家族に不審者扱いされました泣
あー……やってしまった!
仮面舞踏会で完全に悪目立ちした、私ことカリス(元カリーナ)です。
会場では噂が立ち、令嬢たちはヒソヒソ、令息たちは舌なめずり、
私の心はもうジェンガみたいにガタガタ。
(やばい! このままだと原作通りの断罪コースに一直線じゃない!?)
――というわけで、まず方針転換。
小さな茶会やら気軽なサロンやらには極力出ないことにした。
理由:出るたびに目立つから。
方針:隠れて生き延びる。
で、数年後。
久しぶりに本家に戻ったら、父上と兄上と再会したんだけど――
玄関で私を見た瞬間、二人の顔が完全にフリーズ。
父上が目をぱちくり、兄たちが互いに「お前誰だ?」って顔してる。
(おい、失礼すぎる。私、同じ血入ってるから!!)
仕方ないから正直に言った。
「ちょっと訳あって男になろうと思って!」
すると父上、怒られるどころか、
しおしおと泣き出してしまった。
「私の育て方が悪かったのか…」って。
ちょ、父上!? 泣かないで!!言い訳が重すぎる!!
兄たちは兄たちで二人してふくれっ面。
「かわいい妹が男になってるから、目の錯覚かと思った」
……お前らそれ言う資格あるの!?
「嫌だから生き延びるためなんだってば!」
説教→同情→軽い怒り→説得→了解。
気づけばなんだかんだで、父上と兄上は私の男装を認めてくれた。
(要するに慣れって怖い。家族の対応の速さ、侍られたいレベル)
そして数年が流れ、気づけば――
原作で婚約破棄イベントが乱立する“あの年”の一年前になっていた。
時間の流れ早すぎ問題。
明日は――運命の(?)大パーティーの日。
現婚約者ルイ殿下と、第二王子ノア殿下、そしてあの輝くヒロイン・マーガレットが顔を揃える場だ。
原作だとここでカリーナが目立ちまくって、
ルイに相手にされず、ノアに見下され、挙句マーガレットにワインをぶっかけて大炎上→断罪フラグへ一直線って流れだったっけ。
(つまり、明日は原作で最大級にヤバい日。カリーナなら確実に詰む。だから私が出る意味がある)
私は胸を張って宣言した。
「私はカリーナじゃない、カリスとして出席する!」
心の中で十字を切る。
正体は絶対に見破られない。
男として、令息として、群青の王子として振る舞うのだ。
目的はただ一つ、生き延びること。
(いやー緊張するな……。でも、ここでヘマしたら人生ゲームのゴールが灰になるからね!!)
服は準備済み。サラシ巻きも完璧(苦しいけど命が大事)。
低音ボイスでの会話練習も毎日のルーティンにしてる。
剣の指さばきもピカイチ。あとは――表情だ。
「感情を出さない」演技を完璧にしなきゃ。
――明日の目標:目立たない。
――裏目標(本音):誰にも惚れられないでほしい(切実)。
さあ、今夜は早めに寝て、明日に備える。
でも寝る前にもう一回鏡を見てしまう自分がいる。
鏡の中のカリスは、月光に照らされてちょっとだけ誇らしげに見えた。
(自己評価、高め安定)
「よし、明日は平穏無事に帰ってくること!!!」(鼻息)




