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真逆なふたりのお付き合い(涼平編)(2)

涼平くんの話、2話目です。

俺と奥島さんが再会したのは、全中の地区予選だった。


「奥島さん、久し振り!練習試合以来だね。」


「宍戸さん。そうですね。…観客席(ここ)にいるということは…」


「うん、流石にレギュラーにはなれなかったよ…」


うちの中学は公立ながら県内有数の強豪だ。俺は自分の実力に結構自信があったが、やはり上級生の壁は高かった…


「…私もです。まあ、私の場合はマネージャーとしてですけど。」


「マネージャーも先輩がいるからね。」


「ええ。ですが、いずれは私もベンチに入り、チームに貢献してやります!」


おお…!やる気に満ち溢れてる…!こういう前向きなマネージャーがいると、選手達は頑張れるんだよな…何より可愛いし。


あ、先輩が呼んでる。行かないと。


「じゃあ奥島さん、またね。」


「ええ、また…」


「「決勝で。」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



決勝の後、後片付けをしていると、奥島さんが俺の近くで作業をしていた。


(俺は出ていないとはいえ、流石に負かした相手には話しかけられたくないよな…)


俺がそう思っていると、奥島さんが話し掛けてきた。…えっ!?


「宍戸さんがベンチに入れない理由が分かりました。」


「えっ?どう言うこと?」


「藍丹中の皆さん、素晴らしい動きでした。欧天中(うち)の先輩方も良い選手ばかりではありますが…完敗です。宍戸さんも上手いとは思いますが、やはりレギュラーともなると1段階違いますね。」


「あ、ありがとう…?」


なんか…褒められてる?のかな?


「褒めてますよ?」


心を読まれた。


「1年生の段階で全国常連校のレギュラーに入れる人なんて極僅かですからね。後1歩まで行っただけでもすごいと思います。」


「そ、そうかな…?」


「そうですよ。」


めちゃくちゃ真っ直ぐ褒めてくれるな…嬉しい!…けど。


「もっと頑張ってレギュラーにならないとな!」


それで満足するわけにはいかない。もっと上を目指さねば!と気合いを入れていると、奥島さんが何かを呟いた。


「…ら…のに。」


「?どうしたの?」


「いえ、何でもありません。私は終わりましたので…また、県大会で。」


「う、うん。またね!」


そう言って俺達は別れた。地区大会では優勝したが、これからは県大会、地方大会、そして全国へ、どんどん相手は強くなる。もっと強くならねば!と俺は気合いを入れた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「あちいなー。もう秋だっていうのに…」


「全くだな。」


俺のぼやきに公徳が反応する。俺達2人は今、国体の会場にいる。3年生の先輩が1人、メンバーに選ばれたので応援に来ているのだ。


俺達藍丹中は、県で優勝、地方大会では準優勝で全国に行ったが、1回戦で敗れてしまった。欧天中は県でベスト8で、地方大会には出場できず、結局再戦が叶わなかった。つまり…


(奥島さんとの再会は合宿までお預けか…)


11月には藍丹中と欧天中の合同合宿が行われる。そこでサッカー談義が出来ないかな…と思っている。


(そこでちょっとでも距離を縮められたらなあ…)


という下心は、心の内に納めておく。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「にしても、隼翔(はやと)先輩もスゲーな…」


俺がふと呟く。公徳は俺の話に頷き、口を開いた。


「ああ。今回のメンバー、中学生は先輩だけらしいからな。しかも公立中学所属で…自分のことでは無いが、少し誇らしいな。」


「確かにな。」


「まあ、これで俺達にもチャンスがあることが分かったな。限りなく低いが、0ではない。」


公徳の言葉に俺は同調する。


「そうだな!再来年は俺達2人で選ばれてやろうぜ!」


「ああ。…ん?あれは…」


公徳の視線を追うと、なんと奥島さんがいた!恐らく研究のためだろうが…県外まで行くのはすごいな…!ってあれ?


良く見ると、おじさんと何か話しているけど…何か嫌がっている様子だ!マズい!


「何かトラブルかもしれん。係員を呼ぼう。」


そう公徳が言う前に、体が勝手に動いていた。


「おじさん。俺の友達に何か様?」


「し、宍戸さん…!」


奥島さんはホッとした表情をする。良かった…俺の判断は正しかった…


「い、嫌だなあ…僕はただ、この子に道を聞いていただけだよ…」


「ですから、私では分からないので係員の方に聞いてくださいと、さっきから言っています!」


「い、いやー…それはそうなんだけどね…」


…なるほど。怪しすぎるぞ、このおじさん。道案内なら係員に聞いた方が確実なのに、女子中学生に話し掛けているところが、特に。


「すみません!こっちです!」


おっ。公徳が係員を連れてきたな。…でも、まともに対応したら長くなりそうだな…よし。


「えーっと…どうかされましたか?」


係員の言葉に、奥島さんが話そうとするのを止めて、俺は話し始める。


「すみません!どうやらこの人が道に迷ったみたいで…よろしければ案内していただけないかな…と思いまして…」


俺がそう言うと、係員は何かを察したみたいで、おじさんを連れていってくれた。…ふー…助かった…


「あ、あの…!宍戸さん…」


「大丈夫だった?奥島さん。怪我とかしてない?」


「だ、大丈夫です。ありがとうございます。」


「良かった…ねえ奥島さん。良かったら俺達と一緒に試合を見ない?さっきみたいなことがあると大変だし…」


「そうですね…ただ、今日は兄と来ていまして…あっ!」


奥島さんの視線を追うと、男の人が駆け寄ってきている。


「優子!どうしたんだ!」


そう言うと、男の人は俺を睨み付けた。まあ、そうなるよな。


「お、お兄様!違うんです!この人は私を助けてくれたんです!」


奥島さんが慌てて弁明すると、男の人…奥島さんのお兄さんは警戒を緩め、俺に話し掛けてきた。


「す、すまない…そうだったんだね。ありがとう。えーっと…」


「あ、俺、宍戸 涼平と言います。藍丹中1年サッカー部です。…で、横にいるのが大宅 公徳、同級生で、チームメイトです。」


俺がそう言うと、奥島さんのお兄さんは目を見開いた。


「なるほど、君が…」


「え?」


「お、お兄様!もうすぐ試合が始まります!会場に行きましょう!し、宍戸さん達も一緒に!」


奥島さんのお兄さんが何かを言いかけてたけど、奥島さんが慌てて止めて、会場に促した。…確かに、もうすぐ試合だ!先輩の応援をしないと!


そして俺達4人は会場へと駆けていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「いやー…凄かった…」


俺がそう言うと、奥島さんが反応した。


「やはり、藍丹中のエースなだけあって、素晴らしい活躍でしたね。」


「ああ、特に前半28分のあの動きが…」


「公徳良く見てるなー…後半最初のあの動きとか試合で使えそうなんだよな…」


「そうですね。ただ、配置を考えると…」


3人で試合後のサッカー談義をする。楽しい!


奥島さんのお兄さんは、「良く喋れるなー…」と少し後ろで俺達を眺めている。…と、俺に話し掛けてきた。


「宍戸くん。ちょっと良いかい?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺と奥島さんのお兄さんは2人とは少し離れたベンチに腰掛けた。


「あ、あの…奥島さん…」


志郎(しろう)で良いよ。」


「し、志郎さん…何か用でしょうか…?」


俺がそう言うと、志郎さんは少し考え込んで、俺に話し掛ける。


「宍戸くん、君は優子のこと、どう思っているんだい?」


「えっ!?えーっと…」


「正直に言って良いよ。」


「ひ、一目惚れしました…」


「えっ」


「…あっ!奥島…ゆ、優子さんの話ですよ!?」


「流石にわかるよ!…そっか…ねえ宍戸くん、優子って社長令嬢なの、知ってる?」


「えっ!?そうなんですか!?」


「そうそう、奥島珈琲店って知ってる?」


「し、知ってます!駅前の!」


「そうそう。あれうちの直営店なんだ。」


「そ、そうなんですね…」


し、知らなかった…奥島さん、お嬢様だったんだ…


驚愕で言葉が出ない俺に、志郎さんは話を続ける。


「宍戸くん、君はその金髪、止める気はない?」


「えっ…無いです。」


急になんだ!?…やっぱり、金髪は印象悪いのか…?でも、止めたくないし…


「…俺の父が、優子と付き合うなら止めろと言っても?」


「…優子さんがそれを望んでいるのなら、止めます。」


「…そうか…ふっ」


何!?なんだよ!?恐いよ!笑顔が恐い!


すると、志郎さんが震えだした。いや恐いよ!


「ふっ…ふふ…ふふふ…ハッハッハ!ごめんごめん!恐がらせちゃったね!」


「えっ…」


志郎さんは俺の方に向き直り、話し出した。


「ごめんね?君を試したかったんだ。…大丈夫。俺の父にそんな権限は無いし、何よりそんなことをしたら優子に怒られちゃうよ。」


「え?おく…優子さんが?」


「君、あの選手好きでしょ?イタリア代表の超攻撃型MF(ミッドフィルダー)。」


「は、はい…」


「俺と優子も、その選手が好きなんだよ!」


「そ、そうなんですか!」


「ああ!それに、その髪色、校則の範囲内だろ?」


「は、はい…」


「だったら良し!これからも優子と仲良くしてやってくれ!」


「は、はい…」


さっきからはいしか言えてないし、よくわからないけど、認めてもらえたようで良かった…!


俺がホッとしていると、志郎さんは真剣な目で俺を見て、話し始める。


「宍戸くん、でもね?中学生で金髪って、色々誤解を生みやすいと思うんだ。実際俺自身、君のことを知るまでは警戒していたからね。だから…」


志郎さんの真剣な話に、俺は息を飲む。


「だから、良い意味で有名になってくれ!」


「へ?」


「君がこれからサッカーで有名になれば、そんな悪い印象なんて簡単に吹き飛ばせる!だから頑張れ!応援してるよ!」


「は、はい…」


俺がそう言うと、志郎さんは満足げに笑い、奥島さんと公徳の方へ歩きだした。


俺も志郎さんに付いていくと、急に志郎さんが振り返り、俺に話し掛けてきた。


「あ、そうだ。宍戸くん。君のことは良い奴だと思うけど、まだ妹はやれないからね。」


志郎さんはそう言うと、ハハハと笑いながら、公徳達が待つベンチへ歩いていった。


…頑張るか、サッカーも、恋も!



次へ続く!

あと2、3話で終わる予定です。


涼平くんは見た目がヤンキー方面で厳ついので、大体の不審者は逃げます。


ちなみに、隼翔先輩は前回登場した藤村くんの兄です。

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