根暗の端っこ暮らし -主人公席から一番遠いとこ-
私は、主人公席の正反対——廊下側の最前に居るような根暗だ。
あいにく、図書室に行く勇気すら持ち合わせていない。
「えっと、ソウカンさん」「……アイゼキです」
名前を間違えられるのもこれで何回目になるだろうか。
間違えるくらいなら二人称でいいのに。
その女生徒の視線は、机の正面に貼られた名前。
もちろんそこには苗字の「相関」しか書かれておらず、名前すら覚えられてはいない。
そもそも、名簿一番なんてあ行で限られるんだから"そ"なわけないよね。
「その…まだ競技届出してないみたいだからさ」「欠席届を出しました」
それ以上何も言われなかったのだから、言い方を間違えたんだ。
私じゃなくて、彼女が。
「そっか、分かったよ」
私は彼女の顔を見る事なく、一限の用意をして授業に臨んだ。
おかしい。
どうして、時計の針は1時を指しているのだろう。
——ああ、居眠りをかましてしまったらしい。
これでも、メンタルには自信がある。
私は身を起こし、鞄からお弁当を取り出して、箸を入れては口に運ぶ。
勿体無いと思われるかもしれないけど、どうやらこれが私の日常らしい。
私とて満足しているのだろう。
現にこうして、地味ながらも生きている。
誰かの取り巻きとしてではなく、私は私として生きている。
おっと、少し痛い人みたいになってしまった。
特にやる事も無いし、今日は勉学を億劫にしたい日なのかもしれない。
鈍いチャイムの音と同時に、私は再び夢へと墜ちていった。
まどろみの中で、誰かの声が聞こえた気がした。
《こいつどう思う?》
《磨けば光るタイプなんじゃない?》
《何、お前ブ専なの》
《違うよ》
《まぁ厚化粧してる金田よりかは整った顔してるわな》
《ちょっとそこ聞こえてるって》
……私だって聞こえてるんだが。
何ですか、磨けば光るって。
気にはしないけど。
私は目が覚めた。
放課後なのに教室に残って駄弁っている彼らを横目に、私はいつも通り帰宅した。
夕日が、私の瞳を伊達眼鏡越しに焼く。
「今日の晩御飯はなんだろう」
学校に興味はないけれど、嫌いというわけじゃない。
そんな気がした。
あれ、提出物出したっけ——。
ご一読ありがとうございました。
誰の人生の主人公でもない、そんな瞬間の空気感を切り取ってみました。
たまには短編も書いてみるものですね。
この作品と同時にもう一作、ギャグホラーの短編を投稿していますので気になる方はどうぞ。




