バレンタイン特別編2026(後編)
バレンタイン特別編、後編です!
今日はバレンタイン。そのためか今日はやけに周りがソワソワしている。
(俺は朝もらったけどな。)
俺…金山 駿太は今朝、幼なじみであり、今は恋人同士である梁瀬 小春にバレンタインのチョコをもらった。
今年は生チョコとトリュフチョコだ。朝にちょっと食べたが、美味しかった。
小春曰く、今年はあまり手間がかかっていないと言っていたが、料理が苦手な俺からしたらすごいものだと思う。トリュフチョコって外と中の食感が違うけどどうやって作るんだろう?
そう思いながら、俺は教室に入る。
「おーっす。」
「おはよう、駿太。」
「お、お、おう!駿太!」
俺は友人である富野 洋介と西郷 慶太に挨拶する…が、慶太がおかしい。
「…洋介、何で慶太はあんなソワソワしてんの?」
「ああ、バレンタインだからじゃない?」
「ああ、なるほど。」
「逆に!何でお前らはソワソワしねーの!?」
俺と洋介の会話に慶太が割り込む。いや、何でと言われても…
「俺は朝もらったしな。家隣だし。」
「俺は放課後デートするんだ。だから慌てる必要はないし。」
「くそーっ!俺も玲衣奈からチョコ貰いたい!」
慶太の心からの叫びが教室に響き渡る。いや、うるせえ。
「慶太。」
「なんだよ洋介。」
「後ろ。」
「ん?…あ…玲衣奈…」
慶太の後ろに、顔を真っ赤にした坂田 玲衣奈さんがいる。そりゃそうだ。同じクラスだし。
坂田さんと一緒にいた玉川 遥香さんはめちゃくちゃ笑っている。実際当事者じゃなかったら面白いわこれ。
「け、慶太…ほら、あげる…から…あんまり大きな声を出さないでね。」
「は、はい…ありがとうございます…」
新参カップルのぎこちないチョコ渡しが終わると、坂田さんは慶太に何か耳打ちをした。
慶太の顔が途端ににやける。
(ほぼ確実にデートの誘いだろうが、後で問い詰めてやろう。…あ、そうだ。洋介のデートの事も聞かなくては。参考にしたいし。)
慶太の話と洋介とその彼女、由良川 百合奈さんとのデートの話…話せば長くなりそうだな。昼休みに聞こう。
そう思い、俺は自分の席に戻るのであった…
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「…甘い…」
校則が緩めな我が藍丹高校では、朝と昼休み、放課後がチョコを渡す絶好の機会となっている。
今は昼休み。俺、福谷 恭史郎は甘ったるい空間と化した廊下を歩いている。特に目的はない。
(至るところでチョコを渡してんな…まあ、俺には関係ないけど。)
生まれてこの方、モテたことの無い俺にはこのイベントは無縁の物だ。まあ、クラスの女子が適当に配っている義理チョコくらいは貰っているが。
後は、部活のマネージャーくらいだ。まあ当然これも義理チョコではあるが。
(本命チョコ…貰いたい気持ちはあるんだけどな。)
俺も男だ。モテたいとまでは言わなくとも、本命チョコは欲しい。まあねだるものでもないけど。
(宍戸の野郎は奥島から貰うだろうし、大宅のやつも…多分鷺谷から貰うだろう。大宅は多分気付かねーけど。)
俺が所属するサッカー部には3人、同学年の女子マネがいる。で、その内の1人…奥島 優子は俺の小学校からの同級生である宍戸 涼平と恋人同士である。
残り2人には彼氏はいないものの、それぞれ想い人がいる。
鷺谷 瑠美は中学からの同級生である大宅 公徳のことが好きみたいだし…もう1人の…あ。
あの背の高い茶髪は…俺とは幼少期からの付き合いである柳木 充暁だ。
俺は声を掛けようとして近づくと、急に後ろから声をかけられた。
「福谷さん、今は駄目です。」
「…奥島。…と、鷺谷も。何で?」
「今、柳木さんは柚芽花さんとお話し中です。」
あ、なるほど、察した。
そう、最後の1人、北條 柚芽花は柳木のことが気になっていると聞いていた。…んで、柳木もまんざらでもない…と。
遠くから2人を見ていると、何だか表情が明るい。どうやら2人は結ばれたようだ。
「俺ってどうすればモテるのかな…?」
ふと口に出てしまった。
俺の呟きに奥島が答える。
「ナンパを断られても、大声を出したり無理に腕をつかもうとしなければ良いと思います。」
「止めて!刺さないで!反論できないから!」
「事実ですもんね。」
「ぐはああぁぁ…」
「くーやん(福谷)、ドンマイ。」
「慰めないでくれ鷺谷、余計辛くなる。」
俺は廊下でしゃがみこんだ。
俺は中学の時、上手くいかないイライラで、別の中学だった奥島にちょっかいをかけて、周りに迷惑をかけたことがある。
俺がしょぼくれていると、奥島が話しかけてきた。
「…福谷さん、たまには周りを見るのも大事ですよ。」
「え?何て…?」
「私に言えるのはそれだけです。行きましょう、瑠美さん。では、また部活で。」
「またねくーやん!…待ってよ優子ちゃん!」
そう言って奥島と鷺谷は帰っていった。
周りってなんだろう…分からんな。
…そういえばそろそろ昼休みが終わるな。教室に戻るか。
俺が廊下を歩いていると、後ろから女子に話しかけられた。
「なーにキョロキョロしてんの?」
「…なんだよ凜々花か。」
「なんだって何よ。」
そう言って腕を組むのは河内 凜々花。幼なじみ…ではなく、中学からの趣味友だ。
「あ、そうだ福谷、これやるよ。はいチョコ。」
「…なんだよこれ。」
「クラスに配ってたら余ったんだー…だからあげる。」
「余りかよ。…まあ、良いや。ありがたく貰うよ。サンキュ。」
「後で感想聞かせてね?」
「おーう、わかった。」
そう言って俺と凜々花は別れた。
袋を開けると、ガトーショコラ。
1口食べる。甘過ぎなくて結構俺好みだ。
(うん、旨いな。)
そう思いながら、俺は1人で教室に戻るのであった…
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「ん…しょっ…っと。毎年毎年多いな…」
俺は今、大量のチョコを運んでいる。…と言っても、俺のではない。
今運んでいるのは俺…三浦 海斗の幼なじみである瀬井山 寛信に宛てられたバレンタインチョコだ。
寛信は大変モテるのだが、実は女性が苦手である。なので、直接渡すと断られると思った女子が、何故か俺を介して渡そうとしてきたのだ。
(まあ、寛信が困らないんだったら良いか。)
と思っていた当時の自分をぶん殴りたい。
(…やっぱり、輝星と悠希にも手伝って貰えば良かったな…)
同じ中学である綾瀬 輝星と志田 悠希、2人は寛信のチョコを運ぶ俺を見て、「手伝うよ。」と言ってくれたが、断った。だってコイツらといると余計に増えると思ったから。あの2人もモテるんだよ。
俺がゆっくり廊下を歩いていると、前から女子が話しかけてきた。
「かーいっと君っ!」
「あ、碧さん…」
声をかけてきたのは、増田 碧さん。同じクラスで…その…俺の彼女。なんかちょっとこそばゆいな。…ふへへ。
…って、何か微妙な表情をしている…何故?
そう思うと、碧さんは少し口を尖らせながら言った。
「…ふーん…海斗くん、モテるんだ。」
え?…あっ。
「い、いやいやいやいや!?違うよ!これは全部寛信へのやつ!」
何か勘違いしてる!?俺がそんなにモテるわけ無いじゃん!
…って言おうとしたが、止めた。俺を選んでくれた碧さんに失礼だと思ったから。
…とはいえ、どうやって弁明しよう…
そう思っていると、碧さんがクスクス笑い出した。
「くっ…ふふ…ごめんごめん。分かってるよ。瀬井山君のでしょ?手伝うから、ほら。」
「あ、ありがとう…?」
そうやって俺と碧さんはもらったチョコを取りまとめるために空き教室へ向かった。
歩いている途中で、碧さんの友人の話になった。どうやら佐々木 麻里佳さんは輝星にチョコをあげ、淡倉 光咲さんは悠希とデートをするらしい。
みんな今日を楽しんでいるな…と思っていると、ふと思い出した。
「そういえば寛信から聞いたんだけど、藤村と峯が付き合い始めたんだって…っていうか、今さらかよ!って感じだけど。」
「…?」
「え?ちょっと待って…」
「…誰だっけ?」
「藤村 将次と峯 晶!同じクラスの!」
「…ああ!あの年中イチャイチャしてる!」
「言い方!」
「…え?付き合ってなかったの?あれで?」
「そうみたいだよ、それでね…」
そうして喋っていると、空き教室に着いた。さあ、ここからが本当の勝負だ…!
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「終わった…」
「瀬井山君モテすぎじゃない!?多すぎ!」
作業が終わった俺達は教室でゆっくり談笑をしている。
ふと、碧さんがなにかを取り出した。…チョコだ。
「…ハッピーバレンタイン。これ、本命だから。」
「…ありがとう!碧さん!嬉しい!」
袋を開けると、生チョコとトリュフチョコが入っていた。まずは1個を食べる。
「美味しい!」
「…ほんと?」
「本当!甘くて美味しいよ!」
「いや、でも、そんなに砂糖を入れてないからそこまで甘くないかもしれないし…」
そうやって遠慮がちに言う碧さんを見て、少しいたずらを思い付いた。
「本当に甘くて美味しいよ。ほら…」
チュ…と唇が重なる音がする。
「ね?甘いでしょ?」
「…」
碧さんの顔が紅く染まる。可愛い。
「…普通は逆でしょ!?」
「…何が普通かは分からないけど。」
「そう法律で決まってるの!」
「そんな法律は無いよ。」
碧さんはかなり混乱しているようだ。
「海斗くん、こっち向いて。」
「え?」
チュ…と再び唇が重なる音がした。
「…お返し!」
そう言って碧さんはニカッと笑った。
…ホワイトデー、頑張ろう。
今まで恋愛とは縁もなかった俺にとって、今年は最高に甘いバレンタインであった。
特別編おしまい。
藍丹高校に通うキャラを一通り出してみました。
いつか、彼らを深掘りしてみたいなと思ってます。
PS.瀬井山君は今回のお礼でアニメ映画のチケットを2枚渡したらしいです。そう、2枚です。




