婚約成立!?ー書面化大作戦!
父上に知られたら即・勘当コース確定。
「婚約契約を殿下にふっかける」なんて、娘のすることじゃないって絶対怒られる。
──だからこそ、今回は極秘ミッション。
題して『婚約書面化作戦』!
(よし、冷静に!落ち着いて!相手は“推し”で“傾国の美男子”で“地上に舞い降りたルビーの化身”だけど、これはあくまで政治的契約!推し活ではない!!)
…そう自分に100回言い聞かせながら迎えた当日。
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ラービス家の応接室に現れたノア殿下は、
白シャツにストライプのベスト、ゆるく結んだ銀髪というシンプルな出で立ち。
──なのに、背景に薔薇とキラキラエフェクトが自動生成されている。
(え、Photoshop使ってる!?いや、素でこれ!?)
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メアリーと屋敷の書記たちが夜を徹して作り上げた「婚約契約書」を前に、
殿下は微笑みながらペンを取る。
「うん、カリーナ嬢が言ってた通りだね。ただひとつ、追記されてるところがあるね?」
「どこでしょうか…。?」
「ここ。“僕が君に会いに行くときは、事前にアポを取ること”」
(……やばっ。)
(バレたか〜!バレないようにこそっと追加してたのに!!これは、超重要案件!!
今、男装中の“カリス”状態で突然来られたら、
“あれ?君、カリーナじゃね?”→“身分詐称”→“死刑”のコンボ確定コースだもの…)
「ふふ。不思議な条項だね。まるで――」
ノア殿下がゆっくりと顔を近づける。
「カリーナの存在が“誰かに”知られたくないみたいだ」
(ひ、ひぃぃぃぃ!?!?!?!?!?!?!?)
(ちょ、近い!距離感バグってる!!呼吸困難で死刑より先に窒息死する!!)
「それとも、カリスの存在が知られたくないのかな?」
ピタ。
(…………詰んだ。)
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「な、なんのことでしょうか〜!?(棒読み)」
カリーナの挙動不審っぷりに、ノア殿下は小さく笑う。
その笑顔は柔らかいのに、どこか底が見えない。
「君の秘密を――いつか暴いてみせるよ」
(やめて!?推しに暴かれるとか、心臓も尊さで爆発するから!!)
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ふっと笑みを収めた殿下は、今度は真面目な顔で言った。
「君やラービス家のことは、王家の名にかけて守るよ。その代わり――僕の作戦に協力して欲しい」
「さ、作戦……?」
「ああ。1週間後にラーチェ伯爵の誕生日パーティーがある。伯爵は裏で子供の誘拐や臓器売買をしているらしい。
その証拠を掴むために潜入するつもりだ。その潜入に協力してほしい。
……“カリーナ嬢”ではなく、“弟のカリスくん”としてね」
(!?!?!?!?!?!?!?)
にやりと笑うノア殿下。
(……絶対バレてる。絶対バレてるわよねこれ!?!?!?)
「わ、分かりましたわ! カリスにも、しっかり伝えておきます!!!」
(推しと潜入とか無理。いや、無理どころか尊死する未来しか見えない!!!)




