碧と恋(1)
今回は増田さんの話です。(多分)2、3話くらいです。
私が恋を知ったのは小学生の頃。
正確に言えば、恋というものの存在を知ったのは、小学生の頃に見たアニメだった。
女の子が変身して戦うアニメの中で、主人公とそのクラスメイトが恋人になったのを見たのが切っ掛けだった。
まあ、だからといって急に誰かのことが気になるとか、そういうことは全く無かったけども。
でも…
その人といると楽しい、幸せな気分になる…そんな人がいることは、少し羨ましいと思った。
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ーーー中学時代ーーー
「ねえ碧ちゃん…!私、好きな人が出来た…!」
「えっ」
今、私は衝撃発言を聞いた。
スキナヒトガデキタ?…えっ?好きな人が出来た!?
「玲衣奈、それ本当!?」
「うっ、うん!」
私の幼馴染みである坂田 玲衣奈は顔を赤らめながら話し始める。
「こ、この前の夏祭り、碧ちゃんは風邪で来れなかったでしょ?」
「うっ、うん。ごめんね、来れなくて。」
「良いよ。…それでね?私実はその日に迷子になっちゃったの。」
「ええっ!?だ、大丈夫…だよね、うん、今いるし。」
「うん、大丈夫だよ。その時助けてくれた人なの。隣町の藍丹中に通ってるサイゴウ ケイタ君。同級生なんだって。」
「な、なんで名前とか色々知ってるの?」
「ほ、本人が色々教えてくれたから...!…それでね、サイゴウ君が私を励ましながら目的地まで一緒に行ってくれたの。…震えながら。」
「何故に震えながら?」
「多分、暗いところが苦手なんだと思う…それでも、笑顔でいてくれて、色んな話で楽しませてくれて...無事に着いたときは物凄く喜んでくれて…本当に、格好よかった…!」
そうやって話す玲衣奈が、私には輝いて見えた。
恋する乙女とはまさに今の玲衣奈のことだろう。
(…ちょっと、良いな…)
幸せそうに話す玲衣奈のことが、少し羨ましかった。
私の恋のお相手は、まだいない。
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「ねえ、それって…今期のアニメのヒロインだよね?」
私は隣の男子に話し掛けた。男子のカバンに私が今推しているアニメのヒロインのストラップが付いていたからだ。
「えっ!…う、うん...そうだよ…!」
よっしゃ、語れる人ゲット。高校生になって玲衣奈とクラスが離れてしまったから、このアニメを語れる人がいなかったのだ。私は5組、玲衣奈は1組で教室が離れているから、休み時間に気軽に話に行けないのだ。
「ねえ、ちょっと語らない?」
「い、良いけど…」
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思いの外盛り上がった。
彼の名前は三浦 海斗というらしい。結構解釈が一致したのは非常に良かった。
「…なかなか話しやすかったな…」
私が独り言を言うと、玲衣奈が駆け寄って私に話し掛けてきた。
「碧ちゃん!碧ちゃん!私、西郷くんと同じクラスだった!」
「えっ!そうなんだ。良かったじゃん!何か話した?」
「な、何もしてないよ!同じクラスの人達と話しているところに向かっていく勇気がなかなか無くて…」
「そういうものなのかねぇ…」
「そういうものなの!…碧ちゃんは、新しいクラスどうだった?」
「んー?今期のあのアニメを語れる人に出くわしたよ。」
「えっ!あのアニメを!?良いなあ…」
羨ましがる玲衣奈を横目に私は思う。
(高校生活、結構楽しめそう!)
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「ねえねえ碧ちゃん、もうすぐ夏休みだけど、気になる人出来た?恋バナしようよ!」
そうやって話し掛けるのは同じクラスの佐々木 麻里佳。同じ美術部で、高校生になって初めて出来た友達だ。
今は私、玲衣奈、麻里佳ともう1人の友人である淡倉 光咲の4人で私の部屋に集まって夏休みの計画を立てている。
「私も気になる!だって碧ちゃん、浮いた話が全く無いんだもん!」
そう言うのは光咲、2人とも…っていうか、玲衣奈を合わせた3人とも、同じ学校で好きな人がいる。
いや、もっと正確に言えば、玲衣奈と麻里佳は片想い中、光咲には彼氏がいる。
「私はもちろん綾瀬くん!今日も格好よかった…」
麻里佳が目を輝かせながら言う。
綾瀬くんとは、5組で1、2を争う人気の男子だ。スポーツ万能、成績も良い、芸術系は…ご愛敬。性格も明るいので女子に人気なのだ。因みに私は特に話したことはない。
「光咲は当然志田くんでしょ?そして玲衣奈は西郷くんだよね?」
「当然でしょ?悠希以外の男には興味無し!」
「う、うん...そうだよ…!まだあまり話せてないけど、今日も西郷くん、格好よかった…!」
2人は思い思いの反応をする。うんうん、女子高生らしく、青春してて良いね!
私がそう思っていると、麻里佳が私の方を向いて話し出した。
「そ!れ!で!だよ、碧くん…三浦くんとはどういう関係なのだい?」
「へ?」
なに急に…
「友達だけど...?」
「えーなにその反応…」
「いやだって、友達であること以外に言うことないし。」
「えーじゃあ気になる人いないの?」
「うーん…特にいないなあ…」
「碧くんや…私達は花の女子高生…恋愛をもっと楽しまねばならぬのじゃ…」
「そうは言ってもね…分かんないんだよね。人に対してドキドキキュンキュンとか感じたことがないし…」
私がそう言うと、3人はこそこそと話し出した。
〔光咲、玲衣奈…碧に恋を味わわせるにはどうすれば良い?〕
〔私と悠希のイチャイチャを見せるとか?〕
〔それ光咲ちゃんがイチャイチャしたいだけじゃない?それに、碧ちゃんはその場面を見ても勝手に尊くなってるよ…〕
〔なかなか難しいな…〕
丸聞こえだよ。ビックリするわ。
目の前で会話してて聞こえないわけが無いのよ。
て言うか、夏休みの計画を立てましょうや…
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「へ?恋を探す旅?」
3人の(丸聞こえな)会議が終わり、麻里佳が私に告げたのは『恋を探す旅をしよう!』という提案だった。
私が呆けていると、麻里佳が説明を始めた。
聞こえてはいたけど、一応話を聞いてやろう。
「ほら、休み明けに絵画コンクールがあるじゃない?描く風景を探すついでに、高校生が行きそうな所を見て回るの!ショッピングモールとか、プールとか、学校も!」
「ほうほう、それで?」
「えーと…そしたらなんか、恋愛を見つけられる気がする!多分カップルとかいっぱいいるし!」
曖昧すぎるわ!もっと練りなよ!
「曖昧すぎるわ!もっと練りなよ!」
声に出しちゃった。
「じゃあ、どうしようか…ねえ碧、なんか良い方法無い?」
「私に聞かないでよ。でも…良いんじゃない?」
「お?私の名案が炸裂?」
「いや、それはどうでも良いんだけど…夏休みの思い出は出来そうだから良いと思った。」
私の言葉を聞いて、光咲が反応する。
「…そういえば、私達夏休みの計画を立てていたんだよね。すっかり忘れてたわ。」
忘れないでよ。
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ある程度話は固まった。
とりあえず、夏休みの間は『美術部の活動』という名目で他の部活動の見学をしたり、街中を歩いたりすることとなった。
正直恋愛どうこうは分からないけど、なんだかんだで面白い夏休みにはなりそうだ。
私の恋のお相手は、まだいない。
次へ続く!
次回、恋愛探しの旅!




