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地獄イベントを回避したら、恋愛ルートが解放されました!?

(落ち着け、深呼吸。スーハースーハー)

(うん、落ち着け私。夢だ、きっと夢だ。推し様が私にプロポーズなんて、夢に決まってる)


だが現実は現実で、ノア殿下の声が、確かに私の耳の奥で響いている。

「僕の婚約者にならないかい?」って。


(いや違う、待って。原作ではノア殿下にだって私は嫌われてたのよ!?)

(ノア殿下の瞳に映るのはマーガレット嬢のはずなんだから、私がそこに入り込む余地なんてないのよ!!)


私の脳内が全パターンの混線でショートしそうになった時、ノア殿下は穏やかに笑って説明を続ける。


「騒がしいタイミングでごめんね。君に直接言いたかったんだ。

今、王国内は二つの派閥に分かれている。ルイ派と僕たちノア派。

正義を掲げている僕らはまだ力が弱い。君の家──ラービス家の後ろ盾が必要なんだ。だから婚約してほしい。」


(あ、政治ぃぃぃぃぃ!!?)


一瞬、私の全存在がコントになる。

ノア殿下、あなたまさかの政略結婚を申し込んでるのね!?

(推しにプロポーズされた!→違った、国の勝敗がかかってた!)という現代版コントが私の頭で上演される。


「というわけで、僕個人としては君を好きになったのも事実だよ。

だが政治的な意味合いでも、ラービス家は重要なんだ。」


(あぁもう私の恋する心と生存本能が内戦起こしてる…!!)


もしここでそのまま婚約を受け入れたら──

ノアルートの“運命”に突入する可能性がある。

原作知識だと、どのルートでもカリーナは散る。

「推しに殺される」って最悪の自虐プレイは拒否したい。


じゃあ、どうする!?

——と、脳内で無限会議を開いてみた私の“即席アクションプラン”が以下の通り。


カリーナ即席サバイバル会議(所要時間:3.2秒)


候補A:即答で断る

→ 結果:ノア激おこ or 政治的敵対確定。家も私も詰む可能性大。却下。


候補B:飛びついて受ける(ロマン)

→ 結果:ノアのルートへGO。推しに殺される可能性アリ。多分私泣く。却下(泣くかもしれないけど却下)。


候補C:時間を稼ぐ(保留)

→ 結果:安全に立ち回れる。しかし政治的圧力で居場所が無くなるかも。部分採用。


候補D:条件つきで受ける(交渉) ← 最有力!

→ もし承認されたら、婚約を利用して“守られつつ”生き延びる戦術が可能。


(よし、Dに決定!)


ノア殿下の顔を見つめる。彼は静かにこちらを待っている。

この男、笑顔は天使だけど、頭の中身は超理性的。議論の相手としては良質すぎる。


「殿下……」私は低めに息を吐いた。

(ここで滑ったら終わり。だって政治結婚の向こう側は法と慣例の世界だもの!)


「あなたの申し出に感謝します。ですが、いくつか条件がございます」


ノア殿下の瞳が、少しだけ鋭くなる。

(よし効いた。好奇心が視線に出てる。読める。)


「第一に、婚約という形はいただきます。ですが“形式的な婚約”であって、婚姻の権利を直ちに行使するものではありません。つまり“暫定的な保護”を目的とします。

第二に、私とラービス家への公的な保護を文書化してください。

もし私や家族が不当な断罪や処罰を受けるような動きがあれば、王家(ただし、あなた個人ではなく議会の承認を経る)をもって守ること。

第三に、私の自由を保障すること。あなたの個人的な道具にされないように、婚約の範囲は明確に定めます。

最後に、もし相互に合意があれば婚姻へと進むが、私の意思が最優先であること。」


(長い。でも重要。法律的条文みたいだけど、要は「守って、縛らないで」ってことね)


ノア殿下は私の提案を一言でまとめて、静かに言った。

「君は、ずいぶんと打算的だね」


(褒め言葉に聞こえたら勝ち)


「残念ながら私は打算で生きておりますの。

人は誰しも死にたくはありませんから。」


ノア殿下はふっと笑った。

「打算でもいい。君が生き残る方法を選ぶなら、僕は君を守る約束をするよ。

だが君も覚えておいて。政治と感情は時に相反する。僕が君を守るためには、君も時に協力が必要になるかもしれない。」



胸の中で小さな不安がくすぶる。だが同時に別の感情が芽生える。

「君が守る」という言葉の安心感は想像以上に温かかった。


私は深呼吸し、目を合わせて言った。

「条件の詳細は、書面で。今すぐ取り交わしましょう。口約束は信用しません。

そして、私は“自分の意思で”婚約を継続するかを決めます。これが守られるなら、正式に婚約を受けます」


ノア殿下は少しだけ驚いた顔をした後、静かに頷いた。

「書面で、ね。いいだろう。君の条件、承知した。

僕の側からも、君と君の家族を公に守る意思を示そう。議会の承認を得るため、まずは僕が動く。」


(おお、話が動いた…!)


だけど――心の中の小さな声がまだささやく。

(ノア殿下の「守る」にはどれくらいの代償があるんだろう?そして私の“推し”としての想いは、この打算にどう折り合いをつければいいの?)


だが今は一つ確かなことがある。

死刑ルートが今、ぐっと遠のいた。


よし、生き延びるための第一歩は踏み出した。

次は――書面作成だ。メアリー、弁護士(?)誰か連れてきて!私、契約社会に生きる女になるわよ!!


「では約束ね、カリーナ嬢」ノア殿下がにっこり微笑む。

(まただ……その笑顔で世界が溶ける。危険度:大)


私の胸は妙に騒いだ。

「はい、約束です。ですが、殿下…」


私は小声で付け加えた。

「私を“勝手に操る”ような約束は絶対にダメです。」


ノア殿下の表情が少しだけ柔らかくなった。

「分かってるよ、カリーナ。僕は君を操るために君に近づいたんじゃない。

君を守るために、君の隣にいたいんだ。」


(言葉はロマン。でもロマンだけで戦えるほど私は脆くない)


そう呟いて、私は心に誓う。

(ノア殿下の策士力に振り回されないように、私もちゃんと策を練るわ)

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