真逆なふたりのお付き合い(涼平編)(5)
涼平くんの話、第5話です。
「…早すぎた。」
今日は奥島さんと映画を観に行く日だ。
映画は午後3時から…ということで、午前中はスポーツ用品店を回ろう!と、午前10時に待ち合わせをしたんだけど…
今は午前9時20分である。
「遅刻は駄目だけど…早く着きすぎるのもヤベーよなー…」
どれだけ楽しみにしてたんだ俺は。そもそもまだ店開いてねーんだよ!
「ふー…ぶらぶらしながら暇潰しするか…ん?」
あそこでなんか揉めてる…あれ?まさか…!
俺は揉めてる方へ駆け出した。
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「…申し訳ありません。」
「いやいや…謝らないでよ。あのオッサンが悪いんだし。」
「私、何故だか絡まれやすいんですよね…今日は目立たない格好をしてきたんですが…」
俺は奥島さんの格好を見る。ダボっとした白パーカーにこれまたダボっとした黒いズボン。黒のキャップに伊達メガネ…色合いは地味だけど...
「いや可愛いな。」
「へ?」
「…」
「…」
「俺声に出してた!?」
「だ、出してました…ありがとうございます…?」
恥っず!相手の気持ちも考えずにその発言は駄目だろ!
…困惑しながら照れてる奥島さん可愛いな…流石に今回は口に出さない。好きでもない男に可愛いって何回も言われるのは嫌だろうしな!
「…と、ところで宍戸さん。約束の時間よりずいぶん早いですが…」
「ああ!今日が楽しみすぎて早く来ちゃった!」
「…そ、そうですか…!わ、私も…!」
「奥島さんも?」
「え、映画がですよ!」
「うん!そうだよね!俺も楽しみ!」
「…そ、そうですよね…」
「?」
なんか奥島さん、急にトーンダウンしたな…映画がよっぽど楽しみみたいだし、寝不足なのかも。
…にしても…楽しみって言われた瞬間、舞い上がりそうになってしまった。映画だよな、映画。…言ってて悲しくなるな。
…さておき!せっかくの奥島さんとお出掛け出来るチャンスなんだ!頑張るぞ!
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「…これは!…食べたあとに体重が気になる味ですね…」
「ハンバーガーを食べてその表現する人初めて見た。」
というわけで、俺達は今フードコートでハンバーガーを食べている。俺はテリヤキ、奥島さんは期間限定バーガーだ。
「それにしても、意外だね。」
「?」
「いや…奥島さん、ファストフードとか食べたこと無さそうだし。」
「流石にありますよ。確かに父は社長ですし、人より裕福な家庭ではあると思いますが…」
奥島さんは社長令嬢だし、こういう所は慣れていないかなと不安だったが、杞憂みたいだ。まあ、言われてみれば兄である志郎さんも普通にポテチ食ってたしな。
「父がこのような食べ物を好むんです。幼少期に制限されていた影響…と言っていました。ですので、子どもたちには色々なものを食べさせたいと思ったそうです。もちろん、健康を害さない程度にですが。」
「そうなんだ。…良いお父さんだね。」
「ええ。自慢の父です。」
そう言う奥島さんは、とても優しい笑顔をしていた。
休日の騒がしいフードコートであったが、何だか落ち着いて過ごすことができた。
…落ち着きすぎて、映画の時間がギリギリになってしまったけどね。間に合って良かった!
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映画を見終わり、俺達は帰路に着く。
「いやー…良かった…!」
俺が身体を伸ばしながら呟くと、奥島さんも口を開いた。
「ええ、終盤のあのシーンは心に響きました。」
「あれって本当に実話なんだよね?」
「そうみたいですね。実在するサッカーチームの話らしいです。…昔過ぎて詳しいことは知りませんが。」
「多分公徳だったら知ってるかな?あいつサッカーオタクだし!」
「そうなんですね。少し聞いてみたいです。」
「いやー…でも、あいつに聞いたら話が映画より長くなりそうだな…」
「そ、そんなに話すんですね…」
「そう!だからあいつとサッカー談義する時は上手く止める技術が必要なの!」
「なるほど…それで宍戸さんはトラップが上手いんですね。」
「関係無くない!?」
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「家まで送っていただき、ありがとうございます。」
「いやいや…良いよ。もう暗くなってたしね。」
奥島さんの家の前で俺達は少し喋っている。
もうすぐ日の入り、空はほとんど暗くなっている。
遅くなりすぎたかな…と思ったけど、メイドさんがすっげえニコニコしてるから多分大丈夫…何でそんなにニコニコしているんだろう?
…と、あまりメイドさんを待たせるのも良くないな!
「奥島さん。今日は楽しかったよ。一緒に観に行ってくれてありがとうね。」
「い、いえ…私も楽しかったです。…ありがとうございます。」
「ね、ねえ…奥島さん。」
「?どうかされました?」
「…」
「?」
や、ヤバい…緊張する…!でも、言わないと!
「ま、また…!一緒に出掛けても…良い…かな…?」
「ええ、良いですよ。」
「…え?」
「ですから、良いと言ったんです。また遊びましょう。」
「…」
「…?宍戸さん?」
「…よっしゃーっ!」
よっしゃーっ!次も遊んで良いって言ってもらえた!これは1歩…いや、2歩か3歩前進したんじゃないか!?嬉しい!
俺は奥島さんに向かって話す。
「ありがとう!また会おうね!」
「え、ええ…また…」
そう言って俺達は別れた。
俺はるんるん気分で帰路に着く。
この調子で頑張るぞ!
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「なあ、公徳。」
「どうした?宍戸。」
「時が経つのは早いよな。」
「全くだ。もう県大会だ。」
俺達はいつの間にか2年生になっていた…いや、もちろん記憶はあるぞ。3年生の卒業、新入部員、そして地区大会の優勝…色々あったけど…
(奥島さんに会う機会が無い!)
MANEのやり取りはしているものの、違う中学の選手とマネージャーじゃ、タイミングが合わない。現に今の県大会、会場は一緒なんだけど全然会えない…
とまあ、俺が密かに凹みながら1人で歩いていると、他校の女子に話し掛けられた。…誰?
「す、すみません…!宍戸さんですよね?」
「う、うん…そうだけど?」
「わ、私!宍戸さんのファンなんです!」
「え?」
ファ、ファン!?俺普通の中学生だよ!?そんな俺にファンだなんて…
そう思っていると、女子が俺に向かって話し出した。
「あ、あの!私!宍戸さんのことが好きなんです!付き合ってください!」
…へ?付き合って?え?
…俺告白された?初対面の子に?
いやいやいや…流石に初対面で告白はまずいよ…しかもこんなに人がいるところで…
…
…
俺同じことしてるな。
ヤバい…黒歴史を思い出してしまった…!
客観的に見たらわかる。あれ相当やべえ事してたんだな…
「あ、あの…」
女子の声で俺はふと我に返る。女子は返事を待っているみたいだ。
俺はその子に返事をした。
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(はあ…俺あの時相当やべえことしてたんだな…)
奥島さんに初対面告白をしたことを思い出し、更に凹んでいると、またもや「あの…」と女子に話し掛けられた。
「あん?…うえっ!」
振り向くと美少女がいた。いや、奥島さんだった。いや、美少女なのは間違い無いんだけど…うん、俺今相当焦ってるな。
「ひ、久し振り…奥島さん。」
「お久し振りです。宍戸さん。」
「…」
「…」
少し沈黙が走ると、奥島さんが俺に話し掛けてきた。
「あの…さっきの女性…可愛かったですね。」
「え?…えーと…初々しかったね。」
きゅ、急にどうしたんだ?奥島さん…
「…まあ、良いです。それで?どうされたんです?告白の返事は…」
「ああ、断ったよ。好きな人がいるって。」
「へ?」
奥島さんはすっとんきょうな表情で俺を見る。
…あれ?俺今告白みたいなことしなかった?
…またやっちまった…
俺はまたもや初対面告白を思い出しで凹んでいると、奥島さんが話し出した。…表情全く変わらないな…冷静だ…!
「ま、ま、ま、まあ、それは良いとして…宍戸さん。少し落ち込んでます?」
「え?…わかる?」
「ええ。宍戸さんは分かりやすいですから。」
そう言えば俺は分かりやすいんだったな…
なんとか誤魔化したいが、多分無理なので俺は正直に話し出した。
「その…俺、奥島さんに結構ヤバいことしてたんだなーって思ったら…ちょっと気落ちしちゃって…」
「ああ、そう言うこともありましたね。終わったことですし、特に気にしてません。」
「そ、そうなんだ…良かった…!」
「それに…」
「それに?」
「い、いえ…何でもありません。それより、宍戸さん。」
「どうしたの?」
「…あの。全中が終わりましたら、一緒に国体を観に行きませんか?」
「え!?良いよ!…あっ!でも…遠いな…」
「あ、そこは大丈夫です。父が送ってくれますので。」
「ああ、それは安心だね。…ん?」
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「あ!君が宍戸君だね!優子と志郎が言っていた…お!本当に金髪だ!お揃いだね!…僕は奥島 優貴!よろしくね!」
「は、はい…今日はよろしくお願いします。」
「お父様、宍戸さんが驚いています。あまりグイグイ話し掛けないでください。」
「おお!悪い悪い!じゃ、後ろに乗ってくれ!」
奥島さんのお父さん…優貴さんの勢いに圧倒されながらも、俺達は車に乗り込む。…うわあ、めっちゃリラックス出来そうなシート…!
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「す、凄かったですね!」
「うん!今年もハイレベルだった!俺も来年は…!」
めちゃくちゃ面白い試合だった…!手に汗握る一進一退の攻防…燃える!
俺と奥島さんが話していると、優貴さんが俺達に話し掛けてきた。
「ごめん優子、少しの間宍戸君を借りるね?」
「へ?」
「ああ、はい。良いですよ。」
「ありがとう!じゃ、行こうか、宍戸君。」
「は、はい…」
そうやって俺と優貴さんはベンチの方へ歩いていった…
あれ?この展開、前もあったような…
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「宍戸君、はい、どうぞ。この缶のカフェオレは中々美味しいよ。まあ、うちのなんだけどね!」
ハッハッハと笑う優貴さんを横目に俺はカフェオレを飲む。ブラックはまだ苦くて飲めない。…うん、美味しい。
「それでね?宍戸君、話があるんだけど…」
「えっ!は、はい!」
優貴さんは真剣な目で俺を見る。な、なんだろう…
優貴さんは、ゆっくりと口を開いた。
「…優子の学校生活を充実させてくれたお礼を言いたいんだ。」
「え?」
「…優子は、あまり感情が表情に出ない子だったんだ。私たち家族や昔からの友人は理解しているが、中学からの同級生にとっては中々近寄りがたい雰囲気があったみたいなんだ…特に、サッカー部は中学からの同級生が多いみたいでね。」
「そ、そうだったんですね。」
確かに、出会ったばかりの奥島さんはクールな雰囲気だったな…でも、最近は色んな表情を見せてくれるな…
優貴さんは話を続ける。
「でもね、君がたくさん話し掛けてくれたお陰で、優子のことを理解してくれる人が増えたんだ。優子が楽しそうに学校生活を話す姿を見るのが嬉しくてね…だから、君にお礼を言うよ。ありがとう。」
そう言って、優貴さんは俺に頭を下げた。
「これからも、娘と仲良くしてやってくれ。…あ、でも、娘はまだあげるつもりはないからね!」
…やっぱり優貴さんと志郎さんは親子なんだな…
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帰りの車内、奥島さんに話の内容を聞かれたが、俺は言わないように頑張って耐えた。優貴さんが「恥ずかしいから内緒にしてて。」と言ったからだ。
奥島さんは少し複雑な表情だったが、なんとか諦めてくれた…助かった…!
中学生活もあと1年と数ヶ月、部活もあと1年だ。
今年は行けなかった全中、来年こそは!
そして、恋の方もがんばるぞ!おーっ!
次へ続く!
はい、まだ続きます。次回!(多分)涼平編は最終回!




