんだ私は。


 恒星も一瞬だけ目を見開いている。

 しまった、と思ってももう遅い。


「違っ、今のは」

「期待して」

 彼が静かに繰り返す。

「何を?」


 それを聞く?

 本人がそれを聞く?


 私は一気に耳まで熱くなるのを感じた。

 逃げたい。

 今すぐこの場から消えたい。


「……言わないです」

「どうして」

「どうしてもです」

「そっか」


 恒星は少しだけ笑った。

 でもからかう感じではない。むしろ、何かを大事に受け取ったみたいな顔だった。


「じゃあ、無理に聞かない」

「……」

「でも、期待してくれるのが嫌じゃないってことだけは伝えておく」

「……」


 もうだめだ。

 ほんとうにだめだ。


 こんなふうに会話のたびに一枚ずつ距離を剥がされていったら、私はたぶん今までみたいな顔ではいられない。


 嬉しい。

 怖い。

 近づきたい。

 でも、それ以上に、今は逃げたい。


 全部がいっぺんに来る。


「……交流イベントの話、続けてください」

 私はほとんど逃げるように言った。


 恒星は少しだけ苦笑して、プリントに視線を戻した。

「うん。まず資料配布だけど――」


 そのあとも説明は続いたけれど、正直、半分くらいしか頭に入っていなかった。

 自分で“期待しそうになる”なんて言ってしまったことが、頭の中を占拠していたからだ。


   ◇ ◇ ◇


 放課後、図書室へ向かう途中で、私はひとりで何度もさっきの会話を反芻していた。


『期待して、何を?』

『期待してくれるのが嫌じゃないってことだけは伝えておく』


 あまりにも無理だ。

 この人、本当に時々ものすごく真っ直ぐすぎる。


 たぶん悪気はない。

 悪気はないけれど、だからこそ余計にたちが悪い。


 私は階段を上りながら、小さく頭を抱えたくなった。


 見ようと思う、と決めた。

 その結果として、ちゃんと見えてきたものもある。


 彼が思っていたよりずっと不器用で、余裕がなくて、私の反応ひとつに嬉しそうになったり、少し落ち込んだりすること。

 きれいなだけの王子様じゃなくて、ちゃんと人間だということ。


 それは、少しうれしい。


 でも、見えれば見えるほど、私はその分だけ怖くなる。


 だって、ただの憧れの人なら、遠くから見ていればよかった。

 でも今の彼は、私の前で表情を変える。

 私の言葉で揺れる。

 それが分かるようになってしまったら、もう“関係ない人”ではいられない。


 それはつまり、私の方も何かを返さなければいけなくなるということだ。


 まだ無理だ。

 まだ自分の気持ちに名前すらつけられないのに。


   ◇ ◇ ◇


 図書室の当番を終えて外に出ると、夕方の廊下は薄い橙色に染まっていた。


 今日こそは誰にも会わずに帰りたい。

 そう思っていたのに、曲がり角をひとつ曲がった先で、私は足を止めた。


 窓際に立っていたのは、恒星だった。


 待っていたわけではないのかもしれない。

 でも、私が来たことにすぐ気づいて顔を上げたところを見ると、少なくとも少しは気にしていたのだろう。


「お疲れさま」

「……お疲れさまです」

「図書室、長かったね」

「少し、整理が多くて」

「そっか」


 沈黙が落ちる。


 前ならその沈黙に耐えられなくて、すぐに何か言い訳じみたことを口にしていたと思う。

 でも今日は、少しだけその場に立っていられた。


 ちゃんと見る、と決めたからかもしれない。


 彼の顔を見る。

 穏やかなようで、ほんの少しだけ何かを待っている顔。


「……何かあったんですか」

 私から聞くと、恒星は少し意外そうに目を瞬かせた。


「どうして?」

「待ってるみたいな顔だったので」

「……見てるね」

「……」

「うれしい」


 また、そういうことを言う。


 私は視線を逸らしたくなったけれど、昨日の自分を思い出して、どうにか踏みとどまった。


「交流イベントのこと」

 恒星が静かに言う。

「少し考えてた」

「……何を」

「君に負担かけすぎない方法」


 私は言葉に詰まる。


「そんなの」

 やっとのことで声を出す。

「私だけ特別扱いしなくていいです」

「特別扱い、してるつもりはないよ」

「でも」

「ただ、困ってほしくないだけ」


 その“だけ”が重いのに、この人はたぶん本気でそう思っている。


 私は少しだけ眉を寄せた。


「……そういうの」

「うん」

「やっぱり、近づくほど怖いです」

「……」


 言ってしまった。

 でも、今度は言い直さなかった。


 恒星は少しだけ黙ったあと、静かに聞いた。

「どうして?」


 どうして。

 答えは自分でも、もう少しずつ分かっている。


「近かったら」

 私はゆっくり言葉を探した。

「自分が、勘違いしてるだけって言えなくなるから」

「……」

「優しいのが、ただの親切じゃないかもしれないって思ってしまうし」

「うん」

「そう思ったら、うれしいのに、すごく怖い」

「……」

「だから、近づきたい気持ちが少しあるのに、それと同じくらい離れたいとも思うんです」


 最後まで言い切ってから、私は少しだけ息を吐いた。


 こんなことを人に言うのは、ほとんど初めてだった。

 しかも本人に。


 恒星はしばらく何も言わなかった。

 その沈黙が長く感じられて、私は少しずつ不安になる。


 変なことを言っただろうか。

 重かっただろうか。

 困らせただろうか。


 でも、彼が口を開いたときの声は、とても静かだった。


「うれしい」

「……え」

「怖いって言ってくれたのも」

「どうして」

「離れたいだけじゃないって分かったから」


 私は息を止めた。


 離れたいだけじゃない。

 それはたしかに、今の私の本音だった。

 でも、それをこんなふうに喜ばれるとは思っていなかった。


「近づきたいって少しでも思ってくれてるなら」

 恒星は続ける。

「俺はそれで十分、頑張れる」


 頑張れる。

 そう言った顔は、きれいなのに少しだけ格好悪かった。

 余裕があるようで、ちゃんと必死で。


 そのことに、私は胸の奥がきゅっとなるのを感じた。


 たぶん私は、そういうところを見てしまったから、もう前みたいには戻れないのだ。


「……ずるいです」

 小さく言うと、恒星が少し笑った。

「またそれ言う」

「ほんとにそう思うので」

「うれしい」

「何でですか」

「君が、ちゃんと本音で返してくれてるから」


 本音。

 そうかもしれない。

 私は最近になってようやく、この人の前で少しずつ本音をこぼすようになっている。


 それは、いいことなんだろうか。

 たぶん、いいことなんだと思う。

 でも、いいことほど怖いのが、今の私だった。


   ◇ ◇ ◇


 帰りの電車の中で、窓に映る自分の顔をぼんやり見ながら、私は考えていた。


 近づきたいのに、近づくほど怖い。


 あれは今日の私の、たぶん一番正直な言葉だった。


 前なら、そんなふうに思っていることすら認めなかっただろう。

 でも今は、認めざるを得ない。


 彼のことを知るのは怖い。

 自分の中に期待が育つのも怖い。

 もしそれが違ったらと思うと、ほんとうに怖い。


 でもその一方で、今日みたいに少しずつ話せたことが、ちゃんと嬉しかったのも事実だ。


 それをなかったことには、もうできない。


 電車の窓に映る私は、相変わらず黒縁眼鏡の地味な女の子だ。

 見た目は何も変わっていない。


 でも、胸の中だけは、少しずつ確実に変わってきている。


 その変化が、怖い。

 けれど同時に、もう少しだけ先を見てみたいとも思ってしまう。


「……ほんと、困る」


 小さくつぶやいて、私は窓の外に流れていく夕暮れを見た。


 近づきたいのに、近づくほど怖い。

 たぶん今の私は、その矛盾の真ん中に立っている。


 それでも、そこから目を逸らさなくなっただけ、前よりは少しだけましなのかもしれない。

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