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その2

 ぜんまい式の父さんは案の定、どんどん古びていった。父さんと同じぜんまい式の団塊の世代たちは、時代の流れと共に現役を去っていった。社会は急激に変化していて、世界は目が回るほど発展していて、それはおもちゃにとっても同様だった。ぜんまい式は確実に過去の世代になっていった。そんな中で、父さんの動力部はまだまだ元気だった。思い切り巻いた状態なら、僕のアルカリもかなわないくらいだ。

「本物のぜんまいを使ってるからな、父さんのは。本物なんだ」

と、朝動き出すと自慢げにぎぃぎぃ言う。巻いてやんなきゃお仕舞じゃないか、と僕が口をとがらせて生意気を言うと、

「それでいいんだ、巻いてくれる人がいなくなったら、それでお仕舞い」

 父さんがこんな事を言うようになったのは、最近のことだった。

「巻いてくれる人がいての生涯であり、おもちゃなんだ。父さんはそれでいい。誰もいなくなって、誰も遊んでくれなくなって、それでも一人で、電池で動き続けているっていうのは、多分悲しいことだろうよ」

父さんは僕のぴかぴか光るLEDを不器用になでながら言った。

「おっと、お前は電池式だったな、すまんすまん」

 そうだよ父さん、でもぜんまい父さん、大好きさ。


(おわり)


【世代】

 我々の時代、我々の世代というものはあった。君たちの時代、君たちの世代というものもやがて訪れる。いつからだろう、それが確実に失われたと感じるのは。過ぎ去ったものと感じるのは。幸いにして、まだ私の年齢は「過去」にはなっていない。しかしやがて訪れるであろう引退の時を思う。私たちの時代も若さも、必ず失われてゆくものだからである。

 今回の作品は、メタファーとしての引退である。「父さん、すげぇ!」と興奮していた日々、最強にして最大のヒーローだった父親。子供にとって絶対だった父親。その像は宿命的に、子供の世界の拡大と共に失われ、最終的にその地位を去る。それはまた、次の世代でも繰り返される、喪失と引退の物語。それは悲しいことだろうか? 私はそうは思わない。いつか世界が失われることに比べれば。今回の作品の、あまりにも短絡的であまりにも内容のない締めくくりに、私は満足している。とかく深刻になりがちな未来と過去においては、馬鹿馬鹿しいほど単純な言葉が似合うと思う。


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