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運命の大パーティー開幕!

煌びやかなシャンデリアが、これでもかというほど光をまき散らしていた。

天井が眩しい。床が眩しい。人が眩しい。もう視界が攻撃的。


そんな中、パーティーの中心――

純白の薔薇のドレスに金色の髪をなびかせる女神がいた。


マーガレット・ザンジス・アリーチェ


この国が誇る天使にして、原作『運命の恋』のメインヒロイン。


(あぁ……原作ファンの間で「聖女マーガレット」と呼ばれてたのも納得……!)

(発光してるもん。天然イルミネーションよ、あれ。)


その光を遠巻きに見ながら、私は壁に張りついていた。

黒の燕尾服にアクアマリンのネクタイ、髪は肩でまとめ、

見た目だけなら完璧な「群青の王子」。


――中身? ケーキを前にテンション上がる庶民女子ですけど何か。


その女神マーガレットの隣には、

ノルヴィス王国の象徴、完璧な美男美女兄妹トリオがいた。


長男で第一王子・ノルヴィス・ルイ殿下。

冷たく整った顔立ちに、圧倒的王族オーラ。

(原作ではカリーナに婚約破棄を叩きつける地獄の使者)


次男・ノルヴィス・ノア殿下。

白いスーツに金刺繍、微笑むだけで空気が薔薇の香りに変わる。

(こっちは傾国の美男子。存在が罪レベル。)


その隣には、ルイ・ノア殿下の姉・ルーナ王女。

笑顔が太陽の化身。もう三人まとめて芸術展。


(いやいや、なにあの一角!? 空気が違うんだけど!?)

(あそこだけ重力軽そう! 私、あの空間に入ったら蒸発しそう!)


そんな神々の輪を避けるように、私はそっとスイーツコーナーへ避難。


「今日は何にしようかな〜。

あ、レアチーズケーキ発見! チョコも捨てがたい……!」


結論:両方取る。

我慢は悪。命よりスイーツが大事(※今は多分逆)。


皿にケーキを山盛りにして頬張る私。

(ん〜〜〜〜っっ!! 幸せッ!!)


ああ、平和。今この瞬間だけは断罪フラグも死刑も消えた。

生きててよかった、モンブランの神ありがとう。


……が。


「やぁ! 君が噂の“群青の王子”かい?」


――声がした。

爽やかで、上品で、耳にかかっただけで恋が始まりそうな声。


え、だれ?


顔を上げた瞬間、そこには――

白スーツに金刺繍が映える、光属性のイケメン。

月のような微笑み、星のような瞳。


ノルヴィス・ノア殿下。


(なにこれ、光の化身!? 後光が眩しくて目が死ぬ!?)


思考が吹っ飛ぶ。言葉も出ない。

私、ただのスイーツ妖怪。相手、傾国の王子。格が違う。


「……???」(口パクすら危うい)


ノア殿下は柔らかく笑って続けた。

「君、ラービス・カリスくんだよね?」


(は、はぁ!? 名前まで知られてる!?!?)

(え、待って、私、あなたと初対面なんですけど!?!?)


「社交界では、かなり人気だよ。

群青の瞳に、誰にでも優しい微笑み……噂になってる」


(ちょ、嘘でしょ!? 私、壁際スイーツ専属部門なのに!?)


「スイーツ、好きなんだね」

「は、はい……」


「僕もだよ〜!」


――にっこり。


その笑顔、破壊力、核兵器。

世界がピンク色になった気がした。

(あ、これが天使の微笑みか……)

(私もう駄目。魂、浮かびかけてる。)


「良ければ、おすすめのケーキ教えてくれない?」

「えっ、あ、えっと、そ、その……全部おいしいです!!!」

(何この返答。IQ3の挨拶!?)


そんな私の挙動不審っぷりを、ノア殿下は楽しそうに見て笑った。


……その笑みを見た瞬間、胸の奥がくすぐったくなる。

なんだろう、この感覚。

前にどこかで――


(……いやいやいや、まさかね!?)


そう。この時の私はまだ知らなかった。


“あの時の金髪の美女”が、目の前のノア殿下だなんて。

そして、彼の方は――

“あの時助けてくれた美青年(=私)”が、女だとは露ほども思っていないことを。


運命の糸は、今、静かにねじれ始めていた。

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