梁瀬 小春の無自覚な初恋(3)(終)
小春ちゃんの話、第3話、最終回です。
「いやー…長かった…」
そう言うのは富野 洋介くん。駿太と私の小学校からの友達で、百合奈の彼氏だ。ちなみに百合奈は富野くんの横で頷いている。
「悪かったな、洋介。長い間やきもきしただろうがこれで一安心だな。」
駿太が私達にお茶とお菓子を渡しながら話す。
今、私達4人は駿太の部屋でお疲れ様会をしている。
何のお疲れかって?そりゃ…まあ...私と駿太のカップル成立についてです…
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「それにしても...ねえ梁瀬さん?聞いた?」
「えっ?な、何を?」
「駿太が気付いた瞬間!」
富野くんが私に聞いてきた。…気付いた瞬間って…?
…!ああ!
「私に告白…っていうか、ほぼ事故だけど!私と付き合うことになった日だよね!本当に遅すぎるよね!」
「いや、小春には言われたくないけど。」
百合奈が突っ込んできた。…確かに!
百合奈が話を続ける。
「そもそも、小春も私が言うまでは何とも思ってなかったじゃん!私が何も言ってなかったらお互いの想いに気付かないまま一生終えてたよ!絶対!」
「そ、そうかな…?」
「そうだよ!」
「待って、百合奈。こういうパターンもあるかもしれない。」
富野くんが話に入ってきた。…どういうパターンだろう?
富野くんが話を続ける。
「2人はお互いの想いに気付かないまま高校、大学を卒業…就職して何年か経ち、親から『早く結婚しなさい』と急かされる…そんな中で2人はふと気付く。『あれ?お互いで結婚すれば丸く収まるんじゃないか?』と…そうして2人は流れで結婚する…みたいな?」
いやいやいや…まさかそんなことは流石に無いでしょ…隣に座る駿太を見ても、「流石に無いだろ」って顔してるし…
「…」
「…ゆ、百合奈?」
あれ?なんか百合奈の様子がおかしい…
「…うん、あり得るわ。流石洋介くん、解像度が高い。」
「待って!無いでしょ!」
「いや、それは無いだろ。」
私と駿太がほぼ同時に否定する…が、百合奈と富野くんが「何言ってんだコイツら」って表情で見てる…
「何言ってるの君たち。」
「何言ってるのあなたたち。」
2人とも声に出しちゃったよ!
富野くんが駿太に話し掛ける。
「ねえ駿太、お前言ったよな。『俺も彼女が欲しい』って。一言一句同じではないけど、似たようなことは言ったよね?」
「お、おう…」
「しかも、その日の翌々日にファミレスに行ったときも、「お前らが気付かせてくれた」みたいなことは言ったよね?」
「あ、ああ…言ったな…多分…」
「それって、裏を返せば俺たちが言わなかったら気付かなかったってことじゃない?」
「…た、確かに…!」
納得しちゃったよ!いや、でも確かに、私も納得しちゃったかも…
そう考えると、私達、2人に助けられたんだな…2人がいなかったら、今みたいに恋人の時間を経験することが無かったかもしれないし…そう考えると、感謝しかないね!
「そう考えると、2人…いや、慶太もだけど...に助けられたんだな。ありがとう。みんなに気付かせてもらえなかったら、こうやって…小春と…その…恋人の関係で過ごすことが無かったかも知れなかったんだな…」
…駿太も同じこと考えてた…
百合奈の方を見ると、百合奈がニヤッと笑って駿太に話し掛ける。
「ねえ金山くん、多分小春も同じこと考えてるよ。」
「えっ。…本当か?小春。」
なんでバラすの!百合奈のバカ!…絶対私の顔真っ赤だ…めちゃくちゃ熱いもん…
私は駿太に言う。
「そ、そうだけど…」
「そうなのか。同じ気持ちで嬉しい。」
駿太が私に笑いかける。…うう~…好き。
「本当にお似合いだよ、2人とも。…小春、良かったね、本当に。」
百合奈が私に話し掛ける。私は恥ずかしさのあまり、小さな声で「うん…」としか言えなかった。
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その後少し話をして、百合奈と富野くんは帰っていった。
2人きりになった部屋で沈黙が走る。
私は気になったことを駿太に聞く。
「ねえ駿太…」
「どうした?小春。」
「駿太はさ…私のどこを好きになったの?」
「ど、どこって…うーん…」
駿太が考え始める。
「…なんか、遅くない?」
「いやだって、全部っていうのは違うだろ?だから今細分化してるんだよ。」
「3つくらいでいいから!」
「そうか?じゃあ、料理が旨いところ、見た目は格好いいのに仕草がめちゃくちゃ可愛いところ、色んな人に親切なところ。…じゃあ、次は小春な。」
は、早いよ…!え、ええと…
「…笑顔が可愛いところ、私が楽しめる場所を見付けてくれるのが上手いところ…ハ、ハグするときにすごく優しくしてくれるところ…でも、もうちょっと強くても良いかも…」
…待って待って待って待って!今なんて言った!?
急にハグのこと出されても駿太が困るでしょうが!ほら見て!驚いてる!…あ、あれ?
駿太が私にハグしてきた。…いつもより少し強い…
「…小春。」
「な、何?」
「…好き。」
「…知ってる。私も駿太のことが好き。」
「知ってる。」
そのまま、しばらく私達はハグをした。その後、私は普通に自分の部屋に帰ったが、しばらくすると恥ずかしさのあまりベッドで悶え苦しむことになるのは別の話。
お互いに10年以上の恋心が襲いかかってきている…た、耐えられるかな?
…まあ、時間はいっぱいあるんだ、頑張って慣れていこう!
そして、いつか2人で笑い合うんだ。
あの頃はまだ若かったねって。
おじいさんとおばあさんになっても、一緒に笑い合おうね。駿太。
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「ママー!これって昔のママ?」
「あら、懐かしい。高校の時のじゃない。」
「ねえ、もしかして…隣にいるのはパパ?」
「ええ、そうよ。若いなあ…」
「髪の毛が生えてる!」
「今も生えてるでしょ!…確かに、少しずつ生え際が後退していってるけど!」
来週には末娘が家を出る。今日はその準備…だけど、ついついアルバムを開いてしまう…まさか私が4人の子を持つ母親になるなんて…あの頃からは信じられないな。
私も駿太も、すっかりおばさんとおじさんだ。
私はシワも白髪も増えてきたし、駿太はそれに加えてお腹も出て髪の毛が少なくなってきている。
…でも、私はそんな駿太が今でも好き。
あの頃と何も変わらないと思っていたけど、関係が変われば、色んなことが変わっていく。
大学、就職、子育て…幼馴染みで、互いを知り尽くしていたつもりだったけど、立場が変われば、その分新しい一面を知っていった。
楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、怒ったこと…いっぱい味わった。
それでも…いや、それがあったからこそ、私と駿太の絆は深まった。
…駿太も同じ気持ちだと良いな…
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「じゃあ、パパ、ママ、またねーっ!」
「気を付けるんだぞ!」
「頑張ってね!」
「うん!」
そう言って、娘は家を出ていった。これで、子育ては一段落だ。
長男と長女はそれぞれ家庭があるし、次男は一人暮らしを謳歌している。今さっき家を出た次女はもう大学生だ。
私が思い耽っていると、駿太が話しかけてきた。
「小春、話をしよう。」
その発言にドキッとするが、思い直した。
単純に思い出話がしたい顔だな。これは。
言い方が紛らわしいなと思いながら、私と駿太は家に入った。
私がお茶菓子を用意し、駿太がコーヒーを淹れる。2人で暮らしてからのいつもの流れだ。
私達はたくさん思い出話をした。子供たちの話、孫の話、はたまた、私達自身の子供の頃の話や友達の話など…夜遅くまで話し込んだ。
楽しい思い出も、喧嘩した思い出も、2人で笑い合って話した。
ふと、思い出す。
過去の私、すっかりおばさん…いや、おばあさんになったけど、ちゃんと笑い合えているよ。
おじいさんになった駿太と、今でも一緒に笑い合えているよ。
そして、これからも...
また、駿太と一緒に過ごす日々は続いていく。
終わり
小春ちゃんの話は一旦終わりです!
とはいえ、まだまだ今後も書いていきますし、他の人の話にも登場するかもしれません。
次回は、別の人の話です!




