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小さくて長い恋心

今回は1話完結です。小さな恋心のお話です。

(ひかる)くん!結婚して!」


「で、出来ないよ!」


「ど、どうして!?」


「どうしても何も…」


「私、料理も洗濯も出来るよ!片付けも上手だし…良いお嫁さんになれると思わない?」


「い、いや、だからね?」


「そ、それとも…!もっとナイスバディなお姉さんの方が良いの!?」


「ち、違うよ!…だからね?」


「じゃあ歳の差?4歳じゃん!誤差だよ!」


「さすがに誤差ではないと思うけど…って、そこは問題じゃなくて!」


「じゃあどこが問題なの!」


「あのね…明香(めいか)ちゃん…」


「なに?」


「君まだ…小学生でしょ…?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺は荒井(あらい) (ひかる)、中学1年生だ。


さっきから求婚してくるのはマンションの隣の部屋に住んでいる小学3年生、加賀(かが) 明香(めいか)ちゃんだ。


彼女が小さい頃から一緒に遊んでいたこともあって、かなり懐かれてはいるんだけど…


「ぶーっ!何で結婚してくれないのよ!」


「明香ちゃんはまだ小さいからね。」


「じゃあどれくらい大きくなったら良いの?2メートル?」


「身長の問題じゃ無いんだけどな…」


「身長じゃ無かったら何なの?」


「大人になったらって意味だよ。」


「大人っていつなるの?」


「お、お酒が飲めるようになったらね!」


「お酒って20歳からだよね?…長いよー…」


「そ、それまでに心変わりしなかったら結婚は考えるから!」


「…心変わりって?」


「俺以外の人を好きになること。」


「絶対無いから!」


「…一応期待しておくよ。」


「一応って何よ!…絶対、絶対!結婚したいって言わせるんだからああああぁぁぁ…」


明香ちゃんは走り出していった。慌てて追いかけると、一人でマンションのエレベーターに乗ろうとしていたので、一緒に乗った。


十分一人で乗れる年齢ではあるが、明香ちゃんの様子を見て少し心配だったから。


エレベーターに沈黙が走る。


「…何で一緒に乗ってきたの?」


「えっ、えーと…しんぱ…いや、一緒に乗りたかったからだよ。」


「…ふーん…」


俺たちの家がある5階に着くと、俺は明香ちゃんに手を差し出す。


明香ちゃんは少しムスッとした顔で手を繋ぐ。


家まで歩いていると、明香ちゃんがポツポツと話し始めた。


「光くんと朝一緒に学校に行けない。」


「朝練があるからね。」


「…帰りにも会えない。」


「部活で遅くなるからね。」


「休みの日にも光くんがいない。」


「…土日も部活があるからね。」


すると、明香ちゃんが抱き付いて…いや、しがみついてきた。


「寂しい。」


…やっぱりね。俺が小学生の時はずっと一緒に遊んでたから、中学に上がったとたん会えなくなるのがショックだったんだな…


俺は明香ちゃんの頭を撫でる。明香ちゃんのしがみつく力が強くなる。


「明香ちゃん、今は忙しいけど、来月には落ち着くから...その時は一緒にお出かけしようか。」


「デート?」


「…う、うん、そうだよ…!」


「…わかった。待つ。約束。」


「うん、約束ね。」


ふう…落ち着いてくれた。


多分、結婚したらいつも一緒にいれると思ったんだろうな。実際、明香ちゃんの両親はとても仲良しだし。寂しさのあまり、つい言ってしまったんだろう。身近にいる男子なんて同級生以外だと俺くらいだろうし。


(…プラン、考えとかないとな…)


明香ちゃんが成長したら、こうやって出掛けるのも無くなるだろうし、しっかり楽しめるようにしないとね。


(兄貴分としては、少し寂しいけどね。)


俺は明香ちゃんと別れたあと、全力でお出かけプランを考えるのであった…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ーーー数年後ーーー



俺は現在大学1年生、明香ちゃんは中学3年生になった。


俺たちは今、明香ちゃんの部屋にいる。俺が通っていた高校を受験するみたいなので、勉強を教えているからだ。


「ここの英文は…」


「ふんふん。」


「ここを訳したら…」


「ふんふん。」


「…明香ちゃん。」


「なあに?」


「…距離近くない?」


「そんなこと無いよ?」


「あるよ!」


「…話を聞いてるからね。自然と近づいちゃったかもね。」


「…明香ちゃんは人の話を聞く時に腕にしがみつくの?」


「まさかー、そんなこと無いよ!」


「…明香ちゃん、離れてください。」


「ぶー。」


「ぶーじゃない。…変わってないなあ…」


相変わらず、明香ちゃんは俺に懐いてる。そして相変わらず俺にアタックしてくる。


正直、ここまで俺のことを好いてくれているとは思ってなかった。


とはいえ、明香ちゃんはまだ中学生、これから成長していくにつれて色んな人と関わっていくだろう。


俺よりいい人なんていくらでもいるしね…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ーーーまたまた数年後ーーー



俺はもうすっかり社会人、明香ちゃんは大学2年生、もうすぐ20歳だ。


…最近、明香ちゃんがそわそわしている。


うーむ…何でだろう…分からないなー…


嘘です。分かります。…いや、びっくりだよ!


あの日の約束を覚えているとは思わないじゃん!だいたいこういうのって大人になったら忘れるもんじゃん!


正直、明香ちゃんは魅力的な女性になった。告白されたら断れる自信が無い。…っていうか…


「俺も俺で、何律儀に待ってるんだよ…キモいな…」


何時からかは分からないが、俺の中でも明香ちゃんはかけがえの無い存在になっていたんだろう。


結局、俺も明香ちゃんも恋人がいないまま今日まで過ごしてきた。


俺は単純にモテないだけだが、明香ちゃんは違う。何度も告白されては振っているらしい。


何故知っているのかと言うと、明香ちゃんが毎回報告するからだ。その度に俺をチラチラ見てくるのは多分自惚れではないだろう。



明香ちゃんの誕生日は来月。



…覚悟を決めるしかない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



今日は明香ちゃんの誕生日…ついに20歳だ。


そして今、一人暮らしをしている俺の部屋に2人でいる。


「ねえ、光くん。」


「なっ、何?」


「私、20歳になったよ。」


「お、おめでとう。」


「…他に言うことは?」


「…もう少しだけ待ってもらえる?」


「ぶー。」


「…明香ちゃんが卒業したら、ちゃんと言うから。」


「やだ、今言って。約束でしょ?」


「…ふー…わかった。明香ちゃん、こっち向いて。」


俺の言葉を聞いて、明香ちゃんは振り返る。


「…明香ちゃん、正直あの時は、その場しのぎで話してました。」


「…知ってる。」


「…でも、少しずつ成長する君を見て、ある感情が芽生えてきた。」


「…」


「何時からかは分からないけど、歳をとる度にこの思いは大きくなっていった。」


…ダメだ、良い言葉が思い付かない。


「…光くん。」


「…ど、どうしたの?明香ちゃん。」


「…無理に言葉を作らなくても良いよ。光くんがそういうの苦手だって知ってるし。」


「うぐっ。」


「…だからね?ちゃんと真っ直ぐ伝えて?」


…昔は俺に着いてくるだけだったのに、すっかり成長したな…よし!


「…明香ちゃん、いや、加賀 明香さん、俺と結婚してください。」


よし!言ったぞ!シンプルだけど、俺の本心だ。


…あれ?明香ちゃんの反応がない。もしかしてやらかした?


明香ちゃんを見ると、急にニヤッと笑いだした。


「…よし!よし!言わせたよ!ついに、光くんに「結婚して」って言わせたよ!やったーっ!」


…なんか、別の喜び方してる?


そう思った瞬間、明香ちゃんが飛び付いてきた。


「光くん!私と結婚しよ!もう大丈夫だよね?」


「…は、はい…」


「やったーっ!」


…なんか、締まらないプロポーズだけど、俺たちにはこれがちょうど良いのかもしれない。


「光くん!子供の名前は何にする?」


「気が早いよ!…それに、籍を入れるのは明香ちゃんが卒業してから!」


「えーっ!何で!ぶーっ!」


「その代わり!…これ。」


俺は明香ちゃんの左手薬指に指輪をはめる。別に給料3ヶ月分ではない、安物だけど…


「これで、男避けにはなるでしょ?」


「…光くん!好き!」


またもや明香ちゃんが飛び付いてきた。…多分、この感じはずっと変わらないんだろうな…


「…明香ちゃん、これで寂しくないね。」


俺の言葉を聞いて、明香ちゃんは目を丸くした。


「光くん、私、それ1回しか言ったこと無いのに、覚えてたんだ…」


「あれ?そうだったっけ?」


「…ふふーん♪」


明香ちゃんは俺に向かって楽しそうに言った。



「これからもよろしくね、私の旦那様?」




終わり

今回は結構シンプルめな話でした。

幼馴染みカップルって良いよね…

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