朝から修羅場です!?
んん……。
窓から差し込む柔らかな朝日がまぶしい。
穏やかな空気に包まれて、ぼんやりと目を覚ます。
(……なんか、ふかふかする。)
(……なんか、温かい。)
そして気づいた。
横に――傾国の美男子がいた。
「……え?」
(えっ、えええええ!?!?!?!?!?)
ノア殿下が私の横に!? ベッドで!? 同じベッドで!?!?どういうこと!?
私、昨日ソファで寝ちゃって……って、なんでベッド!?
服、服は―うん、着てる!よかった!
……いや、よくない!!状況がよくない!!!
静かに寝息を立てるノア殿下。
金の髪が朝日に照らされて輝いていて、寝顔まで罪。
(……綺麗。ほんとに綺麗。まつ毛、長い……。鼻筋、完璧。寝顔、国宝……。)
つい、頬に触れてしまう。
指先から伝わる体温に、胸が高鳴る。
「……好き、です。ノア殿下……」
――って、なに言ってんの私ぃぃぃ!?!?!?
落ち着け!!自爆する気か!?!?!?!?
とにかく!あらぬ誤解を生む前に!
そっと抜け出さなきゃ……!
……え? 動けない。
え、なにこれ、腰に何か……あ。
ノア殿下の腕が、私の腰をやさしく抱きしめてる。
(し、ししししかも力強い!どうしよう!尊死する!!)
と、そんな修羅場の真っ最中――
「ノア?起きてるかしら? あら?」
扉が開き、ルーナ王女が登場。
「え……えええ!?!?!?」
「…………」
一瞬の沈黙。
そして、王女がにっこり。
「お、お邪魔したようですわね〜♡ 失礼しますわ〜♡」
「ちょ、ちょっと待ってください!?!?ルーナ王女様!?助けてください!」
「まあまあ、照れなくてもいいのですわよ。男同士で愛し合っていたのでしょう?」
(ま、まさかの腐女子属性ぃぃぃ!!??)
(あっ、そうだった!今私、男装中=カリス!!)
「ち、ちがっ……違います!!そういう関係じゃ!!」
すると、ノア殿下が目を擦りながら、ゆっくりと目を開けた。
「……姉上?」
「殿下!説明してください!ルーナ王女が誤解を!!」
「誤解?」
「殿下と僕が……愛し合っていたと誤解されてるんです!!」
「へぇ……。まぁ、半分は合ってて半分は違うかな。」
「殿下ァァァァ!!??」
ノア殿下はベッドから起き上がり、さらっと髪を整える。
その姿がまた麗しいもんだから、余計に誤解が深まるやつ。
ルーナ王女は目をぱちくりさせて、にっこり。
「ふふっ、まぁ“そういうこと”にしておきますわね♡」
(いや絶対わかってないやつーーー!!)
ようやく去っていったルーナ王女。
――が、数分後。
「ねぇカリス様!」
ルーナ王女が戻ってきた。目が爛々と輝いている。
「次はぜひ、カリス様を女装させてくださいまし!!」
「……は?」
(出たぁぁぁ!!原作で有名な“女装好き姫”ルーナ王女イベント!!)
「ちょ、ちょっと、それは――!」
「殿下!止めてください!!」
ノア殿下は紅茶を飲みながら微笑んで、ひと言。
「僕は君の女装姿、見てみたいな。」
「殿下までぇぇぇぇぇ!?」
ルーナ王女に両腕を掴まれ、抵抗むなしくずるずると引きずられていくカリス。
(朝からテンションMAXの姫とノリノリの殿下……!)
(誰かこの修羅場から助けてくださいぃぃぃ!!)




