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慶太の初恋(5)(終)

慶太くんの話、エピローグでございます。

「よーし!今日は俺の奢りだ!みんな食べてくれ!」

俺達はいつものファミレスに来ている。

俺は今回手伝ってくれた皆にランチをおごることにした。さらば俺のお年玉…

「わ、私まで…良いの?」

そう言うのは由良川さん、洋介の彼女だ。

「大丈夫だよ。俺もなにもしてないし。」

と、駿太が言う。

いやいやいや…

「由良川さんも駿太も坂田さん側からフォローしてたんでしょ?聞いたよ。」

「そ、そうだよ!私、そのお陰で西郷くんとお付き合いが出来るんだから...!」

「坂田さんもそう言ってるし、大人しく奢られてくれ!」

2人は納得した後、「じゃあ、ありがたくいただく」と言って、メニュー表を見始めた。

すると、涼平が話しかける。

「なーなー、それより…」

「それより?」

「なーんか2人、他人行儀じゃねーのぉ?」

ニヤニヤしながら言ってきやがる…解ってはいるが、付き合い始めたからいきなり名前呼び…つーのもなんか恥ずかしいんだよな…

「け、慶太!」

「うえっ!?」

「はい、呼んだよ。次は慶太の番。」

思考が停止する。…ここ最近停止してばっかだな俺。

…覚悟を決める…!

「れ、れ、…玲衣奈…さん。」

「呼び捨て。」

「はい…玲衣奈。」

なんか坂…玲衣奈から圧を感じる…

「玲衣奈ちゃんは覚悟を決めたときは強いよー。」

「そうそう、ここに受験するときも先生の制止を振り切ったからね。」

「『もっと上に行ける!』って言われてたらしいけど、一蹴したって聞いたよ。」

梁瀬さんと増田さんがケラケラ笑いながら話している。

洋介が俺に言う。

「結構尻に敷かれるんじゃない?まあ、慶太は調子に乗りすぎるところがあるし、ちょうど良いと思うよ。」

「洋介くんもね。」

由良川さんがさらっと言う。おい洋介、目をそらすな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


しばらく話をしているなかで、俺は皆に気になることを尋ねる。

「そもそも、どういう経緯で話が広がったんだよ。」

「どういうこと?」

洋介が聞く。

「俺は洋介、駿太、涼平にしか言ってなかったのに、いつの間にか協力者が増えてたんだよ!何でこうなったんだよ!」

少し場が静かになった後、洋介が話す。

「簡単に説明するよ。まずは慶太側からね。」

洋介はこほんと咳払いをしてから話を続ける。

「まずあの日の翌日、俺は情報収集をした。もし坂田さんにお相手がいたら大変だからね。そしたら…」

洋介は駿太を見た。突然話を振られた駿太は驚きながらも話し始める。

「…あの日よりも前、小春が坂田さんから恋愛相談を受けていたのを聞いたんだよ。その【相手】と俺が仲が良いから協力してくれって…」

待って、そのお相手って…

「まあ、慶太のことだったんだよね…で、涼平に話し掛けたんだよ。体育祭の実行委員だったから。でももう慶太が話していたんだよね。」

洋介が話す。

「それで、私の出番ってわけ。」

玉川さんが話に入ってきた。玉川さんは話を続ける。

「富野くんと宍戸くんが話していたのを聞いて、私は両片想いを確信したの。だから上手い感じに坂田さんと西郷くんをくっ付けるように、男女合同で出来る競技に坂田さんを誘ったの。」

「…で、俺と涼平がそれを察して慶太を誘ったわけ。」

と、洋介が付け加える。

「最初からグルじゃなかったの!?」

俺の発言に3人は頷く。その割にすげー息の合った動きだったけどな…

「…まあ、そこから先は俺達は特になにもしてないな。文化祭の時は俺達はただの野次馬だったしね。」

洋介の話が終わる。すると、今度は増田さんが手を上げた。

「はいはーい!じゃあ、次は玲衣奈サイドね!中学での話は…聞いたでしょ?」

「う、うん。」

「で、玲衣奈の幼馴染みの私と…塾が一緒だった小春が恋愛相談を受けていたってわけ。」

…今更だけど、なんかこれ恥ずかしいな。俺は良いけど、さ…玲衣奈は大丈夫かな?

ふと見ると、恥ずかしそうにはしているが、止めようとする気配はない。

俺は玲衣奈に小声で聞いてみる。

〔ねえねえ、これ、俺が聞いて良いやつ?〕

〔大丈夫だよ。恥ずかしいけど、さ…慶太に聞いてほしいから、あの時、私が伝えきれなかった思い…あの時はパニック状態だったし。〕

にへっと笑う玲衣奈を見て俺は思う。可愛い。

ふと、話し声がなくなっているのに気付く。顔を上げると、皆がニヤニヤしながら俺達を見ていた。

「イチャイチャすんのも良いけど、ちゃんと増田さんの話を聞いてあげろよー。」

涼平がニヤニヤしながら言ってきた。

「あ、ああ、ごめんごめん。つ…続けて良いよ。」

俺は増田さんに言う。こうイジられると恥ずかしいな…

増田さんは話を再開する。

「中学の時はそこまで進展はなかったけど、高校で同じクラスになってから、再燃したみたいで...」

「それで、私より恋愛に詳しそうな百合奈を仲間に加えたわけ。ねえ、西郷くん。玲衣奈ちゃんがナンパされたこと、覚えてる?」

梁瀬さんが話に入ってきた。…ん?ナンパされた時ってあの時だよな?ま、まさか…

「あっ!仕込みとかじゃないよ!ただ…ちょっと良い感じにしようとして失敗しちゃった感じ…」

俺の頭にクエスチョンマークがたくさん発生する。

その様子を察してか、由良川さんが説明を始める。

「まずは関わりを持たせようと思って、小春ちゃんと坂田さんで一緒に遊んでる所に、西郷くん達を鉢合わせようと考えたの。小春ちゃんと金山くんだったら連携もとれるし…でも…」

「駿太達は駅前のショッピングモールに行くって言ってたのに行き先変更してファミレスに行くわ、玲衣奈ちゃんは頑なに1人で行くって言うわ…」

「いや…その前々日の件があったから...」

「だ、だって…小春ちゃんに私の趣味に付き合わせるわけにはいかないし…」

梁瀬さんの話に駿太と玲衣奈が弁明をする。

まあ、しゃーない。駿太は梁瀬さんと結ばれたことがあったし、玲衣奈は…うん!同じ趣味じゃ無い人に付き合わせるわけにはいかないからな!仕方ない!

梁瀬さんは話を続ける。

「別に良いじゃん!付き合わせてよ!そのせいで玲衣奈ちゃんは厄介なナンパにあったんだから!駿太から聞いたときはビックリしたんだから!」

「で、でも、そのお陰で慶太と付き合えたから…!結果良ければすべて良し…!だよ!」

「ま、まあ、それはそうだけど…」

「はいはい、続きは?」

由良川さんは梁瀬さんと玲衣奈の会話を止めた。

梁瀬さんはテヘッと笑いながら話を再開した。

「次は体育祭かな?…とは言っても、体育祭以降は大体西郷くんが知ってる通りだから、あんまり話すこと無いんだよね。」

「そうだね。精々私が【温かく見守る会】を設立したくらいかな…?」

玉川さんが話に入ってくる…ちょっと待って。

「その会って玉川さんが作ったの!?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「初耳だよ!!!」

玉川さんが「言ってなかったっけな~…」と呟きながら、設立の経緯を話す。

「そもそも、体育祭以降に2人の距離がぐんと近付いたの。これは西郷くんも坂田さんも自覚はあると思う。」

俺達2人は頷く。確かに、体育祭のお陰で連絡先を交換できたし、話す機会も増えた。

玉川さんは話を続ける。

「それでうちのクラスのほとんどは察し始めたの…でも、問題があった…」

「も、問題って…?」

「西郷くんのことが好きな女子が他のクラスにかなりいたの…とは言え、私たちは2人の仲を壊したくない…そこで、クラスで協力して牽制することにしたの。これが設立の経緯。」

「な、なるほど...」

俺ってそんなにモテてたのか…知らなかった…

「まあ慶太は顔が良いからね。モテるだろうとは思ってたよ。まあでも…」

洋介はそう言い、玲衣奈をチラリと見る。

彼女(坂田さん)ほど真っ直ぐ慶太を想ってる子は居なかったよ。」

洋介の言葉を聞いて、俺は玲衣奈を見る。顔が真っ赤だ、可愛い。

「可愛い。」

やべ、心の声が出た。玲衣奈は俺の顔を見て言う。

「慶太は格好いいよ。」

俺達の回りを甘い空気が漂う。幸せ。

「かーっ!甘い甘い!!」

涼平はそう言い、ブラックコーヒーを飲む。

「苦い!!!」

慌てて砂糖とミルクを入れる涼平を見て俺は思う。

何やってんだお前。

甘くしたコーヒーを1口飲んだ涼平が俺に話し掛ける。

「それにしてもよー…お前、あの誘い方はやべーぞ。」

「え?何が?」

「文化祭の誘い方だよ。駿太と洋介は彼女と回るから俺は君と回りたいだなんて…実質告白じゃねーか。」

えっ。

俺は記憶を集める。確かに、言葉は違うが同じようなことを言ってた…

「そ、それで皆あんな反応だったのか!!!」

「今気付いたのかよ!遅せーよ!」

そ、それで涼平はあんなことを言っていたのか…!

は、恥ずかしい…!

「因みに、文化祭の間もちょこちょこそう言う言葉はあったよ。」

「えっマジで!?」

増田さんの話に俺は驚愕した。

梁瀬さんも話に入ってくる。

「そうそう、5組の人が悔しすぎて血の涙を流していたって。」

「5組の人って?」

「占い師くん。」

俺は納得した。最後のディスは嫉妬だったのか…

占い師くんに幸あれ…


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ひとしきり話した後、俺達は3手に別れた。俺と玲衣奈、女子達、男子達でだ。

女子はショッピング、男子はボウリングに行くみたいだ。俺達はどうしよう…

「ねえ、ちょっと公園に寄らない?」

玲衣奈の提案に俺は乗ることにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「夕陽…綺麗だね…」

色々話してたらいつの間にか夕方になっていた…こうやって話すだけでも楽しいな。

洋介が言ってたな…好きな人だと一緒にいるだけでも楽しいって…やっぱり、俺は玲衣奈のことが好きだ。

「ねえ、け、慶太…やっぱり名前呼びってちょっと恥ずかしいね…」

「ま、まあ、確かに少しこそばゆいけど…俺は止めないよ、玲衣奈。」

ちょっとカッコつけすぎたかな…

「ね、ねえ、慶太。こっち向いてくれる?」

「ん?どうしたの?」


瞬間


唇が触れる。


えっ…


唇同士が離れた瞬間、やっと俺は理解した。

「えっ、あっ、うっ、…えっ?」

「告白は先を越されちゃったから、これ(キス)は私からねっ。」

イタズラが成功したような笑みで玲衣奈は話す。こんな一面もあったんだな…結構知ったつもりだったけど…もっと知りたい、彼女(玲衣奈)のこと。

「ねえ、玲衣奈。」

「なあに?」


俺はそっとキスをした。


頬に。


「…唇で良かったのに。」

「…ひよりました…」

「ふふっ。そんな一面あったんだ。」

「お互い様だと思うけど?」

「もっとお互いのこと、知っていこうね。」

「末長くお願いします。」



綺麗な夕陽の中、俺達はもう一度キスをした。

まだまだ俺達の付き合いは始まったばかり。

これから、色々楽しんでいこう。


2人で。


ーーー公園の出来事をたまたま見ていたクラスメイトの弟から一気に学年中に話が広がることを、俺達はまだ知らない。

これにて、慶太の初恋は終わりです。

次回は別の人の話になります。お楽しみに!

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