真逆なふたりのお付き合い(涼平編)(3)
涼平くんの話、第3話です。
今日は合宿!俺達藍丹中と欧天中は毎年、地区の新人戦の直前に合宿を行う。
とはいえ、この2校は大体の場合決勝で戦うことになるので、形式的には大会前の調整のようなものになっている。
…っていうか、今後1年大会やら練習試合やらで関わることになる上に、同地区ゆえに高校でも関わる可能性があるから、今のうちに交流しておけ!ってことらしい。顧問の先生が言ってた。
(まあ、俺は助かるけど。)
欧天中に通う奥島さんに会える貴重な機会だ。少しずつ信頼を取り戻していくぞ!
いや、連絡先とか聞けば良いじゃんとは思うけど、勇気とタイミングの問題で交換が出来ていなかったりするのだ…
…と、言うわけで。今回の裏目標は奥島さんと連絡先を交換することだ!
もちろん、大会直前なので調整するのが最重要課題なんだけどね。
まあ、とにかく頑張るぞーっ!
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(…と、思ってたんだけど…)
「よし!レギュラーはこれから試合だ!レギュラー以外の1年はマネージャーを手伝ってくれ!」
新キャプテンの細田先輩が声を出す。
俺はその声を聞いてコートへ駆け出した。
そう、俺は代替わりしてレギュラーになった。しかもスタメンらしい。公徳も一緒だ。
(嬉しい!嬉しいんだけど…!会えない…!)
強豪校で、しかも2年生の先輩達を押し退けてのスタメンだ。嬉しくないわけがない。ただ…
(雑用が無くなったから、奥島さんと会うタイミングが無くなったんだよな…)
まあ仕方がない。いつかはタイミングが合うと信じて、練習試合を頑張ろう!
(めちゃくちゃ活躍してやる…!)
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(全然活躍出来なかった…)
結果は1-1でPK戦でやっと勝てた…が、ほとんどボールに触れずに終わってしまった…
(俺のポジションはいっぱいボールに触れないといけないのに…!)
何より、公徳が活躍してたからなおさら悔しい!
あいつは友達でチームメイトだが、同時にライバルでもあるのだ。
(もっと頑張らないと…!)
俺が悔しがりながら片付けていると、欧天中の人が駆け寄ってきた。確か同じ1年だったはず。
「いた!宍戸くん!ちょっと来てくれないか!?」
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欧天中の1年の子に連れられて来たのは部室棟だった。…って!
「奥島さん!」
なんと、奥島さんが藍丹中の1年2人に絡まれている…っていうか、腕を掴まれている!
「おい!何をやってんだ!」
俺が奥島さんと2人の間に入ると、奥島さんは俺の後ろにサッと隠れた。…震えてる…
俺は血が沸騰しそうなのを抑えて2人…坊主頭の福谷と茶髪の柳木に話し掛ける。
「どうしたんだよ2人とも。」
「どうしたもこうしたもねーよ!」
福谷が俺に話を始める。
「俺が仲良くしようと話したらよ、つっけんどんな態度をとってくるから…」
「それで、腕を掴んだと…?」
俺今絶対怒った顔をしてるよな…落ち着け…落ち着け…
「そうだよ!マネージャーなんだから大人しく言うことを聞けば良いのに…」
「は?」
柳木の言葉を聞いて、本気で怒りそうになった。めちゃくちゃ低い声出たな。
今の発言はサッカー…いや、スポーツをやってたら絶対に出てこない発言だな。
マネージャーがサポートしてくれるから、俺達選手は練習や試合ができるんだ。そんなこと常識だ。
2人は少し後退りした。自分で言うのもなんだけど、怒った俺の顔って普通に恐いからな…
「先輩!こっちです!」
向こうから声がした。この声は…
「公徳!」
「宍戸!欧天中のマネージャーから話を聞いてな…おい、福谷、柳木。」
公徳の声に2人はビクッと肩を震わせた。公徳めっちゃ怒ってるもんな…恐いよな。俺も恐い。
「先生と先輩が呼んでいる。話をするぞ。…宍戸、奥島さん、申し訳ないが付き合ってくれ。」
公徳の言葉に、俺と奥島さんは頷いた。
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「それで、申し開きはあるか?福谷、柳木?」
恐い。
細田先輩が本気で怒ってる。普段優しい人が怒るとマジで恐いな…まあ、合宿の目的を考えると当然だ。
両校の関係にヒビが入る上に試合に影響が出たら、大問題になる。
そうなる前に、細田先輩は本気で怒って2人に反省を促している。先生が動くと退部や謹慎の話になるからだ。
でも、反省するかな…?
俺がそう考えていると、福谷が口を開いた。
「確かに、欧天中のマネージャーに迷惑をかけたとは思います。…けど!それだったら!宍戸だってマネージャーに絡んでたじゃないですか!」
おいバカ!止めろ!…確かに俺は奥島さんによく話し掛けていたけど、そんなに強引なことはしていない…はず!
俺が不安になっていると、細田先輩と目が合った…あれ?笑った?
細田先輩は俺を見て少し笑みを溢した後、奥島さんに話し掛けた。
「欧天中の…奥島さん?福谷が言っていたのは本当?」
奥島さんは姿勢を整え、細田先輩に返答をする。
「確かに、宍戸さんは私によく声をかけてきます。…ですが問題ありません。宍戸さんは必ず人が複数いる場所で話をしますし、何より…宍戸さんは全く手を出していませんでしたから。」
奥島さんの言葉に、俺は内心で頷く。
俺は奥島さんと話す時は2人っきりにならないようにしてた。何故なら俺の見た目は恐いからだ。
だから、あの告白の時も何人か周りにいたのだ…今思うとめちゃくちゃ恥ずかしいな。
「はあ?それだけで?」
そう言う柳木に、奥島さんは毅然と返す。
「重要なことです。言葉だけでしたら軽くあしらえば良いですが、私のような非力な女性を力で押さえつけるような人は危険ですから。」
奥島さんの言葉に、2人は黙るしかなかった。
しばらく沈黙が走ると、藍丹中の顧問が口を開いた。
「福谷、柳木、お前らの処遇は後日俺から言い渡す。まずは、荷物をまとめて家に帰れ。」
その言葉を聞いて、2人は肩を落としながら部屋を出ていった。
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外はすっかり暗くなってしまった。
俺は、細田先輩と欧天中の2年生マネージャーに頼まれ、奥島さんを宿泊場所に送っている。
しばらく無言で歩いていると、奥島さんは立ち止まって俺に話し掛けてきた。
「宍戸さん、今日はありがとうございます。」
「えっ…良いよ別に。」
「いいえ、言わせてください。私、多少は武道と護身術の心得はあったのですが…実際対面すると全く動けなくて…!」
「…そうだよね。」
実際技を身に付けていても、相手は自分よりひとまわり大きい相手、しかも2人だ。恐いだろう…
奥島さんは話を続ける。
「ですので、宍戸さんが来たとき、ものすごくホッとしました。私、2回も宍戸さんに助けられました…!本当に感謝しています。…ですので。」
「ですので?」
「連絡先を交換しましょう。」
「えっ!?なんで急に!?いや、嬉しいけど!」
「…宍戸さんが困った時に、私が駆けつけられるようにです。決して他意はありません。決して。」
そう言って奥島さんは携帯を取り出す。俺も携帯を出して、連絡先を交換し合った。正直嬉しい。
俺がにやけていると、奥島さんは何かを呟いた。何て言ったんだろう?…あっ!
俺はふと思い出したことを、奥島さんに伝える。
「奥島さん…早速頼みがあるんだけど…」
「えっ…何でしょう?」
驚いた様子の奥島さんに、俺は話し掛ける。
「大会が終わったら、期末テストだよね?…勉強…教えてほしいなーって…」
「…私は構いませんが、大宅さんではダメなのですか?」
「あいつ理数系しか出来ないんだよ!」
「…そうなんですね。良いですよ。大会が終わったら、勉強会をしましょう。」
「やった!公徳も呼んでやろう!あいつも成績上がるから喜ぶぞ…!」
「お、大宅さんも一緒にするんですね…!」
「?」
「い、いえ…なんでもありません。…では、また明日。」
「…うん!また明日ね!」
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その後、合宿は無事に終わり、俺は家でニヤニヤしながらゴロゴロしていた。
携帯の画面には「奥島 優子」と名前がある。
「やったぜ!これで一歩前進!」
サッカーも、恋も、目標達成!また頑張ろう!
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公徳に勉強会の事を伝えたら、何故か呆れたような顔で見られた。…何故?
次へ続く!
似たような流れを2回もやっちゃった…!でも、書きたかったんです…!
あと2話で終わります。…終わらせます。




